@紀伊防備隊本部跡
 紀伊防備隊の主要任務は、「警備区海面の防備、海上交通保護、敵艦船の撃破、見張り警戒、外戦部隊の作戦に協力」などでした(『戦史叢書 本土方面海軍作戦』朝雲新聞社,1975)。現在の由良町役場が紀伊防備隊の本部でした。

 町役場の近くに、戦争当時に作られた倉庫が2個残っています。オイルを保管していたらしいです。そのうちの1個は、現在、S商店が所有しており、その倉庫として利用されています。外壁は当時のままですが、屋根は変わっており、当時はスレート葺きだったそうです。これは爆風により屋根だけが簡単に吹っ飛ぶようにし、建物本体を守るための工夫らしいです。

 もう1個の倉庫は、埋め立て地上に現在建っている由良港中学校の中にあり、用具入れの倉庫とし利用されているようです。この倉庫の外壁や屋根が当時のままであるかは不明です。 


 S商店の夫妻(夫1928年・妻1932年生まれ)によれば、倉庫が建っている土地は、もとは海で、紀伊防備隊を作るために埋め立てられたそうです。その埋め立て工事にあたり、周辺の住民が働かされたのはもちろん、朝鮮人も働かされていたのではないかということです。 埋め立ては1937年から1939年に行われており、10月9日の調査では1933年4月に7人の朝鮮人が由良小学校に入学したことがわかっています。このことから埋め立て工事に徴用されていた朝鮮人がいる可能性がきわめて大きくなりました。
 S寺において1924年から1946年まで過去帳を調べた結果、女の子(1936.11.1〜1939.4.16、朝鮮慶尚南道出身)と女の子(1940.3.28〜1944.9.3)が亡くなっていことが確認できました。本部跡付近に朝鮮人の家族が住んでいたことがわかります。