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いつからだろう?光を求めなくなったのは・・・・・・・・・
いつだっただろう?光に絶望したのは?闇を安らぎに感じたのは・・・・・・・・
いつからだったのだろう?何もかもをなくした俺が何を手にしたのは・・・・・・・・
いつから、俺は、自分に興味が無くなった?
いつから・・・?・・・・・・・・・・いつから・・・・・・・・?・・・・・





初号機は左肩から右腰にかけて線引きをして、その下の部分が我ながら見事に切り離されていた。
I-ブレインという切り札を切って見事に賭けに負けた。
相手に運があったということだ。
それはしょうがない事ではある。
いつも自分に運が向いているとは思わない。
たとえ神がついていてもココの神ではないのだから。
ふ、ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・・・・・・
はははははははははははははははははははははは!!!!
やはり戦いはこうでないといけない。
下手すれば死ぬではなく全力を出しても勝てるかどうかわからない。
そういう戦いが楽しいんだ。
死を感じるのがただ、嬉しいだけなのかもしれないが。
実際に消滅できるわけ無いにもかかわらず・・・・・・こう考えると虚しいな。
初号機は・・・・・・・・どうにか動こうと悪戦苦闘ってところだな。
この間にこちらの戦力を再確認しよう。
I-ブレインは止まっていて戦力外、本当はI-ブレインのみでかたをつけたかったんだがな。
ミスリル製の小手に重力剣が二本・・・・・グリューナグは発動できないが論理回路を発動させたら爆発くらいはしてくれる。
左腕の小手にヒビが入っている。
ミスリル製の小手にひびが入るとは・・・・・・どんな衝撃だったんだろう?
左上腕の骨にイエローが出ている以外は・・・・・・・正常だ。
さて、法術でどこまで対抗しきれるかな?
初号機の様子を伺うと人影が見えた・・・・嫌な予感がする。
その人影はロンギヌスの槍と初号機を消滅させてしまった。

「あああああ、やっぱり。」

頭を抱えたくなる。
俺の使命をどんどんとってしまって・・・・・・嫌がらせか?嫌がらせなのか?
人影はゆっくりとこちらに向かってくる。
帽子をかぶったネルフ職員・・・・・・・俺の宿敵にして最大の友人。

「久しいな、レオ。」

「本当にね、セシル。」

俺という人間兵器を壊すためだけに創られた生物兵器。
なのに戦績はよくはない。
俺に勝った事があるということだけでもすさまじい評価を受けているが、10%の勝率も実際には無い。
それでも、勝率が、勝てる見込みがまったく無い奴よりレオを送り込んだほうがまだマシ、そんなレベルだろう。

「で、ここは気に入ったのか?」

「よく、わからないけど・・・・・・・やっぱり僕は、人が好きなんだと思うよ。」

「わかった、なら、殺してやる。」

「抵抗はするよ。」

「わかっている。」

レオが黄金の光に包まれる。
そこから出てきたのは虹色の衣に身を包んでいる二足歩行の獣の姿だった。
人狼が虹色の衣をまとっているという感じだろうか。

「メイス!」

シャンと不思議な音が鳴り響いて俺は緑色の光に包まれる。
髪の毛の色も緑色に淡く発光している。
だが、これでも闇の使者モードに入っているレオは倒せない。

「天地に溢れる精霊たちよ。その身を力に変え、古の契約により、我に力を貸せ!ゼル!!エリエル!!エーテル・ウォーリアー!!!セシル・ゼル・エリエル!」

精霊たちの力を身にまとい肉体の不足分を補う。
そこに天使と悪魔の魂を目覚めさせ精神体・・・・・・魂を聖魔モードに格上げする。
魂の変質についていくように肉体も変身する。
身体が傷つけば心も傷つく、魂が傷つけば肉体も傷つく。
つまり、魂が変われば身体も変化してしまうというわけだ。
良くも悪くも肉体は魂の器だということだ。
二対の真っ白な翼、聖衣で身を包み込んだ姿は天使を思い浮かべるだろう。

「アーク!!!」

空間がゆがみそこから聖魔獣と呼ばれる狼に似た黄金の獣が現れた。
大体俺と体長は変わらないか少し大きい程度。
そのアークはこの世界に現出し終わった瞬間、光の球体に姿を変えて俺の手の中に納まった。
剣というものの姿になって。
アークは自分の力に加えて装備主の力を2倍にして自分の力にし、二倍にした力と自分の力をプラスして装備主の力に加えるという能力を持っている。
その能力も決して万全ではなく上限があり、この姿の時に上げてくれるスペックは法力、魔力、神霊力と、科学的ではない力、精神的なものを上げてくれるに過ぎない。
レオも武器を出していた。
レオの武器は大きな鎌で使うものが使うと本当に厄介な代物だ。
鎌を得物に選ぶ人はあまりいないためどれほどのレベルかはよくわからない。
実は俺は剣を扱うのは苦手だったりするんだが・・・・・・無いよりはマシだ。
格闘が得意でも得物をもっている敵と戦うにははっきりとした実力差が無ければ勝てないはしない。
レオが動く。
単純に真っ直ぐこちらに飛んで鎌を振る。
すばらしい軌道でこちらの回避できる確率を見事に減らしてくれていたのでアークで受け止める。
キーーーーーンっと耳を劈く様な音が響く。

