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新世紀エヴァンゲリオン 世にも奇妙な我が人生
新たなる戦い編
第 8話 「ナデシコ出航(後編)」
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「一人だけ今すぐに出れる奴を知っている」
ブリッジと同じ映像、それに音声に俺は口走ってしまった。だが、それは直ぐに後悔に繋がっちまった。俺は本当に言っていいのやら分からなかった。言えば、シンジの何かが変わってしまうのではないかという重圧に際悩まされた。それが名前を言う事に歯止めをかけていた。そりゃそうだろ、何気ない一言で人生が変わる事がある。今のこれは、正にそれだと俺は感じていた。
『だ、誰ですか?整備班長』
俺のの想いなど知らずにそれを言うように即してきやがった。そりゃそうだな。もう、それしか手が無いんだから。俺は迷った。その時、隣にいたシンジを俺は見た。自然とシンジと目が合う。そこには何かを決意した色が浮かんでいた。シンジは静かに頷いた。・・俺は言った。
「・・シンジだ」
『えっ?』
聞こえなかったのか、意味がわからなかったのか聞き返してきた。
「だから、碇シンジだ」
『碇シンジ?・・って、あの食堂勤務でコックさんの碇シンジさんですか?』
一応、人員は記憶しているのか直ぐに問い返してきた。
『また、コックなの!?何なのよ、この船は!』
「そうだよ。今、出せるとしたらその碇シンジしかいねえよ!」
『でも、データによるとその碇シンジさんはIFS持ってませんよ?』
最もな意見だ。俺もそう思うよ。だけど今はそんな時じゃねえ。
「ええい、そんな事議論している時間はねえだろ!動かせるったら動かせるんだよ!!」
だから、怒鳴り込んでやった。上には勝手に俺のエステちゃんに乗り込んだバカが敵に囲まれているからだ。
『そ、そうですよね。グズグズしてたらアキトがピンチになっちゃう!!』
もうピンチだろうが・・俺は美人だがどこか頭のねじが外れている艦長の言動に呆れた。が、そうもしていられない。シンジは俺を見詰めていた。俺はブリッジへのコミュニケの画面を閉じた。
「出るのか?」
「ええ、ここには僕が守りたいと想う人が、人達がいますから」
シンジはニッコリと笑った。それは少年の笑顔というよりは男くさい笑顔だった。
「・・なぜかな何れは、そうなるかも知れんと思っていたんだ。それが直ぐとは思わなかったけどな。シンジの乗るエステの準備は出来ている」
シンジを準備しておいたエステバリスに案内した。その前で立ち止まり俺は少し目線を落として帽子を被り直した。
「いい仕事してますね」
俺達、整備班が丹念に整備しピカピカに磨き上げられたエステバリスを見上げて言った。周りに何人かいた整備員が当たり前だと誇らしげに言った。そのカラーリングは前にシンジが乗った時に変化した配色にしていた。何故そうしたかと聞かれると困るが、長年の感がそうしたほうが良いと告げていたからだ。事実、シンジが乗る事になった。これに乗っていれば色の変化は目立たない。これでIFSなしでも動かせる事、意外の特異な変化に注目を集める事は無い筈だ。あの時に居た連中は信用できる奴等だからもれる事は無いはずだしな。
「死ぬなよ」
俺は当たり前のような事しかいえなかった。
「はいっ!死ぬつもりはさらさら無いです」
確かに悲壮感なんぞ全然無かった。これから戦場へ向かおうというのに怖くないのだろうか?シンジはエステバリスの濃くプットへと向かった。今はただ、シンジの無事を祈り送り出す事だけしか俺には無かった。
「できればあの天河って野郎と一緒に帰ってきてくれ」
「そのつもりです」
そう言ってシンジは笑った。とてもこれから戦場に行くとは思えない表情だった。
俺はふと思いついた事をラピスちゃんに依頼することにした。
*
「システム、オールグリーン。発進準備良し・・か」
僕は今、エステバリスという人型兵器のコクピットにいた。ここに座ったのは3回目だ。実質は2回目かもしれないけど。今から僕は戦場に出る。その時、ふとあの頃・・使徒大戦とでもいう戦いでの初陣を思い出した。わけもわからずに追い詰められ放り込まれた。その後も流されてだった。でも、今回は違う自分で決めたんだ。でも、大丈夫かな。前は基本的に敵は一体だったんだよな。今回は複数だし・・一応、その辺は訓練も受けていたけど。あれ?そういや、一度だけ自分が望んで出撃した事があったな・・結果は酷かったけど。
『・・りさん、返事してください!!』
「はいっ!」
いけない、いけない。今は物思いにふけっている場合じゃなかった。時折、先程自己紹介しあった人、天川アキトさんの悲鳴やら気合やら判らぬ声が通信を通じて聞こえてくる。かなり、切羽詰ってきているようだ。
