第十一話(S) 遊園地への誘い
仁志君と美樹ちゃんはいつからあんな関係なんだろうな……。 朝、そう思ってからそのことが頭から離れない。 離れないながらも育人君よりも早く学校へと行く。 確かにそんなに早く行く必要はないし、育人君と話したいならもう少し後に家を出ればいい。 でも、あんな調子で一緒に歩いても……と思い、こうして早く出てきている。 行き路を歩いて学校へ着くと仁志君と美樹ちゃんが早くも来ていた。 そして二人で話し合っている。 なんだろうと思って二人に話しかける。 「何してるの?」 「えっ、いやなんでもないよ」 「そう?」 「そうそう、なんでもないって」 二人はそう言うけど、どうも怪しい。 仁志君の机が二人の影になってよく見えない。 それでその机の上を覗きこもうとする。 「あっ」 ささっと美樹ちゃんが私と机の間に素早く移動する。 「やっぱり何かあるんでしょ?」 「内緒っ」 と、言って二人は一歩も譲らない。 これではどうしようもないのでとりあえずかばんを片付ける。 そして椅子へと座ると育人君が教室へ入って来る。 「おはよ〜育人」 「おはよう」 朝のあの時と比べて明るい挨拶だ。 それこそ最初のときとは比べ物にならないくらいに。 「あれ仁志、何かやってるのか?」 「ああ、ちょっとな」 「そうか?まあなんでもいいけどな」 と、育人君はまるで関心がないみたい。 そして育人君もかばんを片付け席に座る。 仁志君と美樹ちゃんは私と仁志君の机の間・育人君と仁志君の机の間に立っている。 私はその仁志君の机の上に何があるのか知りたくて左右へ覗いてみるものの中は見えない。 そうこうしているうちに先生が入ってきた。 美樹ちゃんと仁志君はそれを見て机の上を片付けて席に着く。 それで先生は教卓のところに立ち、会を始める。 そのあと一時限から四時限までが終わり昼休みになる。 「おい育人」 「皐月ちゃん、ちょっと」 お昼の弁当を机を寄せて食べていると仁志君が育人君を、美樹ちゃんが私を同時に呼んだ。 「なんかあった?」 「えっ、何?」 と、二人の声がハモる。 私はぽっと赤くなる。 「あのさぁ、次の次の日曜日、二十二日に遊園地に四人で行こうと思うんだけどどう?」 四人……って私と美樹ちゃん、そして育人君と仁志君ということだろう。 「私は構わないけど……」 「僕も」 「なら決定ね」 と、美樹ちゃんがそのことを決める。 「えっ、でもなんでいきなり遊園地なんかに?」 「別に良いじゃない」 「今わざわざ、しかも遊園地に行くって何かあった?」 「いや別にないけどよ。たまには遊園地に行くのもいいかと思ってさ」 「えっ……みんなで行くなら私も行くけど」 「なら、時間は何時が良いんだ?」 と仁志君が尋ねる。 「僕はいつでも」 「私も……」 「なら朝の八時半に駅でいいか?」 「うん」 「構わないけど」 「じゃあ八時半で」 そうして、二十二日の日曜日の八時半に学校に集合して遊園地へと四人で行く事になった。 |