ランスの冒険 第一話 〜光を求めて〜

第9章 捜索4日目 〜トーナメント参加への道〜


「うむ、ここに来た用件なんだが、特別参加券が是が非でも欲しいのだ。持ってそうな奴はいないか?」

「特別参加券?トーナメントの?」

「そうだ」

ランスとオペレータの女の子は普通に会話をしていた。先程の騒ぎが無かったように。んー大人だ。

「うーん、この街で持っていそうな人はいないわね。あっ、まって・・・ふーん、最近というか昨日、4年前に特別参加券を所持した人が城で落としたとして警備に届けが出ているわね」

「それだ!」

「え、でもそれ、落し物よ?だから勝手に使っちゃいけないのよ?」

「ばれなきゃいいんだ。財布を落とした奴がわざわざ届けないのと一緒だ」

ランスは自信満々に断言する。

「あ、あのー、私は届けるけど」

オペレータの女の子はランスに突っ込んだ。

「そうか、よし。さっそく探し出してやる」

ランスは突込みを無視した。都合の悪いことはスルーだ。

「まあ、とりあえず現時点では届けがでていないからまだ拾われていない可能性が大いに有るけど」

「そうか、ありがとよってその手は何だ」

「情報料100G」

「俺様から金を取るのか?」

ランスは軽く睨みつける。が、オペレータの女の子は怯まなかった。

「それはそれ、これはこれよ。商売の種なんだから、きっちり貰わないとお飯の食い上げになっちゃうわ」

「・・・わかった。確りしているな」

しぶしぶ、財布から100Gを出して渡す。

「毎度あり」

オペレータの女の子がニコニコしながら受け取った。ランスは少々癪に障ったので反撃して行くことにした。

「そういえば確かにアレの時もきっちり貰っていたな。うん」

「な、何てこと言うのー!だいたいあれはあなたが・・」

だが、その時既にランスはこの場を去っていた。

「ふ、ふふふ、あなたの名前はランス。自由都市郡の一つ[アイス]の[キースギルド]所属の冒険者。奴隷を一人所有・・・ここに着てからも女の子を数名愛人として確保・・・もしもの時はきっちりと責任とって貰うわよ。私は情報屋、決して逃しはしないわ」

ランスは地雷を踏んだようだった。

「あら、おかしいわ。住民登録のデータでも名は書いてるけど姓が無い。変ね?」

それとちょっぴり、ランスの謎が浮かび上がっていた。

     *

「ふう、やれやれ。危うく自爆してしまう所だった」

ランスは情報を得て素早く城に来ていた。

(まあ、ここは順当にイタイちゃんに聞くか)

ランスはイタイのいそうな場所、つまりパン置き場に向かった。

(やはりいたな)

ランスの予想通りイタイは今日も元気にパンをがめようとしていた。

「おい」

「ひっ、って、ランス・・さん」

「うむ。今日も懲りずにやっとるのか?」

「てへへ、お願い見逃して。言いつけどおりユキさんに差し入れしたんだから」

「ほーう」

「ね、」

「まあいいか。今日は止めとけ。その代わりこれをやる」

そう言ってランスはここに来しなにかったパンの詰め合わせをイタイに渡した。

「ユキちゃんの件のお礼だ」

「わーい。す、すごい。ありがとランス・さん」

「何か呼び方が変だな。まあ、いい。それより、聞きたいことがある」

「何、下着の色とかなら教えない」

「何で俺様がそんな事聞かなきゃいけないんだ変態ネズミじゃあるまいし」

「ランスさん・・」

「な、何だ」

いきなり態度が変わったイタイの様子にランスは戸惑った。

「・・変態ネズミ知っているんですか?」

「おう、一寸前に遭遇したことがある」

「どこです?」

有無を言わせぬような雰囲気に珍しくランスは気押されした。

「前に・・の倉庫でな」

「そうですか・・そう、ようやく奴の手がかりが掴めたわ。私のお気に入りのパンティの仇必ずとって見せるわ」

イタイの目が真っ赤に燃えていた。

「おい、聞きたいことがあるんだが」

「こうしちゃいられないわ、変態ネズミ被害者の会に連絡して今度こそあの憎き変態ネズミを殲滅しなくちゃ」

話しかけるランスに気付かずそのままイタイは部屋を出て行った。

「・・俺様を無視するとはいい度胸だ。今度あったときはスペシャルお仕置きだ」

無視されたランスは固く決心し部屋をでた。

     *

当ても無く城内を特別参加券が無いか捜しつつ練り歩くランスは地下牢への入り口近くまで来たので途中ユキに会って行くことにした。

(アキちゃんからの預かり物を渡さなくちゃな。その前にあの番兵の女の子の対処だな。まあ、退屈な話をすればいいだけだからちょろいか)