『碇さん、出撃してください』
メグミさんを通じて命令が下った。これからは指示に従い、先に出た天川さんと合流して囮として敵を惹きつけ合流ポイントを目指すと気持ちを落ち着かせ作戦内容を反芻した。
「了解」
僕は運搬用エレベータにエステバリスを移動させた。そんな僕を気遣う通信が入ってきた。その間にも移動を終え、エレベータは静かに確実に地上を目指し上昇し始めた。EVAの時とは大違いだ。あっちは無茶苦茶Gがあったもんな。その代わり早いけど。
『シンジさん、気をつけて』
『シンジ・・ガンバレ』
〔健闘祈る〕
<適当にやって来い。それより気になる事がある。ここら一帯、電波障害やら何やらで情報伝達が遅れていてな、先程入った情報にここ付近にチューリップが落下してきているらしい。光学観測を行ったから事実だ・・・具体的には10分後ぐらいに>
「へっ!?チュ、チューリップ!?」
僕は驚きに叫び固まった。衝撃的だよ。フォースインパクトだよ。意識が一瞬混乱した。チューリップぐらいの大きさの物体が落ちればどうなるか良くわかる。何せ使徒大戦の時、使徒が降って来るって事で受け止めたことがあった。受け止めれなかった時の被害を聞いて、やらざる終えないことに納得した。リツコさんは避難云々といっていたけどそんなことしても無駄としか思えなかったもんな。それと同じようなものが降って来る?冗談じゃない。でも、この世界にはEVAはない。それは止めれないという事だ。
<大丈夫だよ、シンジ。それは何とかなる・・はず>
<筈なの?>
<まあ、手段は用意したある>
『はい?チューリップがどうかしたんですか?』
確かこの人は通信係を務めているメグミさんかな。僕が思わず出した声に聞き返してきていた。
「はうっ!えーと」
僕が考えあぐねていると
<その情報はラピスを通じて今、艦長たちに伝えた>
アルファが伝えてきた途端、ブリッジを移した画面から半場パニックに陥った上層部の人たちの悲鳴が聞こえてきた。
「はははは、まいったなあ」
どんどん、悪くなる状況に僕は笑うしかなかった。
<これについてはなるようにしかならない。直撃しない限り私達は・・ナデシコは大丈夫だよ>
そうは言っても情報不足だと思う。僕の感が直撃コースと告げているんですが。ああ、EVAがあればな・・懐かしの受け止め作戦が出来るんだけどな。かなり、きついけど。やっぱりこのエステバリスじゃ無理があるよな・・
<それについては今、データの収集中だ。何とかなるだろう、その為の人材は揃っている。さっき艦長が提案した作戦を実行すれば十分ナデシコがここから脱出はするのは間に合う。問題はシンジ達のほうだ。より正確にはシンジでなく先に出ている天河アキトだが>
「兎に角、行くよ」
僕はそのチューリップによって作戦が変更されるかも知れないと思ったがアキトさんを見捨てるわけにもいかない。それにこのエステバリスに乗っている限り僕は大丈夫な気がしていた。今感じている雰囲気がEVAに乗っていた時の安心感に似ているのだ。
『ええっ!? 海底へ続くゲートが途中で止まった!?予備電源は5分後に切り替え!?それじゃ遅いよ。チューリップが落ちてきちゃうよ』
『仕方ありませんなぁ。この際多少の被害には目をつぶってもらいましょう』
『ごめん、ルリちゃんでいいのかな?』
『はい、構いません』
『途中で止まって塞がっているゲートをグラビティ・ブラストで破壊。強行突破します。その際、被害は最小限に抑えれるように出力を調整してください。出来る?』
『大丈夫です』
『ミナトさん、注水が完了しだい、緊急発進です』
『はーい』
何か出航の方もトラブッているみたいだけど聞こえてくる様子じゃ大丈夫みたいだ。その間にもエレベータはグングン上昇している。もう直ぐだ・・心を落ち着かせるために深呼吸した。大丈夫、うまくやれる。こういう時、シキが目覚めていてくれたら心強いのに。おおっとダメだよな。直ぐに他人に頼るのは。自分の力をもっと信じなきゃ。
地上に出た。そこには木星蜥蜴と言われている自律兵器が縦横無尽にいた。それらは僕を敵と認識し攻撃に移ろうとしていた。
帰ってきたのだ戦場に。
*
「チュ、チューリプですかぁ!?」
私が告げた情報を聞いて艦長が叫びをあげた。提督も副提督も呻き声を上げている。
「はい。宇宙軍が呼称するチューリップと呼ばれる物体がこの近辺に落ちてきます。現在予測であと10分で。正確なコースはデータ不足のため現在、収集中。被害についてはかなりの規模になりそうです」
チューリップと呼ばれる物体の質量を考えれば良くても日本は壊滅する。
「うーん」
