第三十話() チャイム

そして月曜日。
またいつものように新聞を取りに外へと出る。
勿論そこには誰もいない。
ただ雪が、まるで木枯らしの吹く秋の冷たい風に揺られて落ちた落ち葉のように散り行くのみ。
時が静かに、だが確実に過ぎ行く。
その光景と一人でいることがなんだかとても寂しい。
理由ははっきりしている。
ただ自分がその事実を真に受け止めきれていないだけ。
家に入ってテレビを見て幾らか時間が経って、学校に行けば逢える。
なのに……。
昨日もそうだったけれどもこの状況になれるのにはしばらく掛かりそうだ。
まだ付き合い始めてそう時も経っていないのに今すぐ逢いたい見たい。
ともかく家に入って学校に行くときが来るのを待つか……。
と、朝はそう思っていたのだけども。
ピンポーン……。
家のチャイムが来客の知らせを告げる。
「は〜い」
そう言ってお母さんが玄関へと駆けていく。
こんな朝早くから誰が来たのだろうと、テレビを見ながら思う。
「育人〜、お客さんよ〜」
って、僕に?
一体、誰だろう。
僕はもうパジャマ姿から着替えて、学校へ行く準備ができた状態。
その制服姿で玄関へと出ると、そこにいたのはなんと皐月さんだった。
「おはよ〜」
「お、おはよう……」
って、駅は学校の向こう側だから家へ来ると遠くなるはずなのに……。
「さ、早く行こ」
「う、うん……」
何でここに皐月さんが??
とりあえず台所に鞄を取りに戻る。
そして、玄関を出て、またいつものように歩き出して。
「それにしても、なんでここに?」
と、気になったことを早速ぶつけてみる。
「それは勿論、一緒に居たいからに決まってるじゃない」
その気持ちは物凄く嬉しいんだけど……。
「でも駅からじゃ学校から反対の方向だし……」
「だからわざわざ駅から学校を越えてここまで来たんだって」
「でもそれだとなんだか余計な分、歩かせているような気がして……」
僕のためだから、僕が歩かせているってことでしょ?
「いいのいいの、私が来たくてここまで来たんだから」
来たくて……か。
まあ、僕も逢いたかったんだけど。
「でも……ねぇ?」
「何?私が来たら邪魔なの?」
と、急に睨まれる。
そういう意味じゃなくて……。
「えっ、別にそんなことないけど……」
「なら、こうして来ても構わないでしょ?」
そしてまた笑顔に戻る。
「えっ、う、うん……」
「じゃあ明日も……ね?」
「え、うん……」
なんだか笑みは笑みでもそれが不敵に見えるのは気のせいだろうか。
う〜ん、まあそりゃ確かにこうしてまで来てくれるのは嬉しいんだけど。
でも、何だか歩かせているって感じがして申し訳ないんだけども。
「でさ、どう?」
「え、どうって何が?」
「プレゼント。何にするつもり?」
プレゼントって……ああ、誕生日プレゼントか。
「それは……ひみつ」
これでこの間のお返し完了。
でも単にまだ決まってないだけだったりして。
しかしさっきの睨みは堪えた……。

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