そこには予想通り、牢屋への入口にしっかりと昨日と同じ女の子の番兵が見張っていた。

「おい、ここは牢屋だぞ。許可の無いものは、近寄れないんだぞって、またお前かしつこいぞ。とっとと立ち去れ」

きっとした目でランスを睨んできた。前回は睨み返したが一々相手するのも面倒くさいので受け流した。

(しかし、この様子から見ると昨日俺が犯ったことはばれていないというか気付いていないのか?)

「だから、早く立ち去れ。お前には用は無いはずだ」

「いや、一寸聞きたいことがあるんだがお前に」

「う、何だ?スリーサイズは教えないぞ」

(そんなもん昨日犯った時に実感したから大体分かるワイ)

「聞きたいなら早くしろ。今日の私は体調が悪いんだ。・・どうしてお客さんはまだのはずなのにおなかのあたりが痛いんだ」

後半は少々小声になっていてランスには聞き取れなかった。

「そうか。先ずはお前の名前は何だ?

「私の名前なんか、どうでもいいでしょう」

「まあ、いいや。じゃ、歳は?」

「何よ、私が何歳でもあんたには関係ないでしょ!」

「なんだ、そのいいかたは?」

「ふーーーんだ」

べーっとランスに向かって舌を出す牢番の女の子。

「このガキが!」

「私もう大人よ」

「そう言っているからガキなんだよ(もっとも確かに体は大人だったかな?)」

散々、目の前の女の子が眠っている時に弄んでいながら面白いように反応するのでからかい続けるランスであった。

   ・
   ・

「・・・違うもん。」

(くっくっく。単純な奴め。だが、この俺様に無礼な態度に出たんだ後できっちりと形をつけさせてもらうぞ。)

「ふっ、勝った」

「く、悔しい」

なんだかんだ言いつつランスも同レベルで喧嘩しているのでガキなのかもしれない。

「じゃあ、昨日も言ったがヒカリって娘を知らないか?」

気を取り直したランスは再度、質問した。

「ヒカリ・・知らないわよ。昨日もそう言ったでしょ。もうそんな退屈な話は、やめてよ」

「いーや、何か知ってそうだ。もう一度聞くヒカリって娘を知らないか?」

「退屈な話は、やめてよって・・いってる・・でしょ。そんな話・・聞いている・・と私、眠く・・・すや、すや、すや」

(同じ手が使えるとは単純な奴。まあ、そのおかげでこうしてユキの所に会いに行けるわけだが)

ランスは眠っている番兵の女の子を一瞥した後、ユキに会いに行くべく牢屋に向かった。

(やっぱり酷い環境だな、早いとこ何とかしないと病気にでもなっちまいそうだな)

牢屋の隅にユキが毛布に包まって眠っていた。牢にランスが入って来たのに気付いたのかユキは眠りから覚め起きた。

「よう、おはようさん」

「あ、おはようございます」

「少しは元気が出たようだな」

「はい、昨日は久しぶりに暖かいものが食べれましたし、着替えもできたので。それに毛布も後で持ってきてくれて」

「ふむ、イタイちゃんは俺の言いつけ通りにやってくれたようだな」

その言葉にユキは大いに驚いた。

「えっ!急に待遇がよくなったのはランスさんのおかげなんですか?」

「まあ、そうだ。丁度この城のメイドさんと伝手があったんでな協力してもらったんだ」

「そうだったんですか、ありがとうございます」

「おう、一度やった女は無碍にはしない主義だからな」

ランスはニヤリと笑った。

「えっ、やだ」

ユキは思わずその笑みに昨日のランスとの事を思い出し、顔を真っ赤にして両手で頬を押さえていた。

「ふふふ、かわいいぞ。ん!そう言えば、着替えといえば昨日君は下着を着けていなかったな」

「えっ、あの、始めは着けていたんですけど寝ぼけていた隙にネズミに取られたんです」

「なっ(変態ネズ公、本当に見境なく収集しているな。筋金入りだ。これじゃ、イタイちゃん達が目の色変えて退治しようとするのも頷けるな)・・まあ、いいか。それより、君にプレゼントがある」

「え、プレゼント?何ですか?」

「これは、君の妹のアキちゃんから預かったの物だ」

そう言ってランスはアキから預かっていた[やすらぎの石]を渡した。

「これをあの子が・・ありがとうございます」

そう言ってユキは泣いて喜んだ。それを見てランスも胸が暖かくなった。

ピロリン!

