先生の家族がソフトクリームを食べ終えてこの公園を出ていった。
そのあと、美樹ちゃんと仁志君に話しかけられ、それから四人で話している。
「それでさ、この遊園地はどう?」
今は木に葉っぱこそついてはいないが木は沢山ある。
公園を取り囲むのは桜の木らしく、春に咲くために蕾をつけている。
先日降った雪がまだ溶けずにその桜の木や、園内にあるツツジの木に残っている。
他にも木蓮や百日紅、金木犀などの木が植わっていると書いてあった。
それに植物園には世界のさまざまな珍しい花を展示する企画がされているらしい。
それなら答えはもちろん。
「いいところだと思うけど……」
「ならよかった」
「それより育人、久し振りに二人だけで話さないか?」
なんて、仁志君が育人君に提案している。
「別に構わないけど?」
「なら、向こうのベンチに行こう。そう言うことだから美樹、あとはよろしく」
「任せといて」
そう言って育人君と仁志君は隣のベンチに行く。
「任せといて……って?」
「え、私そんなこと言った?」
「うん」
「言った覚えはないけどな、空耳じゃない?」
なんて、とぼけている。
「ところでどう?育人とは」
「どうって言われても……」
「いや、だって二人っきりって今日が初めてでしょ?」
こんな質問をするのも、無理はない。
美樹ちゃんは家が隣同士だってことは勿論知っている。
でも、朝新聞を取りに出るときに会ったり一緒に学校に来ている事など知る由もないのだから。
「いやそうでもないけど」
「え、そうなの?まあ家が隣だしね」
「うん、だからとくに話し辛いってこともないけど」
「ならよかった、二人きりにしちゃったから心配してたんだ」
「仁志君と?」
「うん。でもその心配もないみたいだから安心したよ」
「ところでさ、入る前に久しぶりって言ってたけどここに来たことってあるの?」
「一度だけね、仁志と」
「へぇ……」
「そのときは初デートでさ、二人とも緊張してて」
「うん」
「それでここで最後に乗ったのがあの観覧車だったんだ」
この遊園地ではどうやらシンボルみたいだし、美樹ちゃんも勧めることだからどうせなら乗ってみようかな。
「でも惜しくもピンクのには乗り損ねたけどね」
「この間からピンク、ピンクって言ってるけどホントは何があるの?」
「それは乗ってみればわかると思うよ」
「乗らなきゃわからないこと?」
「ん〜そうとはいいきれないけど」
「え、どういうこと?」
「外で待ってる人の様子を見てもわかるかなって」
「外で待ってる人?」
「そう。ま、行ってからのお楽しみってことでさ」
「う〜ん……」
なんだかどうもしっくりこないし、すっきりしない。
それからしばらくして隣のベンチから育人君と仁志君が戻ってきた。
そしてまた四人でいろいろと話した。
「さてと、そろそろ行くか」
そう言って仁志君が立ち上がる。
それと共に美樹ちゃんも。
「じゃあ二人ともまた五時にね」
そう言うと二人は噴水を半周して南ゲート側へと抜けていった。
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