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GS美神 近くて遠い夢

 Report File.0002 「大逆転シナリオ その2 再計画編1」
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*注意)このお話はオリキャラが主体で既存のキャラは名称でしかでて来ません。
    それがお嫌な方は読まないことをお勧めします。




「はあ、兄貴。俺達いつまであいつの生活を観察していなくちゃいけないんでしょうね」

「言うな。弟よ」

 今の状況に嫌気がさしたアンカー弟をアンカー兄が諌めた。先日、突然現れた仲間であるイルの持ちかけた計画を実行するにあったって問題にぶち当たり、いきなり頓挫仕掛けていた。

「けどよ、実行しようと動き出して、早一ヶ月経ってるんだぜ」

「まあ、今はチャンスを待つ時期だ。それに奴の周りの情報も集まってきているし、イルはそれを分析して計画の修正をしている所だ」

「まあ、分かっちゃいるんですけどね」

「厄介だな。霊感か・・・」

 アンカー兄もいい加減疲れたのかため息をついた。そう、霊感である。彼らが計画を実行しようとすると奴・・横島の周りの人物で横島に好意を持っている者たちが何かを感じ取るのか計画を実行できないような状況に持ち込んでしまい計画を中止せざるをえない羽目に何度も陥っていた。

 例えば、


<よし、奴が美神除霊事務所をでた>

 作戦地点で息を潜め決行の時を待つアンカー兄にイルより通信鬼で連絡が入る。

「了解」

 しばらくして横島を遠くから付けているアンカー弟から連絡が入った。

<兄貴、目標は作戦地点(横島のアパート)に帰還中、約7分で到着予定>

<こちらイル、今注意人物である氷室キヌは、美神除霊事務所で客の応対中だ>

「了解。作戦準備にかかる」

 いよいよかとアンカー兄は作戦実行の前に緊張している心を解きほぐし実行しようとした。その時、

<待ってくれ。兄貴、今、奴が何者かと接触した。・・あ、あれは確か資料にあった人物、伊達雪之丞だ。何か話し込んでいる。くっ、ここからでは何を話しているか分からない。・・・・あっ、一緒に歩き出した。・・方向は作戦地点の方だ>

「何だと。どうする?イル」

<・・仕方あるまい第3者の介入があった時点で計画遂行に支障があると判断する。今回は中止だ>

「・・了解。アジトに戻る」

 そう、後に彼らにも理由が分かるのだが伊達雪之丞が横島に飯をたかりに来たのであった。


とか、学校の机妖怪である愛子がクラスメートの幾人かと遊びに来たり、犬塚シロが散歩の誘いに来るとか、タマモが美神令子と喧嘩して家出して来たり、美神令子に緊急呼び出しされ事務所に引き返すことになったり、タイガーが付き合っている一文字魔理の事で相談に来たり、パピリオが小竜姫と共に遊びに来たときなどはアンカー兄は見つかりそうになって危なかった。他にも色々あった。

等、で計画を中止せざるをえなかった。

 そうして、早一ヶ月も経ってしまっている。いい加減、彼らも疲れてきていた。

「よう、待たせたな。アンカー兄弟」

 そんなテンションが低くなってきている兄弟にイルが上機嫌で声を掛けてきた。

「おう、イル。何かご機嫌だな。いい算段でもできたのか?」

「ああ、やっとな」

「しかし、この計画は言うは易し、行なうは難しだな」

 アンカー兄がしみじみとここ最近の事を思い返して言った。

「・・確かにまさか。こんなにも実行するのに障害があるとは思わなかったよ」

 イルも多少疲れた感じでため息をついた。

「奴を見ていると何かと厄介ごとを引き寄せているように思えるんだな」

「そう、ここ最近の短い期間を見ていただけだが、それだけでも普通のゴーストスイーパーでも遭遇しないような厄介ごとにぶち当たっていた」

「そうだな、私もそう思うよ。美神令子と居るから、色々と厄介な事に遭っているのだと。でも、実際は違う逆だ」

「「へえ、どういうことだい」」

アンカー兄弟が揃ってイルに質問した。

「まあ、その件については後ほど説明しよう。それよりも君達に紹介したい魔(ひと)がいる」

 そういうと空から、ばさばさばさと羽ばたきの音がしてイルの頭に大烏が舞い降りた。

「「おお!」」

アンカー兄弟が驚きの声を上げる。
 
「彼がイービル・クロウ族のカークだ」

「「そんな事は知っている。カァ君、生きていたんだな!」」

 アンカー兄弟が涙を流して歓喜に震えていた。

「カッカッカッカ、お前達こそ息災でなにより」

「おや、知り合いなのか?」

「知り合いも何も、俺達がこうして五体満足でいられるのもこのカァ君のおかげだ。命の恩人なんだ、俺達はあんたの為に命を捨てる事ができる」

「カァ、そう熱くなるな。そこまで恩義を感じてもらう必要はない。あの時はあれがもっとも互いに生き残る確立が高カァったカァらそうしたのだ。だカァら、互いにこうしてもう一度会えたわけだカァらな」