何かの音がランスの脳に響いた。その音が神様がランスに経験値を与えた事を告げるものだった。

経験値はレベルを上げるのに必要なものであり、冒険者なら主にモンスターを倒すことで得るがそれだけではなく依頼を達成することで得ることができることがある。それが今回の現象であった。常にもらえるものではないので言ってみれば当たりくじを引いたようなものである。ランスも今までに色々な依頼をこなしてきたがそれでも滅多に起きないものなので喜びもひとしおであった。

(ラッキー、経験値貰ったぞ)

そんな一寸ご満悦になっていたランスにユキは声を掛けた。

「あの、これ・・これしかないんですが、お礼です」

そう言ってユキは一本の[わら]をランスに渡した。

「これは・・なんだ!?」

「えーと、[わら]ですよ、知りませんか?」

「いや、それは見れば分かるんだが」

ランスは[わら]を渡されて困惑した。

「えーとですね、JAPANの古い民話に[わらしべ長者]って話があるんです。知りませんか?わらを持った少年が土地成金になる話です。それで、一応その[わら]は[わらしべ長者]にでてくる[わら]だとして代々我が家に伝わった家宝の一つなんです」

ユキは困惑しているランスに説明した。だから、何だとランスは思ったがとりあえず[わら]をもらっておくことにした。

「まあ、試したことがないので眉唾物かもしれませんが」

「十中八九そうじゃないか?」

「すいません。それぐらいしか私にはお礼するものが無いんです」

「いいや、そんな事は無い。俺様にとってはもっと価値あるものがある」

「えっ!まさかですけど・・」

手をわきわきとさせながらジリジリとユキはランスに牢屋の隅に追い詰められていた。

「まあ、冗談はさておき」

しばらくしてランスは止めた。

「本当に冗談だったんですか?」

ランスは人の悪い笑みを浮かべたがそのまま流した。

「ここに紙と筆を用意した。アキちゃん宛てに手紙を書くと良い。責任持ってアキちゃんに届けよう」

すっと紙と筆をユキに差し出した。

「えっ、ありがとうございます」

突然の申し出だったが妹に手紙を出せるとユキは純粋に喜んだ。今まではそれすらも許されることではなかったのだ。

「時間がかかるだろうから後でまた来る。」

「そう・・ですね。それに、もう・・・お城から出る事なんて・・・」

そういってユキは項垂れた。

「馬鹿を言っちゃいけない。アキちゃんは君を釈放できると信じて今、金を必死にためている」

ランスはユキの両肩を両手でつかんだ。

「確かに通常ならそれで出れるかもしれません。でも、私の場合は多分無理です」

ぽたっ、床にしずくが落ちた。

「そんな事はない。アキちゃんもそれなりには感ずいている。それでもあきらめてはいない」

「それは何も知らないから」

涙を流しながらもランスに顔を向けた。

「それに俺様もついている」

「でも、私は」

ランスはユキの口に人差し指をあて黙らせた。

「みなまで言わなくていい。前にも言ったように俺様は一度やった女は無碍にはしない。だから、この前の返事の有無はともかくここからは出してやる」

「でも」

「くどい、そんなに心苦しいならここから出れたら俺様が心行くまで相手してもらおう、これでいいだろ。それが俺様への報酬だ」

そういって、強引にランスはディープなキスをした。

「あぁ」

「まあ、これは手付金みたいなもんだ。貰ったからには必ず出してやる」

「あ、あのありがとうございます」

ランスの言葉にユキは真っ赤にしながら俯いた。なんだかんだとランスに好意を持ち始めているようだった。

「じゃあな、また後で。それから前に言った俺様の提案は今でも有効だ。考えてくれ」

そう言ってランスは牢屋から立ち去った。ユキから見えないところすなわち牢屋への入口まで戻って来るとランスは忍び笑いをした。

「くっくっく(決まったな。これでユキちゃんは俺様のものだな。ついでに状況を利用すればアキちゃんもモノにできるな・・姉妹丼か、楽しみができたな)・・ふう、さて、お仕置きタイムだな」

