ランスの冒険 第一話 〜光を求めて〜

第7章 捜索3日目 〜ユランの挑戦〜


(しかし、あのユキって娘を見ていると誰かを思い出すな。最近あったと思うんだが・・・・おう、あのカジノにいた場にそぐわない少女だ。なにか関係があるかもしれん。聞いてみよう)

ランスはそう結論に達し、カジノに向かう事にした。カジノに着いたランスは目的の女の子を捜した。

「おっ、いたいた」

早速見つけて女の子に近づき話しかける。

「なによ、ルーレットの邪魔よ」

真剣にルーレットをやっていたのを邪魔したランスを女の子は邪険にした。

「(むっ、しかし、ここは我慢だ)君の名前は?」

[もう、うるさいわね。アキ・デルよ。分かった?なら、あ・・」

ランスは途中でそれをさえぎる様に言った。

「そうか、やっぱりな。どうりでよく似ているわけだ。ユキって娘は、君の姉妹か何かじゃないかな?」

その言葉にアキは過剰に反応する。

「あなた、ユキ姉さんを知っているの?ユキ姉さんがどうなっているのか知っていたら教えて」

ユキという言葉をランスから聞いてアキはランスに詰め寄った。

「君と彼女の関係は?」

「ユキ姉さんは私のたった一人の肉親です」

「そうか、ユキちゃんはこの白の牢屋の中に捕まっている。ひどい場所だった・・」

ランスはユキのいる所を今更ながら思い出し、苦い顔をした。

「そう、ユキ姉さんはまだ牢屋に・・・・」

「ああ・・とても酷い所だった。どうしてユキちゃんはそこに?」

「姉さんは、何もしていないのに王女様に謀反を企てたとして捕まったんです。姉がそんな事するはずがありません。はやく姉を助けたい」

アキの姉を思う心が切にランスに伝わった。

「確かに、俺様もユキちゃんに会ったがそんな企てをする娘には見えなかった」

「私は、姉を助ける為に保釈金を稼いでいるのです。あと少しで目標の金額に達成するのですが・・・」

「だが、君の姉さんは、お姫様を暗殺しようとした罪という事で投獄されている。保釈は難しいんじゃないかな?」

彼女はランスの言葉を聞いて懐から一つのペンダントを取り出した。

「これを姉のユキに渡してもらえないでしょうか?」

「これは?」

「はい、私達の家に代々伝わる[やすらぎの石]です。この石がきっと姉の心をやすらげてくれるでしょう」

「いいだろう。姉に渡しておいてやろう。俺様を信じろ」

ランスはこの姉妹を何とかしてやろうと決意した。ただし、当然、下心は有りありだったが。

「ありがとうございます。これは少ないんですがお礼です」

ランスは彼女から[やすらぎの石]と200GOLDをもらった。

「姉の事、よろしくお願いします」

「任された。そう言えば、俺様は名乗ってなかったな。俺様はランスだ。俺様に任せたからには大船に乗った気でいな」

そういって、ランスはカジノを離れた。外に出てみるとコロシアムの方から大きな歓声が流れてきた。どうやら、今日の大一番らしい。

「ちょっと覗いてみるか」

コロシアムに入ると歓声が聞こえてくる。そんな中、向こうから戦士のなりをした女が近づいてきた。女戦士は試合を見ながらつぶやいた。

「ああ、つまらないわ、みんな弱い人ばかりで」

(確かにあれじゃ、普通の人間から見ればすごいように見えるが俺様のような超一流の戦士からすれば二流としか言いようが無い。それが分かるという事はそれなりにできるようだ)

「君は?」

「私は、ここのチャンピオン、ユラン・ミラージュ」

「ほう、君が(この娘が・・・かわいいというよりは美人じゃないか)俺様は、ランス」

互いに強い意志を秘めた目が値踏みするように見合う二人。「ユラン・ミラージュ」を名乗った女戦士は、水色の髪に黄金のビキニ鎧を着けていた。そして、背中には女戦士が振るうにしては無理がありそうな大剣があった。

(こんな裸同然の鎧で本当に体が守れるのだろうか。いや、守れるのだろう。でなければ、あそこで闘っている連中が二流とはいえ、その上に君臨する事はできない。基本的には素早さが基本なのだろうがあの大剣はアンバランスだな)

