第七話 前編(I) 新しい班
| 正月も過ぎ、新学期を迎えた当日。 始業式のあとのクラスでの帰りの挨拶をする前、十日に班変えをするとあの先生は言っていた。 そして今日はその一月十日だ。 班変えはこの日の学級活動として行われる事となった。 僕の今の班は僕と仁志を含め男女二対三の割合。 このクラスはほぼ男女の人数は一緒だが、男子の方が少し少ない。 それがこの班に響いていると言う事だ。 ちなみに班変えは一つの学期につき、一度。 席替えもその時に済ましてしまってあとは一度もしない。 ということは学期の間ずっと同じ席になるということだ。 ところで、その席の決め方は一学期・二学期と変わらずくじ引き。 そんな適当で良いのかと思うけども、あの先生がやる事だから仕方ない。 それに他に比べてもっとも早く決まるものだし、手っ取り早い方法だろう。 しかし、先生もそのくじの準備くらいこの時間までにやっておいたらいいと思う。 でもその分時間が空いて、教室の中はやかましい。 僕も仁志と談話をする。 「仁志、誰と同じ班になりたいんだ?」 「そうだな、やっぱりなるならお前とだな」 この間のもうすぐ一年の終わりと言う時にも美樹と何やらあったようで、礼を言っていた。 やはり、二人は付き合っているのだろうか。 しかし一体何の礼だったんだろう? そう言えば皐月さんが言った事に対して美樹がクリスマスプレゼントだって言ってた。 ということは、あのときに仁志が美樹からもらったプレゼントの礼をしてたということか。 でもプレゼントあげるくらいだから美樹とは相当仲がいいんだろうな。 僕もそうなれればな……。 でも仁志は美樹と同じ班になりたいと思わないのだろうか。 きちんとした答えは聞けないと思ってはいたがとりあえず訊いてみる。 「じゃあ、美樹とはなりたくないわけ?」 「なんでそこに美樹が出てくるんだよ?」 やはり、そう返ってくると思っていた。 「だってそりゃ、美樹とよく話してるじゃん」 「そりゃよく話してるけどよ」 「じゃあなんでその美樹とはなりたくないのさ?」 「別になりたくないってわけでもないけどよ」 「ならやっぱりなりたいんだろ?」 「お、用意もできたようだしとっとと行こうぜ」 こうしてことごとく流されてしまった。 無理しないでなりたいって言えばいいのに。 「育人、早く来いよ」 「お、おう」 仁志に呼ばれ、教卓のほうへとかけていく。 僕がついたと同時に仁志はその中からぶっきらぼうに取る。 僕もその紙の中から適当に目に付いたものをとる。 『2』 紙にはそう書かれている。 今度は二班か。 黒板の二班のところへと自分の名前を書きに行く。 仁志はどうやら五班のようだ。 書き終えた僕と仁志は机に戻り、その行く先を見届ける。 机についたと同時に美樹と皐月さんが教卓へと来た。 しばらく悩んでいたようだったが、二人とも決まったようで黒板へと書きに行く。 美樹は僕と同じ二班のところへ名前を書き入れる。 美樹と同じ班か。 そう思って横目で仁志を見てみる。 少し憂鬱そうな顔をしていた。 やはり美樹と同じ班のほうがよかったんじゃないか……。 そして前へ向き直る。 皐月さんが仁志と同じ五班へと名前を書き入れる。 仁志と同じ班か……。 仁志が変に羨ましくなる。 皐月さんと同じ班になれるなんていいよな。 僕は仁志に対してやきもちを焼いていた。 仁志には美樹がいることも忘れて……。 自分はやっぱり皐月さんに気があるのだと常々思う。 まだ直接話したことさえないのに。 |