そう言って、ランスは昨日と同じように尻を突き出して眠っている番兵の女の子にお仕置きするのだった。

          *

「ふう」

ランスは一仕事終え満足に浸るのであった。床には番兵の女の子が下半身丸裸で転がっていた。

「まあ、なんだな。犯っってる時はちゃんと反応してるんだよな、あえぎ声とかでも。何で体位とか色々変えたりしても起きないんだ?剰えフィニッシュ時にはちゃんと行っているみたいだし。何か納得いかないような、いくような感じだ。気持ち良かったから別にいいか。うぉ、余韻に浸っている場合ではないな」

そうつぶやき本来の目的を果たすためにその場を後にした。

(時間が無いとはいえ手がかりが無いからな、どうするか)

とりあえず、目的の特別参加券が落ちていないか床を捜しながら歩いていると誰かの鼻歌が聞こえてきた。興味に引かれてそちらの方へ様子を見に行くとそこには昨日掃除していたメイドさんがやっぱり別の場所で掃除をしていた。

「あーん、この隅っこのほこりが取れないわ。どうしようかしら」

「どうしたんだ?お嬢さん」

「あら、あなたは私にエッチな事した鬼で悪魔でスケベな人」

「なんで俺様が鬼で悪魔でスケベな人だ俺様は偉大かつ」

「あら、いい物を持っているわね。その[わら]を私に頂戴」

ランスは話を遮られてむっとしたが何時の間にか手にしていた[わら]に気を取り直した。

「いいぞ、邪魔で仕方なかったんだ」

ランスは[わら]をメイドの女の子に渡した。

「すい、すい、すーいと。これはいいものですわ。隅っこのほこりもきれいに取れるの」

メイドの女の子は[わら]を巧みに使ってほこりを取り除いている。

「ありがとう、[わら]のおかげで仕事が捗るわ。お礼にこの[みかん]をあげる」

ランスはおいしそうな[みかん]をもらった。

「この[みかん]よりもっと良い御礼の仕方があると思うんだが」

「ダメです。仕事に差し支えますから」

メイドの女の子はランスの言いたい事を毅然とした調子で断った。だが、メイドの女の子の詰めが甘かった。

「仕事が無い時ならいいわけだな」

ニヤリとランスは笑いメイドの女の子に言い放った。

「え!」

「了解だ。君の仕事が終わった時に礼をたっぷりして貰う事にしよう」

「ええ!?」

「ふっ、楽しみだな」

「ああ」

「待っているぞ」

「も、もう、ダメなのね」

メイドの女の子はがくっと膝をついた。

「くっくっくっく、わっはっはっは」

そんなメイドの女の子の様子に勝ち誇るように笑うランスであった。

「ふう、所でお嬢さん、特別参加券というものを知らないか」

一頻り笑って気が済んだランスは本来の目的を果たすべくメイドの女の子に問うた。

「特別参加券ですか?」

「そう、特別参加券」

「・・ああ!」

メイドの女の子は暫く考えていたが思い当たることがあったのか突然声を上げた。

「心当たりがあるのか?」

「そういえば、昨日それらしいものを拾いましたわ」

「何だと!それでその券はどうしたんだ」

「確か、変態ネズミさんが私のその・・と一緒に持ってちゃいました」

「・・・何だと?」

「いえ、ですから、変態ネズミさんが私のその・・と一緒に持ってちゃいました」

「本気か?」

「本当です」

「うがー、あの変態ネズミ」

そういってランスは飛び出していった。

「・・ひょっとして私は助かったの?・・よかった。さて、お掃除の続きしよーっと」

メイドの女の子はランスの魔の手より逃れられたとほっとしたがそれは甘い考えであったことを後に散々ランスに教え込まれるのであった。

          *

「やい、出てきやがれ変態ネズミ!」

ランスは変態ネズミと出会った部屋まで来ると叫んだ。しかし、影も形もなく返事は返ってこなかった。

「ちっ、ここにはいないのか?時間が無いというのに」

さすがのランスも少々あせってきていた。そんな時、通路からドタバタと足音が聞こえてくる。

「待ちなさい、この変態ネズミ」

