第三十二話(I) 二度目の約束
仁志と美樹がああなってから三週間目の月曜日。 昨日は皐月さんと三時から六時くらいまでずっと話しこんでいた。 何を話していたかというと……まあ他愛無い話で。 その辺の近事情について何やら話して笑ったり、楽しんだりそんな感じ。 で、仁志と美樹の仲に関してはとりあえずこれはどうだろうとその案があがった。 それは、いっそのこと二人とも一緒に呼んでしまえという妥協(?)案。 ちなみに、僕も同行。 いくら美樹がいるとはいえ仁志に皐月さんの家に男一人で行かれるのは多少抵抗があって。 よって皐月さんの家に行く、その二回目を約束したということになる。 一方、うちには……というとそういう約束はまだしてない。 これでは僕だけが得してるようなイメージがある。 けれども、皐月さん曰く『行きたいときに電話でもかける』とのことなのでその辺は話が上手く整っている。 まあそうして話しているうちに時間は過ぎてしまっていつの間にやら六時を回っていた。 冬のこの時分だから日の入りも早くて外は既に真っ暗。 それに親には何も告げていないものだから……。 急いで帰らねばと、電車を待つその時間がじれったくて仕方がなかった。 そして家に帰るとこれまたこっ酷く言われる。 まあ、それほどその時間は楽しかったわけだけども。 その言われついでに流れに沿って付き合っていることはバラしてしまった。 そのおかげか凄い剣幕も収まって『今度は電話くらい』で終わったけども。 まあこうして双方両親にはバレた(バラした?)わけで。 まあすっきりしたとでも言うべきか……。 で、その翌日である今日、月曜日も皐月さんは朝早くからチャイムを押す。 するとお母さんが玄関へ駆けていって笑顔で受け応え(だったらしい)。 で、僕はといえばそのお母さんに急かされている。 お母さんはすっかり皐月さんの肩持ち。 うちでの僕の立場はまるでない。 ところで今は学校で、その昼休み。 美樹と仁志にあの妥協(?)案を持ちかけてみようと試みる。 「なぁ、仁志」 「ねぇ、美樹ちゃん」 という具合で二人が振り向く。 「何?」 「何だ?」 と返される。 「次の日曜日、うちに来ない?」 「勿論、二人と……僕で」 と、皐月さんの言葉に付け加える。 それを聞いて二人は顔を見合わせる。 ……あれ、仁志は喧嘩してるって思ってたんじゃなかったっけ? 「じゃあ是非行かせてもらうね」 「ああ、ならそうさせてもらうよ」 それを聞いて今度は僕と皐月さんが顔を見合わせる。 う〜ん……何だか僕と皐月さんが知らないところで動いてない? 「う、うん。じゃあ日曜日の三時に映画館前集合で」 「OK」 「オーケー」 ちなみに片仮名のほうは仁志の声。 美樹は英語が得意だけど、仁志はそれほど得意といったわけでもない。 まあ元々二人とも学年では上位なんだけど。 仁志はどちらかというと理系で、一方の美樹は文系。 あくまでどちらかというと……で、あってそうでないほうが苦手というわけではない。 しかしまた仲睦まじきというほどでもないけども先週よりはましになっているのは何故だろうか。 「それにしても二人ともいつ仲直りを?」 「え、仲直り?わたしたちがいつ喧嘩なんて?」 美樹はまたとぼけてる。 でも"たち"ってことはやっぱり仲直りはしてるってことか。 「そうそう、喧嘩なんて何時したんだ?」 って、仁志までとぼけてるんだけど……。 「えっ、先々週の火曜日に皐月さんが引っ越すって言ったときに……」 「ああ、あれ?あれは見せかけ」 たしかに美樹は最初から喧嘩してるつもりじゃないって皐月さんから聞いたけど。 「そうそう、見せかけ」 そこの便乗してる仁志は次の日も真剣に悩んでたはず……。 う〜ん、二人で口裏合わせでもしたのだろうか……。 |