 カークは冗談めかしてそう言った。

「そうだ。そうなると私とて君達、兄弟に過去に命を助けられている」

 イルもニッコリと笑った。

「カァ、そういう事だ。今危険な事になれば、ややこしい事になる。それについてはいいじゃないカァ」

「そうだ。仲間だから当たり前のことをしたんだ」

「だが、意外だな。そういう事に一番縁遠そうなイルが言うなんてな」

「違いねえや」

「それ、褒めているのか?」

「そうだよ」

「少々、納得いかんがここは素直に受け取っておく」

「おう、そうしときな」

 そう言って互いに笑いあった。何気に彼等魔族達は人間でも近頃は珍しい熱い友情を育んでいた。彼等は魔であることに嫌気が差していたアシュタロスの配下であっただけに通常の冷徹な魔族よりも人間に近いのかもしれない。

「さて、紹介というより再会も一段落ついた所で計画の話をしようか。ここでは落ち着かんからアジトに戻ろう」

「「「わかった」」」

          *

 早速、イル達はアジトにまで戻ってきた。アジトは今は使用されていない古びたビルの地下室を利用していた。ここはイルが合法的に手に入れた場所であり、人除けの結界・・といっても強力なものでは感づかれる可能性があるので弱めのもので覆っている。ここは、人間が足を踏み入れることは先ずない場所であった。その地下室の壁には目標となる横島忠夫の写真を中心にその関係者が相関図と共に貼られていた。

「で、これからの方針はどうするんだ?」

 壁に貼られた横島忠夫をアンカー兄は睨みつけながらイルに言った。

「そうだな、説明しよう。先ず現場の把握だが私達は勝利を確実なものとする為に目標である横島忠夫について調べ計画を立てたが、それを実行するに当たって計画が発動させようとすると何度も邪魔が入り、中止せざるをえなかった。この計画を成功させるには最初から盛り込んでいた氷室キヌ以外の周りの人物についてもこの計画に盛り込まなければならないと判断した」

「なるほど、それで俺達にここ最近、横島忠夫に近しい人物について調べさせたのだな」

「そうかぁ」

 アンカー兄弟はイルに依頼されて今までやってきた行動について理解した。

「そのとおり。邪魔が入っていたのは意識的にか無意識かに係わらず霊感が働いての行動と思われる」

「そう言われると納得できる事もあるな」

「だから、伊達雪之丞は別段、金に困っていた訳でもないのに飯をたかったり、犬塚シロが寂しいとかいってかまってもらおうと来るんだな」

「まあ、そう言う訳で私は君達に情報収集を依頼したわけだ。これはカークにも協力してもらった。彼のおかげで一気に情報が増えたよ」

「カァ、この街のカァラス供は全て、俺の配下ァとなっているので結構楽だったのだ」

「さすが、カァ君!」

「おう、それで」

 アンカー弟はカークを絶賛し、アンカー兄は話を促がした。

「計画を実行するために、まず横島忠夫に近しい者達を引き離す。これが、今後の計画の骨子となる。ただし、近すぎず、遠すぎずといった感じでだ」

「だが、それは結構難しいのではないか?」

「確かに実行はより困難になるがそれを乗り越えねば我等に勝利はない」

 イルは拳を握り力説する。

「イルが言うんだ。それなりの理由があるんだろ」

「そうだ。大きな障害は2点ある。周りの人物の霊感、そして横島忠夫の異様な程の悪運だ。調べれば調べるほど驚愕する、一般人なら何度死んでいるかわからない目に遭っているのにも係わらず生きている。それは彼がこの世界の特異点だからだ!」

 イルは壁に貼ってあった横島忠夫の写真をバン!と叩きながら言った。

「「「特異点!?」」」

「まあ、本来の意味とはちょっと違うんだが便宜上な。通常では有り得ない事を成しえるもの。故に普通ならありえないような現象を引きつけるというか引き起こすというか、まあ、そういう存在なのだよ」

「なるほど」

「カァ、我々の立場から見て奴に相応しい言葉がある」

「「なんだ?カァ君」」

「ヒーローだ」

「「・・・ヒーローって」」

「なるほど、理不尽な状況にあっても必ず勝利を掴むもの、だからヒーローか」

「まあ、確かにヒーロー向けの能力を持っているな」

 一同は横島忠夫の持つ能力、サイキックソーサー、ハンズ・オブ・グローリー、文珠を思い浮かべる。

「でも、似合わないんだな」

 確かにシリアスしている横島忠夫ならそれなりに合う形容であったろう。

「「「「まあ、あの性格と立場じゃな」」」」

それが、この場に居る者全員の結論だった。そう、横島忠夫はギャグキャラだから。

「・・という訳で横島忠夫は特異点なのだ」

「そういう意味では美神令子も特異点では無いのか?」

「以前はそうだった。が、それを引き起こしていた原因であろうエネルギー結晶はかの計画時に無くなった。今や、美神令子は人間としては霊力が高いそれだけの存在なのだ」

「だが今でも、結構な騒動を起こしているし、悪運も強いんだな」

「それは美神令子が有名、故に稀なケースにも遭遇することが多いからではないか?」

「まあ、それも要因の一つだろう。だが、一番の原因は横島忠夫が美神令子と行動を共にしているからだ。彼と行動を共にする限り最悪の結果には為りえないのだ」

「しかし、ルシオラの件があると思うが?」

「彼女は消えていない。本来あのようなケースなら存在が消滅していてもおかしくはないのだから」

「なるほど」

「で、続きだが周りの人間を遠ざけ、かつ霊感を働かせ難い状況にする。それから、この計画自体の成功率を5分にして実行する事だ」

「「なんだって」」

 アンカー兄弟が驚きの声を上げた。


<続く>

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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。






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