第十二話(I) もう一つの誘い

しかし、力になる……なんて言ってたけど、その翌日に遊園地に誘うというのは大胆だと思う。
しかも、たった一日でその話を仁志にして、遊園地に行こうってことにするとは。
我ながらその素早さに感心というのか……。
でも折角美樹が皐月さんも誘ってくれたのだからそれに感謝。
そしてこの機会を無駄にすると美樹に申し訳ない。
あれから仁志は美樹からそう言う話を聞いたからそういうことにしたのだとかそういうことは一言も言わなかった。
でもああして二人で企てて僕と皐月さんを誘うのだから聞いてはいるはずだろう。
でもその言わなかった理由は予想さえもつかなかった。
とくにそれに深い意味もないのだろうとは思う。
でもどうも気になって仕方がなかった。
ところで今は、また毎日のように新聞を取りに行く途中。
階段を一歩一歩に何か深い意味があるかのような感じで降りていく。
何か今までと違うものに近づいていくかのように。
そして玄関につきドアをゆっくりと開ける。
「育人君おはよ〜」
「おはよう」
「今日もよろしくね」
「うん」
なんか、いつもになく普通に喋っているような気がする。
でも会話の内容はいつもと何も変わらない。
昨日の遊園地のことでも持ちかけるのかなと思っていたが……。
「あのさぁ、よかったら……今日一緒に学校に行かない?」
「えっ?」
びくっと心が反応する。
思いにもよらないというか、あまりにも突飛な誘いに思わず聞き返す。
「だからさ、一緒に学校へ行かない?」
一緒に学校へ……ってたしかに行けない事もないけど。
向こうからあえて誘ってくれるならそれは喜んで。
「別に構わないけど……」
「なら決まり。今から三十分後ね」
「えっ、うん……」
それにしても……何故いきなりこんな誘いを?
とりあえず平常心でない自分に落ちつけ……なんて。
ポストに入った新聞紙を抜き取り向きをかける。
そして家へと戻る。
三十分か……。
いつもはこのときから出るまで五十分くらい。
その間着替えて行く用意をしてテレビを見て……。
まあ、テレビは時間つぶしなのだが。
家に入って台所でいつも通り新聞を読む。
そしていつも通りの時間に上へあがって制服に着替える。
そういや戻る途中に皐月さんのほうを見たとき、僕に気付いてウインクしてたな……。

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