(この男、動きに隙が無いわね。私が睨んだとおりならここで闘っている男なんかよりは強いわね)

互いが相手の感想を抱きながら会話を続ける。

「最近の男は、だらしないわ。闘っていても・・・・ね(あなたはどうかしら?)」

「お前、何か生意気だぞ・・あんまりなめるな(ふん、その自信がいつか、命取りだぜ)」

自分のことは棚に上げるランス。

「ふふ、みんな、私にそう言ってきたわ。でも、闘って立っていたのはわ・た・し。それじゃあなたなら私に勝てるって言うの?」

「ふっ、その通りだ」

「自信満々なのね。クス。どうここで私と勝負しない?(自信があるならのってきなさい)」

「コロシアムでか?」

「そうよ」

「俺様は、金にならない事はしない」

「そう、あなたと闘ってその自身を打ち砕いてあげようと思ったのに・・(期待はずれだわ。臆病者ね、この男)残念ね」

「なかなか、面白い女だ。どうだ、俺様が勝ったら俺様の”女”になるか?」

「私が負けるわけが無いけど勝ったらね(ふふ、のってきたわね。でも、残念だけどあなたは私には勝てないわ。必殺の[幻夢剣]がある限り)」

(・・・しめしめ・・俺様が女なんかに負けるわけ無いじゃないか・・この試合貰った)

「いいだろう。そのお前のかわいい面を俺様の足元に跪かせてやるぜ(そして、ひいひい鳴かせてやるからな)」

「せいぜい、恥をかかないようにね(ふふ、面白くなりそう)」

「戦いは次のトーナメントの時に・・楽しみにしてるわ」

「そうだ、ついでだ、ヒカリって娘を知らないか?」

「ふん、知らないわ」

「じゃあな、肌を磨いて待っていろ」

「そちらこそ、首を洗って待ってなさい」

そういって、互いに分かれた。

(さて、何か面白くなってきたぞ。とりあえずトーナメント参加の準備をするか)

ランスは準備に掛かるべく街へ向かった。

(まずは、シィルの所へ行って魔法の準備をするか)

 ランスは昨日の盗賊退治で魔法を使うことに味を占めていた。今は[ヒーリング]を宿しているわけだが昨日は、盗賊だけでなくモンスターとも遭遇しており、そのなかで、ハニーに何度か遭遇し、その時には[はにわ銅像]を手に入れてなっかったので[ハニーフラッシュ]を食らったのだ。そのときに、[ヒーリング]が役に立ったのである。

 そういうことで、ランスは自分に使える魔法が何があるのか知り、トーナメントに役立てようと思ったのだ。

パリス学園に行きシィルをいつものように呼び出すと、

「ランス様・・」

「何だ?

「召使いの女の子のバッチィがかわいそうなの」

「突然何を言い出すんだ?俺様には関係ないことだぞ。かわいい娘ならその限りではないが。って、そんなことよりお前に用があって来た」

「はい、何でしょうか?」

「シィル、俺様に宿らせることのできる魔法とその方法を教えろ」

ランスは有無を言わさず命じた。

「ランス様、一通り説明を受けたのでは?」

「うるさい。めんどくさいので忘れた」

「えーとですね。(もじもじ)・・・・で・・・・こうだと・・・・なんです」

シィルは魔法を説明するときはスラスラといえるのだがそれを宿らせる方法となるとたどたどしくなってしまった。それを聞いていたランスはニヤニヤとしていた。

(くくく、ういういしいな。さすが俺様の奴隷。確かに、宿らせる方法がイタす事なんだからなんて俺様向きだ。それにしてもシィルの説明だと5種類だな。たしか、悪徳商人のボブは少なくとも6種類以上使えるようにできるとか言ってたよな。くそ、ボブのやろうだましやがったな。今度あったときとっちめてやる)

 シィルも知らないことであるが実際にはちゃんと仕込まれている。単純に、シィルのレベルが低いので使用不可能なだけである。レベルが上がれば自然と使えるように調整されているのだ。ボブ自身は調整を施した魔法使いから聞いた事を鵜呑みにして説明をしただけなのであった。

