第三十七話() Present

そして、二月二十四日の金曜日。
無事にプレゼントも決まり、準備ばんたん。
あとはただ渡すときを待てばいいだけ。
そしてまた、何時ものように一緒に学校へ行く。
もちろんその第一声は「おめでとう」の一言に尽きる。
昼休み、美樹が帰りにうちへ寄ってなんて言っている。
それは勿論、先日、僕と一緒に買いに行ったものを渡すためだろう。
そして、授業も終わり放課後となった頃。
「部活終わったら家に来てくれない?」
「でも何時終わるかわからないよ?」
「それは大丈夫。お母さんに託(ことづけ)してあるから。もし先に終わったら入って待ってて」
「じゃあそうするね」
と、いうわけで約束も、とりつけた。
あとは部活が終わりさえすればいいだけ。
「あれ、待っててくれたわけ?」
「出てくるときに終わったのが見えたから」
「そう。じゃ帰ろう」
「うん」
帰ろう……というか、まあ帰るのは僕だけなんだけど。
「でさ、何買ってくれたの?」
「それは開けてからのお楽しみ」
「なんか美樹ちゃんも同じこと言いそう」
「たしかに……」
「そういや、その誕生日プレゼントって美樹ちゃんと一緒に買いに行ったんでしょ?」
「えっ、なんで知ってるわけ?」
「それは仁志君が教えてくれて」
「そうか、あの時に……」
「ごめん。実は私もあの日、仁志君と一緒で」
「えっ、そう……」
「まあ、お相子ってことで」
「でも仁志と何を?」
「えっ、まあその辺をぶらぶらと」
「じゃあ仁志は何しに行ったんだか……」
「暇つぶしなんじゃないかなぁ……。まあ私も暇だったからいいんだけど」
「暇つぶしって……なんだかなぁ」
「どうせだから入る?外寒いし」
「うん」
そして玄関の扉を開ける。
「こんにちは〜」
「あら、二人一緒?」
「えっ、はい」
「たまたま一緒に終わったから」
「そう……。まあ、ゆっくりしていって」
なんだかお母さんは残念そうだ。
「じゃあ上にあがって」
「うん」
机の引出しの上から三番目。
そこに青と白のストライプの包装紙に包まれた長細い箱が入っている。
プレゼント用ということで、その箱の上にはピンク色のリボンがついている。
それをとりだし、引出しを閉め、また洋風布団の上に戻り、腰を下ろす。
「はい、プレゼント」
「ありがと。開けていい?」
「勿論。そのためにあるんだから」
皐月さんは早速包装をとり、それを折りたたんで布団の上にのせる。
そして出てきたライトグリーンの箱を開ける。
「……ネックレス?」
「うん」
それは銀色の鎖に透明なトランプのダイヤ型をした飾りがついている。
「美樹と行って、選んできたんだけど」
「へぇ〜」
皐月さんはそう言いながら箱から出てきたネックレスを首へとかける。
「どう?」
「いいんじゃない?」
「『いいんじゃない』ってなんか曖昧な言い方……」
「そう?じゃあはっきり言ったほうが良いわけ?」
「えっ、それもちょっと……」
「じゃあどういう風に?」
「お世辞にでも似合うとか、そう言うのがいいんだって」
「じゃあ……似合うよ」
「今更遅いって……」
なんか難しいなぁ……。

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