天使が羽ばたく時(3)




2003年11月16日
俺がミカエル様に呼び出されたのはアキラが北離宮に行ってから
2ヶ月後のことだった。

「ヒカル 今日は貴方にお願いがあって呼びました。」

ミカエルの改まった言葉に俺は膝を折り曲げて指を床に着く。
普段よほどではない限りこういったやり取りはしないのだが、
今日はミカエルだけでなく4大天使の一人ガブリエル
が来ていたのでヒカルは礼儀に乗っ取らなければならなかった。

「ヒカル 貴方に人間界に行って欲しいのです。」

「人間界?」

人間界には何度か言った事があった。天昇されない魂を
天界に導いたり、戦争で失われたひとの心を呼び戻したり
そういった仕事を仲間たちと共に今までこなして来たので特に
ミカエルの言ったお願いが普段より特別であったとは思えなかった。


「今回 貴方に浄化してもらいたい魂があります。もう死して1000年も
地上に留まっている魂です。」

「1000年!?」

1000年とは尋常な年じゃない。死んですぐ浄化されなくても普通自分との
因縁の者がなくなれば天昇するものである。

「今までだれも彼の魂を天界に導くことは出来ませんでした。ですから
ヒカル あなたにお願いしたいのです。ただしそのままの天使の姿でなく
人間となって・・・」

「俺 人間になるのですか?」

「そうです。もちろん戻ってきたら天使に戻りますが。どうでしょう引き
受けてくれませんか?」

そういうとミカエルは大きな水鏡に地上の様子を映し出した。

古い木造の蔵の中にかやの木で出来た小さな碁盤が映し出された。
そこには女性と見違うぐらい美しい姿をした烏帽子をかぶった男がいた。

「ミカエル様 コイツ男?」

つい化けの皮がはがれて敬語が崩れ落ちガブリエルに睨まれる。。

「いや えっと・・・・」

「男性ですよ。名は藤原 佐為といいます。」

「ふじわらのさい!?すっげ〜綺麗なやつ・・・」

水鏡に映し出された彼は俺が見たこともないほど美しくて魂も清んでいた。
何故天昇しないのか不思議なほど彼の魂は清んでいる。
俺は佐為の魂に興味を惹かれた。

「ミカエル様 俺この仕事引き受けます。」

「本当ですか?」

「はい。ただ・・・」

この天界には転生の広間がある。天使が人間に転生する場合その広間に入り
ミカエルに天使の力を封印され記憶も取り消されて転生する事になったいた。

「俺自分の事も忘れてしまうのにこの任務の事忘れないかと思って・・・」

「それは大丈夫ですよ。任務は貴方の魂に刻み込まれますから忘れる
事は決してありません。」

それを聞いて安心する。

「ならよかった。あの・・もう一つ聞いていい?」

「ええ。」

「俺任務が終わったらこっちに戻って来たほうがいい。それとも人間
としての生活をまっとうした方がいいのかな?」

「それは貴方に任せます。」

「そっか。そしたら俺直ぐに今から人間界に向います。」

俺のその言葉にミカエルは慌てた。

「ヒカル何もいますぐでなくてよいのですよ。
しばらく戻れないのです。智天使アキラに会ってきてからでも構いません。」

ミカエルの言葉に俺はそっとガブリエルを伺った。

アキラは地天使だった時このガブリエルに仕えておりガブリエルの最もお気に入り
の天使だった。
実は俺がアキラに正直になれなかったのもそれが原因の一つでもあった。

「えっと・・でも。」

アキラに会いたくないといえばウソになる。
だけど会えば別れが余計に辛くなる。まして・・・人間になればあいつのことを忘
れてしまうのならなおさら辛いに決まっている。
これは任務なのだ。私情を挟むわけにはいかない。

「ミカエルさま 俺あいつには会わずに行こうと思う。会えば辛くなるだけだし。」

「いいのですか・・・それで」

それまで黙って聞いていたガブリエルが言葉を挟んだ。

「本人が良いといっていることだ。今すぐ行かせればいい。
アキラにあえばお互いを迷わすだけだ。」

ガブリエルの言葉は非情なようでいてその通りなのだ。
俺はうなずくと二人の大天使に従った。



ミカエルとガブリエルと共に転生の広間に入る。

ミカエルが俺に聞いてきた。

「ヒカル 貴方は男性になりたいのですか?それとも女性?」

天使には性別はない。俺は一瞬戸惑う。

「えっと女になろうかな。あいつすげえ綺麗だったし。」

あいつとは佐為をさした言葉だったが思い浮かべた
のはアキラだった。男性的なアキラを思い浮かべるとなんだか
ヒカルは女性になった方が良いような咄嗟の思い付きだった。

「わかりました。」

中央のカプセルの中に一人入るといやおうなしに緊張が高まった。
俺はあれから肌身離さず持っていたアキラの風切り羽を握りしめた。
任務が魂に刻み込まれるならお前の事だって俺
刻み込んでみせるから。忘れないから・・・・



ミカエルがヒカルに魔法をかけていく。
ヒカルの力は徐々に封印されて新しい人間の命となるため人間界へと旅立って
いったのだった。

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ヒカルが去ったあと・・・
ガブリエルがミカエルにポツリともらした。

「ミカエル 君は本当にあの天使に自分の跡を継がせようなんて思っているのか?」

「思っています。今も見たでしょう。私の力を持ってしても彼の全てを封印する事は
できなかった。」

ミカエルがヒカルの力を封印した時・・・前髪だけ金髪の髪が残ってしまったのは
それは全てを封印し切れなかった証拠。

「彼の帰りがいまから待ち遠しいですよ。きっと成長して帰って来ると
信じています。」

ミカエルはガブリエルにそう告げると転生の広間を後にした。


                                  天使が羽ばたく時最終話



 趣味に走った話の展開になっています(笑)天使とか悪魔とか好きなんですよ。
ドラキュラとかのモンスターたちのお話も好きなんですが(だけどホラーは苦手;)
このお話に出てくるにミカエルとガブリエルにはヒカゴのあるキャラを想定して書いていま
す。もしお分かりになったら教えてくださいね。


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