 ランスは気付いていないが、魔法を宿らせることができるなど普通はできない。普通、一般の人間が魔法を使えるとすればそれは魔法のアイテムによる方法ぐらいである。また、宿らせても使いこなすことができない。魔法使いとしての素質がなければ。ランスの場合はたまたまあったから使えたのである。その点をボブは説明していなかった。さすが、悪徳商人だけあって、説明すれば普通なら意味のない能力だということに気付いていたからだ。なんせ魔法の素質があるなら普通は魔法使いになるからだ。

ランスが聞いた魔法については以下のとおり。

魔法の種類
ヒーリング   (体力を回復させる)
リーダー    (人の心がある程度読める)
マジックミサイル(エネルギーの矢が敵にダメージを与える)
ダウン     (敵の防御力を低下させる)
ダウン−ロック (敵の動きを遅くする)

「[ヒーリング]については昨日、今日、使ってわかったからそれ以外がどんなのか試してみるか」

「えっ、それって」

そういって後退るシィル。

「そうだ、お前の思っているとおりだ」

そんなシィルの様子を見てランスはニヤリと笑った。

「そんなーー」

ランスはシィルに踊りかかった。後はお約束である。

          *
          *

「ふむ、これで一通り試したことになるか」

ランスは満足そうにうなずいていた。その横では身づくろいしているシィル。

「ランス様。やっぱり、痛かったです」

「とりあえず、今、宿っているのは[リーダ]かこれがあれば、相手の動きがある程度、読めるか」

「ランス様。無視しないでくださいよう」

「ええい、大丈夫だ。前よりは痛くなかっただろうが。慣れてきた証拠だ。じゃ、俺様は忙しいから行くぞ」

シィルの返事を待たずにランスはその場を立ち去った。

「わかりました。ランス様。お気をつけて」

少々涙目のシィルはランスを見送った。

(次は、昨日の盗賊退治で痛んだ武装の手入れだな。武器屋へ行こう)

ランスは武器屋[PONN]へ行き、中に入った。

「いらっしゃいませ。当店では、危ない武器、無意味な武器など色々品多く取り寄せています。どのような物がご入用ですか?」

決まり文句でランスを向かえるミリー。

「おう、いつも可愛いなミリーちゃん」

「私は可愛くないですよ。・・なんか、生きるのに疲れてしまったわ」

「君は何歳だ?」

「17歳です」

「人生に疲れるのに早すぎないか?」

「で、何にしますか?」

「ずばり、君だ!」

昨日と同じ事を繰り返すランス。

「抱きたかったら、どうぞ。こんな私でよければ。うふふふふ」

しかし、昨日とは違うアクションを返してきた。

「や・・やっぱり、やめておくよ」

(なんか調子狂うな。この娘本当に自殺願望かもしれないな。そうだ、[リーダー]の呪文があるじゃないか)

ランスは[リーダー]を使ってミリーの心を読んでみた。

(死にたい・・・死にたい・・・・早く、死にたいな・・・。何でこんなに死にたいんだろ。あの短剣で私の喉をつけば死ねるよね)

(なんか、やばそうな思考だな)

ランスがそんな事を思っていると、ミリーがふらふらっとおもむろに短剣を取り、それを喉に向けた。思考を読んでいたランスはそれが本気か衝動的かは別として実行しようとしていた事は分かった。

「いかん(俺様の目の前で可愛い娘に死なれてたまるか)」

 このときランスには分からなかったがミリーが例の骸骨による呪力の影響で自殺願望を抱いていた。それはランスが知らずに骸骨を壊したので影響を受けなくなったので本来は自殺願望が無くなるはずだった。だが、呪いが絶たれたことで呪いは施術者の元へ帰った。つまり、父親の元へ。だが、呪いは強力であったため、父親の系譜つまり、ミリーにまでその呪いが及んだのだ。まさに親の因果が子に報いというやつである。

ランスはミリーの腕をつかみ、短剣を誘うとしていたのを止めた。

「どうして、止めるの?私なんか生きている価値が無いのに」

ランスはミリーから短剣を奪いそれをミリーの手の届かない範囲に投げた。

「(このままじゃ、俺様がここで止めても、いずれ自殺をするな。ここじゃ、そんな道具にはことかかんし)気が変わった。ミリー、君には生きる価値があるという事を教えてやる」

そういって、ミリーを押し倒し、覆いかぶさっていった。

          *
          *

ランスとミリーは互いに折り重なるように抱き合っていた。あれから、ランスはミリーを抱きまくった。ミリーが何も考えられないくらいに。ミリーも最初は初めてだったようで痛がっていたが、最後には快楽におぼれていた。

