美樹ちゃんと仁志君が公園の北ゲート側から出ていったあと、育人君と昼食をとることにした。
園内に入ったとき南ゲートでもらったパンフレットを参考に、美樹ちゃんに教えられたお店を探している。
美樹ちゃんが言うには北ゲート側の通りに美味しいイタリア料理店があるらしい。
その料理店の名前は、小文字のFを二つ、筆記体で並べて『フォルティッシモ』
音楽好きの店長さんじゃないかと思う。
「この辺りじゃないかな」
パンフレットの地図によるとこの辺りにあるはず。
「もしかしてあれじゃない?」
と、育人君が『ITALIAN』と書かれた看板のある店を指差す。
ここは食券を買ってそれと引き換えでもらうという仕組み。
店の前には長蛇の列ができている。
「たぶん、そうだと思う。でも結構混んでるよね」
「どうする?」
「折角ここまで来たのだから勿論、並ぶでしょ」
私は育人君にそう言って、長蛇の後尾へとつく。
育人君もそのあとにつく。
「そんなにここのって美味しいわけ?」
と、訊かれても困る。
とりあえず内の事情を説明する。
「来たのは初めてだけど……美樹ちゃんがここは美味しいって教えてくれて」
「美樹が?」
「うん。食べるならここがいいって」
「へぇ……」
あんなに長かった列も何時の間にか先頭についていた。
それで、店の人が空いている席へと案内してくれる。
「それではどうぞ」
白い、テラスにでもありそうなイスとテーブル。
テーブルの真ん中にはパラソルがつけられていて日よけになっている。
でも今は一月だからあまり意味はないけども。
そのイスの上に荷物を置き、食券を買いにいく。
券売機の上には、様々な種類のピザやパスタの写真が並んでいる。
なんとなくパスタが食べたいなってそんな気分で、その中からカルボナーラを選んでボタンを押す。
そして人の流れに乗りながらカウンターでその券と引き換えに番号札をもらう。
やはりこう多いとそうせざる追えないのだろう。
交換し終えた私はさっき荷物を置いた席へと戻る。
「何頼んだ?」
なんだか育人君の方から話してくるのは初めてのような。
それも疑問で。
「え、カルボナーラだけど……育人君は?」
「僕はサラミ」
「あっ、ピザのほう?」
「うん」
それからしばらくして番号札に書かれている番号を呼ばれ、カウンターへとピザをとりに行った。
流石に、育人君の方が先に行ったので早かった。
ちょうど育人君が帰ってくるときに呼ばれ、私もとりに行く。
やはり券売機の上の絵とは少し違う。
そしてまた自分の席へと戻り、早速食べ始める。
「で、美樹ちゃんがいうだけのことはあると思う?」
「う〜ん……」
「どう?」
「そりゃ、美味しいとは思うけど……。あまり外食もしないからそれ以上はなんとも……」
なんとも……ってそれではまた続けようにも続けられない。
しょうがないので話題を変えることにする。
「う〜ん……。この後何所か行きたいところある?」
「仁志と美樹が勧めるし、どうせだなら観覧車には乗りたいけど……」
どうやら育人君も推されていたみたい。
やはりピンクの……なんだろうか。
「うん、それは私も。他は?」
「他は……とくにないけど……」
なんだかどうも絶叫系とかそういうのでなくて、静かで居れるところに行きたい。
流石に育人君であろうとも前で叫ぶのは気が引ける。
「なら、観覧車の向かいの植物園に行かない?」
「植物園に?別に構わないけど」
「なら食べた後、植物園に行って観覧車ね」
「う、うん」
なんかまた何時もの展開というのだろうか。
ともかく、食べ終わって返しに行った後、植物園へと行くことになった。
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