「はん、姉ちゃん達、あめえ、あめえな。そんなこっちゃ、何時まで経ってもこの俺を捕まえることなんかできないぜ」

「「もう、許さないんだから」」

どうやら、変態ネズミとイタイを筆頭とした幾人かのメイドが追っかけっこをしているようだった。

「ふん、いい所に現れたぜ。待ちやがれこの変体ネズミ!!」

ランスも特別参加券を変態ネズミより得るべく追いかけっこに参加することになった。

「ふん、誰がこようとも何人たりともこの俺に追いつくことはできんのだ」

懸命にランス達は追いかけるが変態ネズミを捕まえる所か追いつくこともできず余裕を持たれて振り回される始末だ。

「く、正攻法では奴を捕らえることはできんな・・・イタイちゃんお前のパンティよこせ!」

「ええ!な、何を言い出すのよ」

「奴は筋金入りの変態だ、ならば生パンティには必ず反応するはずだ」

「でも」

「このままでは奴の思う壺なのだ(ふん、さっき無視した罰でもあるんだよ)」

「追いかけながらなんて無理よ」

「それはこうやるんだ」

そう言ってランスはイタイを抱きかかえるて変態ネズミを追いかけ始めた。

「きゃっ」

「悲鳴上げとらんとさっさと脱げ、しんどいんだ」

「だって」

「だってもない。とっととやれ」

「わかったわよ。きゃっ、変なとこ触んないで」

そう言って、イタイはモゾモゾと動いてパンティを脱ぐ。

「ええい、まだか」

「きゃ、もうそう思うんなら胸とか触んないで・・んーと、もうちょっと」

「くっ、くっ、くっ、もう俺を誰も止められない」

変態ネズミを先頭にチェイスはまだ続く。それぞれの思惑を持って。

「はい、脱いだわよ」

そう言って、脱ぎたてホカホカのパンティをランスに渡す。

「うむ、ご苦労。降ろすぞ、気をつけろ」

受け取ったランスはイタイを降ろす。

「きゃ、もう少し・・・」

降ろすことはできたが、直ぐに走れるわけでもなく後方にイタイが去っていった。ランスはかまわず変態ネズミを追いかける。

「くっ、待ちやがれ(ちっ、タイミングが問題だ。せめてもう少し奴との距離を縮めなければ、投げても奴の視界に入らん)」

「待ちなさい」

「私のお気に入り返しなさいよ!」

「おお、あれは」

変態ネズミはターゲット、すなわちまだコレクションに加えていない新人メイドを発見した。変態ネズミの目がピキーンと光った。

「ターゲット、ロックオン、行くぜ。この変態ネズミの必殺の技を」

変態ネズミはスピードアップした。

「むっ、変態ネズミ何かする気か?」

ランスもこれ以上離されない為にスピードアップする。

「行くぞ、ターゲット!!お前のパンティもらった!」

変態ネズミが新人メイドに飛び掛る。新人メイドは籠のような物を抱えていたらしく変態ネズミに気がついていなかった。

「えっ?きゃあ、あ、いやー」

変態ネズミがすれ違った瞬間、新人メイドは素っ裸になり籠とメイド服が宙に舞っていた。そして間髪いれずにランスに押し倒されていたのだ。ほとんど、連携技と言ってもいい流れであった。籠が落ちた時にはランスは一戦交えようと体制をとっていた。ちなみに、変態ネズミは手に入れたブラジャーを頭にかぶりパンティを加えてそのまま逃走していたし、他のメイド達も同僚のことなど気にせず追いかけていた。訳も分からぬまま押し倒された新人メイドはパニックになりながらも抵抗していたがそれも空しく破られようとした時、救いの手が現れた。

スパーン!

軽快な音が聞こえる。ランスの後頭部にハリセンでイタイが突っ込みを入れていた。

「あんたが足止めされてどうすんの!!」

「うぉ!何しやがる?ああ、俺は何時の間に?まあ、いいか、とりあえず犯っておこう」

「あぁ」

突然訪れた災いにおののく新人メイド。

「じゃ、ないです」

スパーン!

再び、イタイの突込みがランスに炸裂した。

「ランスさんが引っかかってどうするの?目的忘れてません?」

「うむ、(よくも殴りやがったな、覚えてろよ)そういえば変態ネズミを捕まえようとしていたんだった。裸の女の子が俺様を誘惑していたので、つい、相手をせねばと体が行動していただけだ」