艦長は先程までアキト、アキトときゃあきゃあ連発していたけど静かになった。私としては騒がしいのは苦手。だからその方が落ち着く。
「悪夢だ。まさか、あの再来がここに」
提督がぶつぶつと呟き苦虫を噛み潰したように顔を歪め青ざめていた。体も震え、今にも倒れそうな気がする。
「私の出世もここまでなの?冗談じゃないわよ・・まだまだ・・・」
副提督も似たようなものだった。心なしか提督よりも酷い気がする。案の定、副提督は泡を吹いて倒れた。確かゴートといった大男が慌て駆け寄って医務室に運んでいった。
「艦長、大変です。整備班から緊急連絡!海底へ通じるゲートが途中で止まったって、どうも木星蜥蜴の攻撃で電源が切れたようだとの事です」
またまた、トラブル・・不幸が大挙として押し寄せてきたみたい。
「ええっ!? 海底へ続くゲートが途中で止まった!?予備電源は5分後に切り替え!?それじゃ遅いよ。チューリップが落ちてきちゃうよ」
艦長の言うとおり5分の遅れは今の状況では厳しい。
「仕方ありませんなぁ。この際多少の被害には目をつぶってもらいましょう」
そう、方法はただ一つ。お金がかかるかもしれない問題もお金を握っている人の許可がでたので問題ない。
「ごめん、ルリちゃんでいいのかな?」
「はい、構いません」
「途中で止まって塞がっているゲートをグラビティ・ブラストで破壊。強行突破します。その際、被害は最小限に抑えれるように出力を調整してください。それとグラビティ・ブラストは試射した事ないとないですよね?だからその破壊力の理論値で。出来る?」
「大丈夫です」
結構な難題を平気で対応するというルリ。
「ミナトさん、注水が完了しだい、緊急発進です」
「はーい』
「メグミさん、戦闘行動に入るので皆さんに告知」
「どうするんだ、ユリカ」
「ジュンくん、作戦中は艦長って言ってよ」
「わかったよ、艦長」
「ドッグを破壊する事になりますがナデシコの主砲グラビティ・ブラストを持って通路を確保、出航します」
「ですが、そんな事へたすれば逆に完全に塞がってしまうかもしれません」
「ですから、グラビティ・ブラストの出力を抑え、被害を最小限に抑えます」
頭上からプロスペクターと艦長の会話が聞こえてきました。
〔できるの?〕
私はIFSをとおしてオモイカネにコンタクトした。返事は直ぐに返ってくる。
〔大丈夫だよ。僕達の力をあわせればね〕
〔その通り、グラビティ・ブラストの軌道さえも変えてみせよう〕
〔情報不足〕
〔現在のデータによる推測では0.0001%未満〕
〔該当データなし〕
それ以外の会話も入ってきた。何をしているんだろう?
今回はルリが運用を全て引き受ける事になっているから私はする必要がなかった。最もルリもアルファ達のサポートがあるからそれほど負担はない。極端な話、この艦は人間が乗っていなくても動くのだ。
*
「くそっ!逃げても逃げてもきりがない」
俺は悪態をついた。逃げるつもりでこのロボットに乗ったと言うのに、何時の間にやら戦場にでて木星蜥蜴の奴等に追い掛け回されていた。このロボットにはろくな武器もなかったので反撃もままならない。おまけにユリカが戦艦の艦長だとか作戦の為に囮になれだとか、ユリカの王子様とか、分けわからなくなってきた。結局、なし崩し的に作戦の囮をやる事になってしまった。
「くそっ、このやろっ!」
こいつらが現れてからはとことんついてない。いや、それまでもついてるとは言い難いが。
「何か武器はねえのかよ」
イミディエイト・ナイフっていうのがあるけどナイフって言うぐらいだから、当然使用するとなると敵に接敵しないといけない。冗談じゃない。素人が格闘戦なんてできるわけない。ワイヤード・フィストって言うのがあるけどどんな武器かわからない。フィストって言うぐらいだから拳。・・これも格闘戦じゃん。だめだ、反撃する手段が無い。やっぱり逃げよう。
『アキト、ファイト!!』
『さっすが、アキト!私の王子様』
『やったー!アキト!!』
それにしても事ある毎にユリカの奴の通信が入った。鬱陶しい。けど、懐かしくもある。認めたくないけど励ましにもなっている。
俺も何とか逃げつづける事が出来ている。結構、俺ってやるじゃん。それにしてもこのロボット凄いよな。マジで人の動きができるもんな。
それに何回か被弾したと思ったけど、何かバリアみたいなのでロボット事態にダメージを追う事はなかった。最もミサイルみたいなのはそのバリアも余り防げないみたいで、ごそっと弱くなる。しばらくすれば回復するけど、連続で喰らえばダメってことだった。
完璧に避ける事は出来ないからこのバリアはありがたい。これなかったら今ごろ俺、あの世行きだよな。衝動的にロボットで逃げ様なんて考えるんじゃなかった。
『警告!! 敵、増援多数!!』
『『ええ〜〜っ!!』』
『『うそぉ〜〜!』』