「ああ、もう・・・だめ。死んじゃう」

「ふふふ、そんなに死にたければ、俺様がこうやって何度でも、逝かせてやる」

「あっ」

ミリーとの行為に一区切りついたランスは息をついた。

「ミリーちゃん、お前は俺様の物だ。だから、勝手に死んじゃいけない。君の生殺与奪の権利は俺様にある。分かったか?」

そう言って、ミリーの体を軽くまさぐり始めた。

「・・・・はい。あっ」

行為に疲れたのかミリーは声もうつろに返事した。

「いい子だ。まだまだ、可愛がってやる」

ランスはミリーの返事を聞くともう一度、行為に突入した。

     *

ランスは本来の目的である、武器の手入れをする事にした。ミリーはランスが散々、可愛がったので今は、疲れて眠っている。その間に、勝手に道具を使ってであるが。一通り、手入れが終わった頃にミリーが起きてきた。

「起きたのか?ちょっと道具を借りていたぞ。代金はちゃんと置いているぞ」

「え、はい。ありがとうございます(ポッ)」

先ほどの行為を思い出し、ランスにどう接すればいいのか分からず戸惑いを見せている。

(よしよし、かわいいぞ。俺様の”女”はこうでないとな)

「じゃあな、ミリーちゃん。君は俺様の物だ。勝手に死ぬなよ?」

ランスはミリーの穂に触れながら言った。

「はい。私なんかでよければ」

「私なんかって言うんじゃない。君はいい女だ。俺様の”女”だからな」

ニヤリと笑い踵を返して、武器屋を出て行った。

ランスは知らないが呪いの影響をランスは知らずに念によって封じてしまった。もっとも、完全にというわけではないが。そのおかげで、ミリーは今後、自殺願望が少しずつなりを潜めていく事になる。あくまで、呪いが無くなったという訳ではないが。

武器屋を出てきた時には日が暮れかけていた。

(げっ、やばい。ユキのところにもう一度行っておこうと思っていたのに。これじゃ、城に入れん)

うーんと唸っていたランスは商店街のほうに見知った女の子がいるのを見つけた。

(おお、あれは、イタイちゃん。ラッキー)

ランスはすぐさま、イタイのほうへ向かった。

「おーい、イタイちゃん」

イタイと呼ばれたメイドの女の子は気づかないのか声をかけたランスの方を振り向かない。

「おーい、イタイちゃん」

近づきながらもう一度声をかけるが振り向かない。

(むむ、無視してるのか?だったら)

ランスはイタイの背後に忍び寄った。

むにゅ、もみもみ

ランスはイタイの背後から胸をもんだ。街の往来で。

「きゃ、な、なに。いや!」

「おれだ。イタイちゃん」

「あん。って、あんたは・・・って、あん、そういえば名前知らない」

「おう、そういえばそうだったか。Hまでした仲なのにな。俺様はランスだ。イタイちゃん」

「ばっ、あっ、って、もう、やめ・てよ。道の・・往来・で」

「ちっ、楽しいのに」

「こっちは・・あ・・楽しく・・ない・です」

「がははは、そうか、楽しくではなく、気持ちがいいだったな。そろそろ、感じてきたな、乳首が立ってきたぞ」

「だから・・もう・・ん・・や・めて・・」

「ちぇ、仕方ないな」

「もう、なんですか。それにイタイちゃん、イタイちゃんっていって恥ずかしいじゃないですか」

胸を隠しながら真っ赤になりランスから離れるイタイ。

「俺様の”女”になるならちゃんと名前で呼んでやるぞ」

「え、遠慮しておきます。痛いもん」

「そんな事はないぞ。それはまだ、最初だからだ。数をこなせば気持ちよくなって病み付きになるぞ」

手をわきわきとさせるランス。

「いいです」

「いやいや、遠慮するな」

「ええ、いやん。どこへ行くの」

商店街を歩く人はランス達のやり取りを聞いてたりする者もいるにはいたがランスに睨まれて急いで退散していく。それに雰囲気的にはそんな無理やりという風にも見えず、警備兵が呼ばれることもなかった。ランスも当初の目的を忘れたのか、犯る事しか考えていないようだった。イタイは結局、抵抗(といってもそんなに抵抗していなかったが)も空しく、商店街のはずれの裏路地に連れ込まれた。