事の成り行きに着いていけず涙目に呆然とする新人メイド。

「・・・ケダモノ」

イタイはランスの本能の赴くままの行動をみてそうつぶやいた。思えばランスも変態ネズミも同レベルなのだ。口に出すどんな事をさっるか分からないので黙っているが。

「しかし、今から奴に追いつくのは至難の業。ここはあきらめてこの子の相手でも・・」

と言っていると再びドタバタと足音が聞こえてくる。

「・・戻って来たみたいですよ」

新人メイドはそのままだと身の危険を感じたのでランス達が近づいてくる騒ぎの元に気をとられている内にメイド服を着た。

「おお、いいタイミングだ、これを使えるな」

そう言って、先程イタイより調達した脱ぎたてパンティを握り締める。イタイはそれをみて少々頬を赤らめた。

「あんまり、握り締めないでくれる?」

そう言っている間も変態ネズミがランス達の方に向かってやってくる。タイミングを計っていたランスはイタイの言ったことなんて聞いてはいなかった。

「よし、今だ!」

ランスはパンティを放り投げる。

「そろそろ、飽きてきたな、撒くか・・おおっ!」

変態ネズミは視界にパンティが入った瞬間、もうそれに向かって飛びついていた。

「ふん、予想通りだ。おりゃ!」

がしっ!

予想通りの行動をした変態ネズミを捕獲することはランスにとって難しくはなく、パンティに飛びついた変態ネズミを両手でがっちりキャッチし捕獲に成功した。しかし、ランスは気付いているだろうか変態ネズミとランスの行動パターンが同じであった事を・・

「うぉ!しまった!」

「さて、変態ネズミ。よくも手間を取らせやがったな」

「やだな、あんちゃん追いかけられたら、普通、逃げるだろ?」

「いや、ぶちのめす」

「・・・そうかい。まあ、捕まったからには覚悟するしかないか」

「俺の用件を素直に叶えてくれるなら逃がしてやらんでもない」

「本当か?」

「それ、どういうことよ!!」

「そうよそうよ」

ランスの言葉にイタイを始めとするメイド達が抗議した。

「うるさい!とりあえず俺が捕まえたんだから先ずは俺に優先権がある」

「もう、逃さないんだから」

「やい、変態ネズミ。お前、特別参加券を手に入れたそうだな?」

「ああ、特別参加券か・・」

「さっさと出せ。俺様が有効に使ってやる」

「・・・ない。」

「な、なにー、どういうことだ」

「それはな、なんとあのリア王女の侍女マリス・アマリリスのパンティと交換できたのだ!!」

「なっ!」

「ふふ、あのマリス・アマリリスだけは中々隙を見せないんで俺のコレクションに今までなかったのだ。それがついに我が手に!!この町にいる若い娘たちのコンプリートも近い」

さり気にとんでもない事を言っている変態ネズミ。だが、ランスにとっては(他の人にとっても)そんな事はどうでも良かった。

「こ」

「こ?」

「こっのっ、変態ネズミがーーー」

ランスは怒りに赴くまま、変態ネズミを床に叩きつけゲシゲシと蹴りを入れた。その後気が済んだのか蹴りを止めた。既に変態ネズミの意識は無くボロ屑の様に転がっていた。

「イタイちゃん、後は好きにしていいぞ」

(マリス・アマリリス・・・こいつが特別参加券と喜んで引き換えにしたというぐらいだ。凄い美人なんだろうな・・しかし、これはイタイな・・)

「えっ!いいの?よし皆、連行するわよ」

「「おう」」

メイドさん達に連行・・引きずられていく変態ネズミであった。

「道は閉ざされちまったか・・・」

ランスにしては珍しく落ち込んだ気分に浸っていた。

「あ、あの」

そんな様子に恐る恐る声を掛ける新人メイド。

「ん、なんだ?さっきのメイドさんか」

「あ、あのですね」

「そうか、皆まで言うな。落ち込んでいる俺様を体で慰めてくれると言うんだな」

そう言ってランスはガバッと新人メイドを押し倒していた。

「えっ?きゃぁー、ち、違います。あぁ、止めてください」

必死に抵抗する新人メイド。

「嫌よ嫌よも好きの内っと」

そう言って脱がしにかかるランス。

「いや、ち、違います。特別参加券の事です」

「何だと?何か心当たりがあるのか!」

とりあえず、脱がすという行為を止めてランスは問い詰めた。

「あのですね。前にここの王様が持っているのを自慢していました」

「何?あの王がか?でかした!」

「だから、止めてください」

「ふふ、ご褒美をあげよう。その体に!」

「ぜ、ぜんぜん聞いてなーい」

ランスは新人メイドの必死の訴えなど聞いちゃいなかった。

「ひーん」

新人メイドの儚い悲鳴がこだました。


 <続く>






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