第三話() 翌朝

そして次の日。
この日はいつもの時間に起きる事ができた。
案の定まだ誰も起きてきてはいない。
こうして一番に起きる僕はいつも新聞を朝早く取りに行って最初に読むのが日課だ。
まだ学校へ行くには相当の時間があるもので、いつも寝間着のまま外へ出る。
カシャッ
玄関の鍵を開け、外へと出る。
寝間着のせいか、季節のせいか、朝だからなのか寒い。
体のしんまで伝わってくるかのよう。
太陽は地平線を出たぐらいだろうか、向かいの家の影から眩しい日差しが差し込む。
霧が多少出ているのか遠くが白い。
そして朝の空気で深呼吸。
やっぱり朝の空気はおいしいと昨日出来なかった分もするかのようにもう一度大きく呼吸をする。
郵便受けの色は赤。
よくあるかまぼこ型だ。
そのポストまでは玄関からそう遠くない。
五、六歩と言ったところだろう。
二度目の深呼吸が終わったくらいだろうか、隣の家の玄関が鍵の音と共に開いた。
えっ……
よく見るも何もそのときに出てきたのはあの女の人。
昨日迂闊にも見とれてしまったあの人だ。
向こうも驚いたのか、声無しで頭だけを下げて挨拶をした。
条件反射かのようにこちらも頭を下げる。
そしてしばしの沈黙。
遠くで鶏の声がしたのを合図に、まるで何事も無かったかのようにポストの方へと向かう。
対して距離もないのにそのポストまでがとても遠く、足が重いような気がする。
心なしか脈も速いような気もする。
気のせいだろうと思いつつも気にしていたのだろう。
取ろうとした新聞が手を抜け落ちる。
慌てて拾い、何事も無かったかのように家の玄関へと向かう。
朝の空気に触れた手が冷たい。
そしてその手で玄関を開ける。
いつもよりゆっくりと開くその扉に寂しさを感じる。
家の中に入ったときにはすっかり玄関の空気も冷めていた。
そして、上から降りてきたお父さんと鉢合わせ。
「どうした、いつもなら新聞を読み始めている頃じゃないか?」
「いや、ちょっとね……」
そう言って台所へと向かいいつものように新聞を開く。
ただ違ったのはそのときの時計の指す時間だけだった。

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