恋する哲学(仮)-10

せ ☆ 私がそれを惹きつけて
先輩が私のことを好きなのかどうか。
それは私にもよく分からない。きっと先輩にもそれはよく分かっていないんだと思う。そんな感情の存在がそもそもあやふやだから、好きかどうかなんて分からない。
それでも先輩は私のことを分かってくれている。思ってくれている。考えてくれている。
それだけは分かる。
私のことを想ってくれているか、それは多分そうじゃないだろう。ただ少しずつ、少しずつでも先輩に好かれていければいいなって。先輩に愛されていければいいなって。
それは私にとって細やかで贅沢な願いだった。いや、今でもそう。そうなればいいって願ってる。
先輩にとってどれだけ恋愛が遠くても、私がそれを惹きつけて、そっとそっと先輩に教えていければいいなって。
そうしてゆっくりでいいから、私のことを好きになって、好きだと思ってくれれば。
そうなることは何も急いでなんていなかった。
でも、こうして先輩が遠くに行ってしまった今は、私は……。

す ☆ ここにいるよ
……―――。

ん ☆ そういう意味だから
先輩は遠くにいる。
私はこの少なからずとも叶った想いを手放せずにいる。
逢わずして言葉だけでどれだけ伝わるのか分からない。それだけでどれだけ先輩を感じられるのか分からない。
そっとそばにいて欲しい時がある。支えになって欲しい時がある。その手に触れて温かみを感じたい時がある。ぎゅっと抱き締めてたい、抱き締めて欲しい時がある。
それでも先輩は遠くにいて、右も左も分からないところで頑張っているんだって。私が先輩の、心の支えにならなくちゃって、そんな風に思うから。
私がここにいることはそういう意味だから。先輩がそばにいなくても頑張らないとって思うんだ。
そうして先輩がまたここに戻って来られるように。私の隣も空けたまま。

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