第三十四話(I) 三人で
翌日の日曜日。 二時半を過ぎたところで家を出て、駅へと向かう。 数分ほど歩いたところで駅へつく。 あの黄色い時計の下には既に美樹と仁志が来ていて、二人で話している。 「よぉ、育人」 「よっ」 「さあ、早く行こう」 「うん」 そんな軽いやり取りを交わしたあと、切符を買い、三人で電車に乗る。 そして瑞井につき、皐月さんの家へ向かい、着く。 「ここ?」 「うん」 ピンポーン……。 「は〜い」 あれ、今の声はもしや……。 「あら、美樹ちゃん。久しぶり。元気だった?」 やっぱり、皐月さんのお母さんだったか。 「もちろん。おばさんは?」 「私?もちろん、元気だったわよ」 なんだか、美樹とはかなり仲がいいみたい。 まるで幼馴染みの友達のような感じだ。 「あら、育人さんも?ゆっくりしていって下さいね」 僕には敬語だし。 「で、そちらは?」 「私の彼氏の……」 「大野仁志です」 「美樹ちゃんの彼氏?よろしく、仁志さん」 「こちらこそ」 なんだかこの前に来たときに比べて僕の肩身は結構狭い気がする。 「さあ皐月も待ってることだし、あがって」 「では、お言葉に甘えて」 なんだか仁志が必要以上にかしこまっているのだけども。 僕と仁志と美樹はおばさんに居間に案内される。 そしておばさんは台所へと行く。 しばらくして、皐月さんが扉の隙間から顔を覗かせる。 「よっ」 「あ、ちょっと待ってて。今、ケーキ持ってくるから」 そう言って皐月さんは扉を開け放して台所へといく。 この部屋、居間は玄関からその正面の台所へと抜ける廊下の右側の部屋。 玄関と居間の間には二階へと続く階段が廊下と平行にある。 畳敷きの六畳の部屋で、真ん中に敷かれたカーペットの上にこたつがあり、僕達はその中に入っている。 「お待ちどう」 そう言って皐月さんは持ってきたケーキを炬燵の上におき、こたつの四面中の開いていたところに座る。 ちなみに、その向かいは美樹で右側は僕、左側は仁志。 「とりあえず、ケーキ食べる?」 「あぁ」 「うん」 皐月さんは先ほど持ってきたケーキを六等分に分け、それぞれを皿に乗せて横にフォークを添える。 そしてそれを僕達の前に置く。 うち二つは家族の分らしく、台所へと持っていく。 「どう?」 と、皐月さんはケーキの味を問う。 「美味しいと思うよ」 「美味いね」 「う〜ん、作り方教えてくれない?」 「えっ、作り方?」 「そうそう」 「じゃああとでね」 「うん」 こうして美樹はケーキの作り方を教えてもらうことになった。 「そういやあれから結構部屋片付いたんだけど……見る?」 「え、うん」 で、僕は皐月さんの部屋へ行くことになった。 「あのさ、皐月ちゃん」 と、仁志が皐月さんに話しかける。 「何?」 ……続きは声が小さくて聞こえない。 「何話してるか聞こえる?」 「いや、全然……」 美樹も気になるらしい。 「そう……。そういやさ、皐月ちゃんの誕生日に何買うか決まった?」 「いや、まだだけど」 というか、なんで美樹がそれを知ってるわけ? 「ならさ、来週の日曜にデパート行かない?」 「来週?いいよ」 こうして次の日曜日に美樹と買い物に行くことになった。 |