必死にこっちは逃げ回っているのに更に新手が来るなんて言ってきやがった。
「マジかよ、これ以上増えたら持たない!!」
これ以上増えたら、もたん。絶対もたん。心なしかこいつらの数が増えてきているような気がする。
必死に俺は左右前後にロボットを動かして居る間もユリカ達は増援できないか話しているようだが、内容がアレなんでどうも期待できそうに無かった。
『あぁーーっ!!アキトが、アキトが死んじゃうーーっ!!』
『敵増援により、シュミレート結果、現作戦はエステバリス天河アキト機及び本艦は破壊、全滅となります』
悪い事だけは操縦に集中して居ても耳に入ってしまった。何か俺だけじゃなく向こうもやばすぎる状況らしい。こちらには援軍も無いに奴らは増える。
プチッ
・・ははは。何だ。増えるってんなら減らせばいいんだ。簡単じゃないか。武器はワイヤード・フィストにイミディエイト・ナイフか。
・・まずはワイヤード・フィストで言ってみようか。
俺は奴らの一機をターゲットロックオンした。まだ距離があるけどシステムはOKとでている。とりあえず使用した。
その途端ロボットの右腕の肘から前の部分がロックオンしたターゲットに射出された。それは見事にターゲットを破壊する。
「ロ、ロケットパンチ!?」
ターゲットを破壊した腕はロボットの肘からワイヤーのようなもので繋がっていてそれを巻き上げてか元の位置に戻ってきた。有線式のロケットパンチだよ。アニメの中でしかない武器だと思っていたけど現実にあるんだな。凄い、このロボット作った人尊敬しちゃいそう。
「これだったら、確かに山田だったかガイだったかがゲキガンガーだとか言っていたのが頷けてしまう」
ワイヤード・フィスト使った光景が衝撃的で何か正気に返ったというか・・
『アキト!何とか援軍としてエステバリス一機そっちに向かうから。がんばって!私たちももう直ぐ行くから!』
「わかった」
何か、反撃の手段も見つかったし援軍も来るらしい。自棄にならずにもう少しがんばってみよう。
*
遥か彼方にアキトさんの乗るエステバリスがいる事を確認した。今の僕はこのエステバリスとシンクロしている。だから、今はこのエステバリスが僕の体といっていいのかもしれない。だからか認識や得られる情報が格段に増えていた。最も皮膚感覚は無いから風を感じたりはしないけどね。
それにこれぐらいの情報なら、EVAとシンクロしていた時も感じたものだ。問題ない。
「うわっ、ちょ、ちょっとぉ〜っ!?」
動かすのはEVAに乗っていた時と同じだからいい。この辺には敵しか居ない。これもいい。
「でも、何でこんなに多いんだよっ!!」
アキトさん、良くこんな奴等の集中砲火を潜り抜ける事ができたよな。しかも、武器使わずに。
「しかし、このエステバリスって性能凄い。ラピッド・ライフルを撃つだけで無人兵器を破壊していくんだもんな」
まるでシューティングゲームの雑魚キャラのように弾丸を叩き込めば面白いほど破壊していく。それにすばやい機動力が敵の攻撃をかわす。こんなに簡単に倒せちゃうと宇宙連合軍がこんな兵器に手こずっているなんて信じられなくなる。
「現行兵器と性能が隔絶しているよな」
前にイロウルが言っていた異文明技術ってやつかな。そういうのをすんなりと受け入れることが出来るのはひとえに使徒大戦のお陰だろう。何でもありだったし。詳細が不明な使徒等より技術とか解析出来ているし余程わかりやすい。
それに比べれば無人兵器なんてかわいいもの。使徒は存在そのものが理不尽だったからね。灼熱のマグマの中、自由に動けると異空間作れるとか、N2兵器の直撃を皮膚だけで耐えるとか、分身するとか、もう理屈なんてない。
と言ってもこう数が多くちゃ、何れやられてしまう。
『くそっ!このっ!・・えっ!?もうすぐバッテリー切れ!?何で!?』
でも、僕なんかよりももっと苦境に立たされている人がいた。
『そりゃ多分、そんだけ激しい動きをしてればバッテリーも消耗が早いだろうな。重力波受信なんて出来ないからやばいぞ』
冷静に解説している人がいるし
『こんな状態で止まったら・・・うわぁ〜〜たすけてくれ〜〜っ!!』
『ああっーー!アキトがピンチ!ミナトさん、急いで』
『もうすぐ海底ゲートを抜けるわよ』
「アキトさん、シンジです。もうすぐそちらに行けます。何とか耐えてください」
『援軍てシンジ君なのかい!?でも耐えろって言ったってバッテリーの問題だぞっ!どないしろと!?』
「根性でお願いします」
ミサトさんなら言いそうな事を言って見る。指揮している時のミサトさんじゃなく普段のミサトさんでだけど。
『できるかーっ!』
EVAもバッテリー駆動だったけど、無くてもやって見せたんだけどな。・・でもあれは人造人間だからか。
『前方に熱源感知』
ん?ラピス?