「がはは、ここなら、人の目も気になるまい」

そういいつつ、ランスはイタイを壁に押し付けた。

「場所がきになるわよ!」

イタイはちょっといやいやをしながら抵抗する。

「そんなもん、すぐ気にする事もなくなる」

そういって、ランスはイタイの服の胸の部分を素早くはだけさせるとそこに顔を埋めた。

「そんな・・ああっ」

「先ほどの愛撫でここはもう濡れていたようじゃないか」

スカートの中にランスは手を突っ込みそういった。その言葉をきっかけにイタイは快感の渦に巻き込まれていった。

          *
          *

「ふう、思わず目的を忘れて犯ってしまった。おい、起きろ」

ぺしっぺしっ。

気絶してランスに倒れこむように体を預けていたイタイの頬を軽く叩く。

「ううーん。あ、あれ?」

「起きたな」

「あっ(真っ赤)」

もじもじするイタイ。

「ふふふ、だいぶ感じて気持ちよくよがってたじゃないか」

「ひどい」

「そんな事はない。イタイちゃんは喜んでいた。素直になれ」

「もう」

「そうだ。思わずお前の反応が可愛かったから目的忘れて犯ってしまったが、なあ、この時間、俺様を何とか城に入れることはできないか?」

イタイはランスの可愛いという言葉に顔が真っ赤になった。

「それはダメなんです。私のように城勤めならともかく、ランスさんは違いますから・・」

「(おっ、なんか、俺様に対する態度が変わったような気もするな)じゃあ、すまないが頼まれて欲しい事があるんだが。そんなたいした事じゃない」

そういって、イタイにユキの事をおおまかに話した。

「で、ユキに暖かいものを差し入れして欲しいのだ。それとできれば着替えを。番兵はさっき言ったように退屈な話をすれば眠っちまうからその隙にやってくれればいい」

「でも・・わかったわ」

「もちろん、礼はするぞ」

「まさか、エッチなことじゃないでしょうね」

「ん、それでいいのか?」

「ば、ばか」

「じゃ、頼んだぞ」

イタイを城の前まで送った後、日が暮れてしまったので宿屋に帰ることにした。

「ただいまだ。奈美さん」

「あら、ランスさん。おかえりなさいませ」「おかえりなさい、ランスさん」

奈美とフララが出迎えてくれた。フララも奈美と同じJAPANの着物を着ていた。

「似合う?ランスさん」

「おお、似合うぞ。グッドだ(すぐにでも押し倒したいぞ)」

「ふふ、フララちゃんに手伝ってもらってるんです」

(ふむ、どうりで、心なしか客が多いような気もするぞ。こいつら、奈美やフララは俺様のものだぞ)

ランスは、客をにらみつけた。ランスを見ているものはいなかったが。そんなランスに奈美は近づき

「ランスさん。今日、フララちゃんを連れて医者に言ってきました。とりあえず大丈夫だそうです」

と小声で言った。

「そうか、分かった。何事も無く何より。それにしても、いつもより、多いな」

「はい、なんでも、ここ最近、モンスターがたくさん出るようになったそうで、商隊の護衛だそうです」

「ほう、それで仲には柄の悪い連中もいるわけか・・・」

「なんでこんなにモンスターがたくさん出るようになったのでしょうね」

「政治がみんな、悪いんだ(本当は魔王が代替わりしたからだとか前にゼスの辺境で仕事した時に食事を恵んでやった大喰らいの男が言っていたような。魔王か・・確か今の魔王はリトルプリンセスとか言われているんだよな・・・)」

そんな事を思っていたランスの頭に来水美樹の姿が浮かんだ。

(はっ、まさか・・・な)

