第十二話(S) 試みT

遊園地
私のスケジュール帳にそう書かれている。
それにしても何故あんな唐突に遊園地に行く事を計画して持ちかけたのだろうか。
その理由はあのあと美樹ちゃんにいくら訊いても答えてくれなかった。
そういえば「遊園地」と聞いたけど、どこの遊園地に行くのかは全く聞いていなかった。
ここから一番近い遊園地……。
一番近い西大久(にしおおひさ)駅から大久(おおひさ)駅、瑞井(みずい)駅を経由。
その次の駅『冨田(とみだ)駅』の近くに遊園地がある。
そう遠い距離でもないが、そこなのだろうか。
今日学校へ行ったときに訊いてみようと思う。
今は、またいつものように新聞を取りに行くため階段を降りる途中。
またいつものような会話が待っている……のだろうか。
一昨日と比べれば昨日の会話は少しマシだった気もする。
玄関のドアを開ける。
そして育人君の家のほうを見るとちょうど育人君が玄関から出てくるところだった。
「育人君おはよ〜」
と、早速挨拶をする。
「おはよう」
「今日もよろしくね」
「うん」
昨日よりはマシ……いや、それよりも普通に話しているのではないだろうかという感じだった。
たしかに返事は一言だけど……。
昨日は語尾を引きづったような感じだったけどそうでもないし……。
私もできるなら、朝のこの挨拶だけでなくてどうせなら学校へ行く道も一緒なんだし一緒に行きたいとも思う。
こんな感じならたしかに私が会話を続けないと続かないだろうけど……。
一応会話は成立するだろうと思う。
ならいっそのことそれを持ちかけてみてもいいのではないか。
「あのさぁ……」
いつもなら挨拶で終わるところを続けたせいか、育人君がきょとんとしている。
「よかったらさ……今日一緒に学校に行かない?」
「えっ?」
またもや唐突な誘いに育人君がまだきょとんとしている。
驚いていると言うか……信じていないという感じ。
「だからさ、一緒に学校へ行かない?」
もう一度、さっきの誘いを繰り返す。
断られたら……なんて恐れが今になってやってくる。
恐れなのか相手が育人君なのかドキドキしている。
「別に構わないけど……」
ほっと一安心する。
「なら決まり。今から三十分後ね」
「えっ、うん……」
私はいつも新聞を取りに行ったあと、二十分後に家を出る。
育人君の方が私よりも来るのが遅いので十分ほど遅くする。
唐突な質問のためか、まるで昨日のような会話。
元に戻ったと言うか……。
ポストの新聞紙を取り、家に戻ろうとする。
視線を感じるなと思うと育人君がこっちを見ていた。
約束の三十分後をよろしくの意で軽くウインクしてみせる。
そして家に戻り、いつもの通り準備を済ます。
あと十分の暇な時間。
あのソファーに座ってテレビを見ていた。
ちょうど星座占いのとき、魚座は一位だった。

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