『動体反応3確認・・待ち伏せです』
ルリちゃん、それって敵だよね・・ナデシコによる救援はダメっぽい・・
『ええーーっ!』
『どわぁ〜っ!』
『大きさから見て無人戦艦の可能性大』
『ルリちゃん、グラビティブラスト用意』
『了解』
『救援はまだかよ。バッテリーがーっ!』
「もうすぐです。がんばってください」
ナデシコの方を気にしても仕方ない。僕には今何も出来ないし、それにあっちにはイロウルがいるから大丈夫だよね。僕が今できることをする事にした。随分前向きになったような気がする。状況自体は流された様な気もするけど。
前方約300メートルの所にアキトさんが敵に囲まれていた。アキトさんが乗るエステバリスの動きが心なしか鈍くなってきている様に見える。僕は加速する。木星蜥蜴の迎撃は自分の進路を塞ぐものだけを撃破し、進路を確保する。
200メートル・・・
よし、順調だ。このまま行けば間に合う。
150メートル・・・
くそ、こいつ等、手段を変えて体当たりをしようとしてくる。流石にそれは不味い。大きく機動して弾丸を叩き込む。
100メートル・・・
さっきので手こずっちゃった。まだ、間に合うよね・・
『わーーっ!!バッテリーが切れたっ!』
でも、現実は冷たかった。
「うそっ!?もう少しなのに」
アキトさんのエステバリスが動きを止めた。
『ア、アキト!?』
『艦長、しっかりしてください。こっちも危ないんですよ!?』
『うわ〜〜っ!』
ダメなのっ!?もうイヤだ、イヤなんだ!自分の力が足りなかったせいで傷ついたりするのはっ!!
僕の脳裏に僕が戦った使徒大戦での出来事がよぎった。使徒に乗っ取られたEVA参号機に乗っていたトウジが片足が潰れた状態で救出する場面。使徒に融合されて最後の手段を取る綾波に手を伸ばしたのに届かず、自爆する零号機・・そして、白いEVAみたいなものに食い散らかされたアスカの乗る弐号機・・
何より停止し、前のめりになろうとしているアキトさんのエステバリスへ突撃する無人兵器達が目に入る。
瞬間、絶叫した。目の前が真っ白になった。
*
『もうすぐです。がんばってください』
シンジ君の声が、シンジ君の乗るロボットの位置を示すマーカーが、この危機的状況の中の俺、唯一の希望だった。ロボットに乗って逃げようなんて考えるんじゃなかった。だからって素直に自分の足で逃げ出した方がマシだったかというと今の基地の状態を見ればそうでもない。この状況じゃ、戦闘に巻き込まれて死んでいるような気がする。じゃ、そのまま戦艦に乗っていれば良かったのかと言うとどうなんだろう?
何か俺の命、風前の灯火って感じなのにイヤに冷静だよな。何だかんだ言ってもシンジ君の方へ移動しつつ、木星蜥蜴の奴等に応戦しているし。
俺の人生、いままで散々だったけどこいつ等が現れてから加速度的に不幸になったような気がする。アイちゃん・・護ってやりたかった少女、なのに出来なくて、何故か自分だけがあの絶体絶命の場所から逃げ出せていた時、何か大事なものを無くした気がした。自分の無力さが木星蜥蜴、こいつ等に恐怖を感じるようになってしまった。
それなのに何故かこのロボットに乗って木星蜥蜴を目の前にした時、恐怖を感じなかった。こいつ等を蹴散らす事で無くしたものを取り戻したように感じた。でも、それは勘違いだ。相変わらず俺は無力だ。やっつけても、やっつけても、こいつ等は全然いなくならない。
ピピッ!!ピピッ!!
[バッテリー残量が0になりました。システム5秒後に停止します]
現実は残酷だ。
「わーーっ!!バッテリーが切れたっ!」
俺はパニックした。どう考えたって助かりっこなかった。シンジ君は未だ100メートルぐらいある。その間には無数の木星蜥蜴。どうシンジ君ががんばっても無理だ。何もいなければ十分間に合っているだろうけど。
木星蜥蜴の奴等がこっちに突っ込んでこようとした所でモニタが切れ、コクピットが真っ暗になった。
「うわーーーっ!!」
俺は恐怖に顔の前に手を遮って目をつぶった。
直ぐに衝撃が起きた。
「どわっ!?」
ああ・・畜生!!何にもまだやってないのに・・一人前のコックになること、ユリカにあって両親の死について聞くこと。他にもまだまだ、やりたい事はあるのに・・
くそっ! やっぱり、あの時、ユリカの言葉に乗らずに逃げれば良かった。
・
・
・
・
・
・・・にしても、痛みも何も無いな。俺、一瞬で死ねたのか?
この真っ暗のが死後の世界って奴なのか?
「こんなのいやだーっ!!」
ゴツッ!
