ラバーズ



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スにへばりついたように動けない俺の肩に塔矢がそっと
手を置いた。

見上げると塔矢のまっすぐな黒曜石のような
瞳が近づいてきて俺はその意味を悟って目を閉じた。

やわらかい塔矢の唇が俺のそれに触れて
俺の体は電流が流れたような感覚に陥る。


すぐに離された唇に名残惜しいとさえ感じた。



「君にこの間キスをされた時は驚いた。まさか君が僕のこと
をそんな風に思ってくれてたなんて思わなかったから・・・」

「うん。俺も。我ながら大胆だったなって。
でもさキスするのと されるのとじゃ
ずいぶん違うんだな。なんか今あせった。」


塔矢に立ち上がるように即されて俺と塔矢は向かい合う。

再度塔矢の顔が近づいてきて俺は自分からもキスを求めた。


何度も触れては離れていくそれに互いの呼吸は荒くなっていく。
心臓なんてもうとっくにメーターをふりきってるんじゃなかと思う
ほどに早い。


真剣な塔矢の瞳、俺と同じように震える指。



塔矢は今本当に俺に恋してるんだって思う。
それはたとえノートのせいであったとしても、佐為の力の
せいだったとしても・・・



塔矢の唇が離れると胸がうずく。
離れたくないと思ってしまう。

もっともっと塔矢とそうしていたい。

湧き上がる気持ちは止まらなくて
俺は塔矢の胸にもたれかかるように頭を預けた。



そっとやさしく肩に置かれていた腕が俺の背に回って、
途端塔矢にすごい力で俺は抱きすくめられていた。



覆いかぶさるように抱きしめられた体重に耐え切れず
俺と塔矢はベットへとなだれ込む。



これってひょっとして・・・。



小刻みに震える体。
塔矢の体重をかんじながらどうしていいのか
わからずセーターにしがみついた。


密着した体から塔矢の心臓の音が伝わってくる。
それは俺の心音と負けず劣らずはやかった。



「進藤・・・少しでいい。このままでいてくれないか。」


耳もとでささやかれた塔矢の声は震えて上擦っていた。
・・泣いてるんじゃないかと思うほどに。


俺は塔矢の背に回した腕の力を抜いた。
激しいキスの往来に思考がぼやけていく。




雨の音だけが部屋に響いていた。

     
      






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