第十話(I) 曇り空
| 昨日の朝は、澄み切ったとはいえないが晴れ間の見える薄曇の日だった。 今日はそんな昨日とは違い、一面どす黒い雲に覆われている。 今にも雨が降り出しそうな天気。 一昨日も昨日も自分は何一つ変わっていないようなそんな気がする。 別にその場に皐月さんがいるからあがるとかではなくて直接話す事に対してあがるらしい。 自分でもよくわからないが……。 道側の窓から見えるそんな憂鬱な空模様に自分の気持ちを照らし合わせる。 すっきりしない空……自分もそんな感じだった。 自分が自分に対してそのはっきりしないことがなんとももどかしい。 パジャマ姿でそんな憂鬱な気を肩か頭にでも乗せながら階段を静かに下りる。 そしていつもの通り玄関のほうへと階段から歩いてゆく。 ちなみにうちは二階に寝室と書斎。 そして一階に居間、台所など。 その書斎には難しそうな本がたくさん置いてある。 その中には自分の本棚もあってあの映画になった某人気本も翻訳していない英語の本のままで置いてある。 自分の部屋には別にもう一つ本棚があり、そこは主に漫画が多い。 玄関の扉をまた昨日と同じような事を思いながら静かに開ける。 相変わらず黒い雲がはりめぐる空に夜の暗さから雲に阻まれながらも明るさがくる。 昨日は家を出たところで皐月さんが先に出ていたのに今日はまだいない。 少し落ちつきつつも、遅い事に心配を寄せる。 そう思っていると隣の家の玄関が開く。 ガラガラガラ…… 「あっ、育人君おはよっ」 「おはよう……」 「今日もよろしくね」 「うん……」 言ってから気づいたと言うのか昨日に比べて少し軽いような気がする。 でも語尾を引きずっているような感じなのは何も変わってはいない。 でも朝会って挨拶して学校で会ってまた朝挨拶して……の繰り返しでは何も進歩がない。 せめて自分が何か変われば……何か転機があれば……。 そんな期待とこれからもこんな感じなのかという不安が心の中で入り混じる。 昨日、ああして美樹にバレたということは、仁志のところにその話が行く可能性もある。 そうなるとあの二人は一体どういう態度を取るのだろうか。 そういえば、仁志と美樹は幼稚園の頃から仲がいい。 たしかに僕も二人の幼馴染みでその頃から、いやそれ以前からよく遊ぶような仲だった。 仁志と仲がいいのはそれ以来ずっとだ。 でも仁志と美樹もそれ以来ずっとあんな関係を保っている。 進歩も後退もないように見える。 それに対してつくづく二人が羨ましく思えてくる。 美樹とはたしかにその時からずっと仲がよかった。 でも、流石に仁志のような関係ではなくフツーの幼馴染みという感じ。 僕はポストから新聞を抜き取り、家のほうへと向き直る。 家の背景の雲が黒い雲で覆われた空の隙間から光が差している。 雲が開いたのかこの曇り空も晴れるだろう。 そしてこんな関係もそんな気がしてきた。 |