絶叫と共に手を振り上げた時に手を何かに思い切りぶつけた。
「ぐあ、手がいてーっ!!」
・・イタイ!?・・痛みがある?・・あれ?痛みがあるってことは死んでないってこと?
ポゥ
俺が混乱させていると暗闇の中、グリーンランプが点滅したかと思うとモニタが灯り、
[重力波受信、システム再起動します。バッテリー充電中]
とメッセージが表示されると共に周りが一気に明るくなった。周囲の状況が映し出される。
『よくも、アキトさんをーーっ!!』
それと共にシンジ君の声が飛び込んできた。その声には怒りというよりも怨嗟に近い感じだった。何故かシンジ君のロボットの背中が見えた。どうやってなのか俺と突撃して来ていた木星蜥蜴の間に飛び込んだようだった。
『よくも、よくも、よくもーーっ!』
シンジ君のロボットがまるで生きているかのように上半身を仰け反らせ雄たけびをあげている様だった。シンジ君の絶叫が止んだ瞬間、シンジ君のロボットが、がっくりと肩と頭を落としたようになった。
「シンジ君?」
俺はシンジ君に不審を感じた。それに何故か木星蜥蜴の奴等も動きを止めていた。気のせいか後ずさりしているような行動さえ見せていた。
『畜生、アキトさんを殺しやがって・・』
突然、シンジ君のロボットの頭部が勢いよく跳ね上がった。それと共に、淡い蒼い光が全体に纏った。いや、あのシンジ君・・俺、生きているんだけど・・
『コロシテヤル・・』
そう言ってシンジ君のロボットは一歩踏み出した。それと同時に木星蜥蜴の奴等は一歩分、後退した。何だ?恐れているのか?
『コロシテヤル、コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシ・・・』
そう言ってシンジ君のロボットは手に持っている銃で攻撃を開始した。なのに木星蜥蜴の奴等は無反応のまま、破壊されていく。何なんだ?
俺自身も、シンジ君の怨嗟の声に金縛りにあったようにしばらく動けなかった。
『くく、コロシテヤルゾ。モクセイトカゲドモ・・ズベテヲハイニシテヤル!』
ようやく異様な雰囲気の中、金縛りから解放された俺は、様子が変なシンジ君に連絡を入れた。
「シンジ君!」
『コロシテヤル』
「うわっ!!」
俺は思わず引いた。そこにはかわいいと言ったら傷つくだろうけど、かわいく未だ、少年らしさを残すシンジ君の顔が醜く歪めていたのだ。それに目が尋常じゃない狂気の光を帯びていた。しかも、体全体がボゥと光っているような気がするのは気のせいか!?
ついさっき知合ったばかりだけど、それでも大体の人柄がわかっていただけに恐かった。これはまずいと思った。こうなったのは俺が切欠だったから。
「おいっ!しっかりしろ!シンジ君!」
俺は呼びかけた。
『コロシテヤル。サア、ハジメヨウ』
ダメだ。反応が無い・・
「おいってばっ!俺は生きているぞっ!しっかりしろっ!シンジ君!」
俺は必死の想いで叫んだ。
『フカイナオモイヲサセルヤツラメ。コロシテヤル・・』
シンジ君の声が聞こえるてくると共にシンジ君のロボットは右腕に持っていた銃を手放すと、無造作に腕を左右に振った。その瞬間、半包囲していた木星蜥蜴の無人兵器が何かに切り裂かれたようになり、次々爆発した。俺は何が何だか判らなくなって来た。
「俺はっ!アキトは生きているんだってばっ!!」
それを見て俺は驚きながらも叫んだ。
『えっ?アキトさん?』
「うわっ!」
『ええーーっ!?アキトさん、生きてるの!?何で?』
「いや、何でって・・何でだろ?」
俺は毒気を抜かれたどっと疲れた。
『僕は間に合わないと思ったのに・・』
「俺はやられると思ったんだけど、気付いたらシンジ君が目の前にいたぞ」
俺は周囲に敵がいないか確認した。暴走していたシンジ君がやっつけたのか少なくとも直ぐに教われるような距離には奴等はいなかった。
『そうなんですか?覚えてない・・この無人兵器どうしたんですか?』
覚えてないのか?自分がやったのに・・シンジ君は怒らせないようにしよう。おとなしい奴ほど怒らせたら恐いという典型だ。
『そういえば、アキトさんバッテリーが切れたって言っていたのに大丈夫なんですか?』
「ああ、さっき何でか充電状態になって・・あれ?充電はしなくなっている・・」
『動けるんですか?』
「ああ、それは大丈夫。満タンとはいえないけどかなりある」
どうなってるんだ?
『とにかく今は時間が惜しいです。直ぐに合流ポイントに向かいましょう』
「え!?でも、奴等を引き付けていないぞ?」
『アキトさんが逃げ回っているうちに状況が変わったんです』
「どういうことだ?」
『チューリップが落ちてくるんだそうです・・ここに、もうすぐ・・』
「なっ!?なんだってっ!?」
チュ、チューリップだと!?