ランスは自分の考えを否定すべく頭を振った。あの不思議な力とプレッシャーを感じたランスは完全には否定できなかった。その考えを奈美の言葉が中断した。

「そうですね・・・でも、政治家の人達・・怖いから文句言えませんね」

「ふふん、権力を持っている奴に限ってクズが多いからな」

「そうかもしれませんね。JAPANも今は戦国時代とか呼ばれて偉い人たちは権力拡大を求めて争っているし」

「おーい、ねえちゃん。泊まりだ」

「はーい」

奈美は客が来たので席をはずした。

「フララ、いいのか?」

「うん、大丈夫だよ。ランスさん。それに、今はなんとなく体を動かしていたいの」

「そうか。接客業では客にいやな思いをさせられる事もあるから気をつけるんだぞ」

「うん、でも危ないときは助けてくれるんだよね」

「おお、助けてやるぞ。フララちゃんは俺様の”女”だからな」

「もう、(ポッ)ランスさんたら」

「なあ、ちょっと気になる事があるんだが」

「なに、ランスさん」

「やっぱり、その着物着るときって、下着付けないのか?」

「もう(真っ赤)、ランスさんのスケベ」

「おう、俺様はスケベだぞ。で、どうなんだ」

「一応、これ用の下着があるんですよ。胸の部分は無いですけど」

「ふーん、どれどれ」

おもむろにフララを抱き寄せ、襟のところに手を突っ込んだ。

「きゃっ」

「おお、本当だ。つけていない」

「もう、ランスさん!」

そんなやり取り(いちゃついてるともいう)をしていると、受付のほうから騒ぎが聞こえてきた。

「何をするんですか!お客さん」

「はは、いいじゃないか、姉ちゃん。一人寝はさびしいだろ?俺が楽しませてやるよ」

奈美に大男が絡んでいた。小柄な彼女との対比で余計に大きく見える。

「結構です。間に合ってますから」

「つれないねえ。いいじゃないか」

「いい加減にしてください。出って言ってもらいますよ」

「この女、舐めやがって」

逆上したのか奈美につかみかかろうとする。それを冷静に奈美は対応した。つまり、

「おりゃー」

気合を入れて奈美は自分よりも頭2つは確実に高い大男を宿屋の表へ投げ飛ばした。他の客もそれを見て

「おおっ!」

と歓声を上げるぐらい見事な投げっぷりであった。それを見たランスはフララと顔をあわせ、

「まあ。とりあえずこの宿屋にいる間は奈美さんもいるから大丈夫だな」

「す、凄い、奈美さん」

「ああ、ほんとに凄い。(見事な投げだな。俺様もあんな感じで投げられたのかな?)俺様でも投げ飛ばされるからな」

「えっ?」

ランスの言葉は最後のほうは小さく言ったのでフララには聞き取れなかったようだ。

「ん、なんでもない。(しかし、よくよく考えると、俺様を投げ飛ばせるんだからこの国で一番強いのは奈美さんじゃないか?)そうだ、フララちゃん、暇なときに奈美さんが使った技、柔道ていう奴だが護身用に教わったらどうだ?見ての通り非力なものでも十分に対抗できるしな」

「そうですね」

後に、ランスの言葉がきっかけだったのか分からないが女性の護身術として柔道は急速に広まっていく。ランスは気づかなかったようだが、ランスと違って手加減無用の投げであった。ここでランスが対応の違いに気づいていればもう少し関係も進展していただろう。

「おお、そうだ。俺様はちょっと用事を思い出した。ちょっと出かけてくるぞ(ふん、俺様の物に手を出したケジメはつけてもらわんとな)」

そういって、たたき出された男のほうへ向かった。ランスが丁度、着いたとき、大男は頭を振って立ち上がろうとしていた。そのそばには連れと思われるものが3人。

「いてて、くそう、あの女、よくもやりやがったな、絶対、痛い目に合わせてやるぞ」

「おう、そこのでくの坊。顔貸しな」

ランスはあごでしゃっくった。

「なんだ、手前は」

「お前なんかに名乗るような安っぽい名前は持ってない(ふん、連れの奴らも、こいつと同じくクズのようだな)」

「なんだと、こら」

連れの奴らも同じくいきり立つ。

「あっちでやろうぜ」

こいつあほかみたいな感じで顔を見合わせて男達は鬱憤晴らしだとニヤニヤ笑い、ランスに着いて路地の方へいった。

          *
          *

路地裏で男の断末魔が聞こえたが誰も気づかなかった。(もしくは振りをした)

「ふん、自分と相手との差も分からぬクズが。・・・ちっ、しけてるな」

男達から手持ち金や金目の物を残らず奪ったランスは、そうつぶやき去っていった。ランスに言わせればこれは追いはぎではなく勉強料となる。後には屍のごとく転がっている男達であった。


 <続く>






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