『行きましょう。アキトさん』
「あ・・・ああ」
そんなチューリップが落ちてくる!?ここが俺の故郷、ユートピアコロニーと同じに!?
『アキトさん、早く。また無人兵器がこちらに目指してきてます』
「シンジ君・・」
『僕達にはどうしようもできませんよ。このエステバリスではどうしようもできません』
「そうだよな」
『そうです。残念ですけど』
「どうなるんだ?ここは」
『さあ、壊滅するのは確実でしょう。悪ければここだけでなく周辺地域もですが』
多分それだけじゃすまないんだろうな・・
『・・・でも、僕達は無理でもナデシコなら何とかできる可能性があります。あくまでも可能性ですけど』
確かに降って来る相手、しかもチューリップを迎撃、撃破するのがどれだけ難しいか、嫌な程わかる。それでもまだ希望はあるのだという。俺達はそれから無言で合流ポイントを目指した。
*
今私達は木星蜥蜴の戦艦3隻に10時方向、12時方向、2時方向の3方向から囲まれている。グラビティ・ブラストを1度発射させただけでは全滅できない布陣だ。とても厄介。
「はうっ、アキト!」
「ユリカっ!しっかり、あっちはシンジって子に任せるしかないんだ」
ズガーーーーッンンン!!
「わぁっ!」「きゃっ!!」「あうっ!!」「きゃぁーー!」「うぉっ!」「くっ!」
突如、激震がナデシコを襲った。席に座っていなかった副長、プロスペクター、ゴート、それに提督が態勢を崩し、転んだ。艦長はしっかりしたシートではないものの、座っていたので大丈夫だった。
「何事だ!」
「私じゃないわよ!?」
ミナトが操縦ミスで艦をぶつけた訳ではないとアピールした。
「敵、三艦によるグラビティ・ブラストによる一斉攻撃。こちらの被害はディストーション・フィールドによりゼロ。ただし、ディストーション・フィールドの出力が下がっています。今受ければこちらは大破します」
ルリは淡々と説明した。
「・・敵艦、グラビティ・ブラスト発射により、敵のディストーション・フィールドが低下・・」
私は敵艦の観測結果を告げる。恐らくディストーション・フィールドに回していたエネルギーをグラビティ・ブラストのチャージに回しているのだろう。
「ルリちゃん、こちらもディストーション・フィールド回復じゃなく、グラビティ・ブラストのチャージに回して」
「了解。14秒後にフルチャージ」
「・・敵23秒後にフルチャージと予測」
MAGIが導き出した予測結果を私は言った。
「ルリちゃん、発射準備。左端の敵艦に向けて、フルチャージと共に敵艦に向けてグラビティ・ブラスト発射!」
「了解」
「ミナトさんはグラビティ・ブラスト発射と同時に残り2隻を正面にするように移動」
「ラピスちゃん、発射後に前面のディストーション・フィールドを集中強化、できる?」
「できる」
「じゃ、やって」
「グラビティ・ブラスト発射」
黒い奔流が吐き出される。
「ミナトさん!」
「わかってる!!」
「全員、対ショック!!」
私はディストーション・フィールドを前方に集中した。
ズガーーッンンン!!
再び振動に艦が震えた。
「メグミさん、被害確認。ルリちゃんはグラビティ・ブラストへのチャージを最優先。ラピスちゃん、敵艦は?」
「主だった被害はありません」
「了解」
「10時方向にいた戦艦は完全破壊。残り2隻はグラビティ・ブラストの準備中、完了まで45秒と予測」
私は艦長が矢継ぎ早に命令を下すのを見て、最初のあの態度による不安は払拭されていた。皆もそうみたいだった。
「小型の無人兵器が無いだけましだな」
「ええ、エステバリスが無ければ小型の無人兵器には殆ど丸裸同然ですから」
「その辺の欠点の洗い出しが、この実験戦艦ナデシコの使命でもあります」
副長たち男連中がこの状況について話し合っていた。エステバリスが無いなどで今はやる事が無いこともあってだろう。
「ルリちゃん、こちらのグラビティブラストは?28秒後に発射できます」
「じゃ、準備出来次第、左側の戦艦に撃ってください。撃って後直ぐにディストーション・フィールドにエネルギーを回して」
「了解」
「その後、敵のグラビティ・ブラストを防いだら、再びこちらのグラビティ・ブラストをチャージ、完了しだい残り敵戦艦を破壊します」
「何とかなりそうだね、ユリカ」
「まだ、終わってないから油断は禁物だよ、ジュン君」
「メグミさん、アキト達はどうなっているの?」
「はい! 一時、アキト機、シンジ機共に音信普通になっていましたが先程、健在であるのを確認しました」
「良かった。さすがアキト」
この場合、シンジが何とかしたんだと思う。なのにどうしてアキトなの? 副長はアキトの名を聞く都度、頬を引きつらせている。
「グラビティ・ブラスト準備完了」
「撃てっ!」
艦長の声と共に再び敵戦艦の一つに黒い奔流が突き刺さる。敵のディストーション・フィールドを易々と突き破り戦艦を破壊した。
「指示通り、ディストーション・フィールドを強化!」
「敵艦、エネルギー増大。敵グラビティ・ブラストの出力が増大すると予測」
「どういうこと?」
「恐らく機関暴走による自沈覚悟のオーバーロードによる一撃が来ると予測。その威力は初回時攻撃を上回ると予測」
「ミナトさん、敵艦を真正面にしつつ、急速後退上昇!」
艦長は顔色を変えて指示を出す。今のディストーション・フィールドの状態で初回時攻撃を上回るグラビティブラストを完全に防ぐことなど出来ない。最も万全でも難しいかもしれない。
「了解!」
ミナトは舵をぎゅっと握りしめてた。
「敵グラビティ・ブラスト来ます」
切迫した状況でもルリは淡々と報告した。
「全員、対ショ、きゃっ!」「くぅ」「いやーーーっ!」「ぬぅ」「くぉ!」「たはっ」「おぁ!」
言い終わらぬうちに敵の攻撃が来た。最初の衝撃よりも強かった。今回は来るのがわかっているので皆、しっかりと掴まって体を固定していた。
暫くすると揺れは収まった。
「メグミさん、被害確認!グラビティ・ブラストは?」
「無事です。被害はディストーション・フィールド発生器の一機が使用不能。ミサイル発射管が2つ使用不能」
「敵艦は機関暴走により失い機能停止」
「ルリちゃんはグラビティ・ブラストをチャージ」
「ユリカ、もう敵はいないよ?」
「忘れているよ?ジュンくん。もうすぐここにチューリップが落ちて来るんだよ?」
「わぁー、そうだった!?」
そういえば、イロウルがそう言っていた。目の前の敵に精一杯で忘れていた。
「ミナトさん、急速浮上させてください。多分もう時間が無い」
「はーい、浮上させます」
「ラピスちゃん、こっちの浮上位置とチューリップの落下情報から迎撃タイミングを計算して。チャンスは一度だけ」
「了解」
私はMAGIに依頼した。チューリップの落下情報は敵、妨害電波により殆ど入ってこないが基地に残っていたセンサーなどで何とか割り出すことが出来た。
「計算結果にあわせてグラビティ・ブラストを発射。発射タイミングは手動じゃ無理なので自動で、できるルリちゃん?」
「できます」
「じゃ、やって」
そんなやり取りをやっている間にナデシコが海上に出た。海岸付近には煤だらけになっているエステバリスが2機いた。二人とも無事らしい。私達の方を向いて手を上げている。
「良かったーアキト、アキトっ、無事?」
『ああ、何とか。シンジ君のお陰で助かった』
『僕はそんなたいした事やっていません』
良かった。シンジは無事だった。
「シンジさん、無事で何よりです」
『ありがとう、ルリちゃん』
「大丈夫、シンジ」
『大丈夫だよ、ラピス』
「無事で何よりだ」
「いやー、中々やりますな。コックをさせておくのはもったいないぐらいです」
プロスペクターが電卓片手に思案顔だ。時折電卓を叩いているのが気になった。
気になっていた二人が無事でブリッジに暖かい雰囲気が漂った。が、それも、一瞬のうちだった。
「もうすぐチューリップがきます」
最後の試練がきたのだ。
「ルリちゃん!」
「準備できてます」
『大丈夫なのか』
「何とかするよ、アキト」
「発射タイミング5・・4・・」
ルリがカウントし始めた。
『頼むぞ』「うまくいって欲しいですな」
「・3・・2・・1・・発射」
黒い奔流が落下してくるチューリップへと向かった。タイミングは合っている。
「命中!」
「「「「やった!!」」」」
誰もが感性を上げたが瞬間、凍りついた。
チューリップに当たるはずの黒い奔流が赤い壁に阻まれ反射し、宇宙のかなたへ向かったのだ。
「「「なっ!?」」」
驚いている間にチューリップが地上に激突した。幸いナデシコは空を飛んでいるので揺れることは無かった。チューリップは土煙を上げて基地中央に突き刺さっていた。
「どうなっているの!?」
「データによると地面激突寸前に急減速、ぶつかったと言うよりは降り立ったと表現するのがいいかもしれません」
ルリが説明していると突然、警報が鳴り響いた。それに続いてブリッジが赤い光で点滅し始める。
「何?何が起こったの!?」
艦長は首をキョロキョロさせた。ブリッジの皆、私も含めて同じく驚いているとメインモニターが切り替わった。
[BLOOD TYPE:BLUE ・・・UNKNOWN ANGEL!!]
シンプルな画面に文字だけが映し出されていた。これは何?
*
「そんなっ! 使徒!? バカなっ!!!」
僕はありえないはずの存在が目の前にいることに驚愕した。
(つづく)
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注)新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。
機動戦艦ナデシコは(c)XEBECの作品です。