「ヘリオル!!」

左からの鎌を右手のアークで受け止め左腕を突き出し爆裂系の術をレオに叩き込む。
間合いを一時とるように後ろに跳躍するレオ。
レオは左腕でガードしたらしく左腕が少し焼けていた。
次はこちらから、全力で動く。
視界がブラック・アウトする。
光の速度を超えて動いているため目からの光の反射を取り込んでものを見ることはできないからだ。
レオがいたはずの地点でアークを振りぬく。
手ごたえは無い、この場にとどまっていたらかっこうの獲物になってしまうのでその場を離れる。
レオも光の速度を超えて動けるはずだから、用心しなければこちらがやられてしまう。
光の速度を超えることはそんなに難しいことではない。
ただたんに宇宙空間で加速していればいつかは光速度を超えることもできる。
しょせん、アインシュタインの相対性理論など机上の空論、世の中にどれだけ知られていようと実験ができなかったら証明ができないことでありそれはつまり仮定なのである。
I-ブレインみたいにプログラムにそれが施されているならともかく天使と悪魔の力を用いているこの姿の時にはそもそもそんなものは関係ない。
神が創った限界など、悪魔の力を持っている時点で無効にできる。
速度を光の約80%まで落とす。
これ以上速く動くと移動速度と目から入る認識がかみ合わなくなるからだ。
翼に力を込めて羽ばたく。
力は熱線に姿を変え敵に襲い掛かる。
レオは防御壁を形成して熱線をガード・・・・・・・・って、鎌を持っていない?
把握、後ろ!!!
振り向きざまアークで鎌を一線する。
この隙に少しは強い術を形成しているだろう。
再び光の速度を超えた移動をする。
切羽詰ったときなどはこの状態で感覚だけを頼りに戦ったりもするが、効率的では決して無い。
移動を済ますとそれを待っていたかのように術を開放するレオの姿が見えた。実際に待っていたのだろうが
術に対する抵抗力を咄嗟に上げて防御壁も形成する。
ちっ!!!!!
術を解放後レオは鎌を大きく振った。
それにあわせて目の前に鎌の刃の部分が現れ防御壁に接触した。
鎌の刃を切り払う。
確かにディストーションで攻撃するのは良い方法ではある。
抵抗力を上げているため相手の領域内でのディストーションはできないもののその範囲の外からなら刃が届けば相手を切れる。
俺もよく使う手ではある。
こんな牽制の試合でも勝負がつくときはつくし、一週間以上つかないときもある。
今のところの最高記録は一ヶ月だ。
もちろんそれだけやれば体の方が持たないから、人間に戻った瞬間死んでしまった。
長時間大きな力を使い続けると器のほうが壊れてしまう。
所詮は人間の限界があるということだ。
天使と悪魔、二つの魂を許容した人間は常に崩壊のリスクを背負うことになる。
いつもは力を解放しないのはそのためだ。
その力を解放している今、寿命はどんどん削られているはずだ。

「ヘリオル!!」

牽制の術はこちらにとっても牽制になってしまう可能性があるが、先手をなかなか取れない分こういうことをしないと戦えない。

「ソウル・ブラスト!」
「ゲイザー!!!」

俺が出した光球が太い熱線に巻き込まれて爆発する。
そのままオレのところに向かってきたは熱線を切り払う。
レオは超光速に入ったようで姿が見えない。
集中・・・集中・・・・・・集中・・・・・・・・・
ギィーーーーーーーーーーーーーン
鎌の刃の軌道上に剣の切っ先を合わせることに成功した。
切っ先を合わせたまま刃を立ててレオに接触できた。
ゼロ距離から寸頸の要領で刃をめり込ませる。
法力を全力でアークに送り込み、ダメージを与えるためだけの行動。
気が遠くなるが無理やりつなぎとめる。
こんな時に気を失うわけにはいかない。

「セシル・・・・・・・・・・さすがだね。」

「全力を出してない相手に言われたくない。」

「全力だよ。」

「本気・・・・殺す気はない?それのほうが戦いにおいては弱いんだよ。」

「いいんだよ、これで。」

「レオは優しいからな。」

「セシルのほうが優しいよ。」

「レオ、オレはお前が守護者をやれば良いと今でも思っている。」

「僕よりもセシルのほうが合ってるよ。」

「オレは、人間の生死なんか興味ない。」

「セシルは全てを公平に判断できる。公平に行動できる。この世界を壊す可能性がある人でも知り合いになったら僕は・・・・僕には殺せないよ。」

「オレなら殺せるから適任だと?」

「僕は感情が邪魔するけど、セシルは感情と行動を切り離して行動することができる。それができない僕は、適任とは言えないよ。」

「・・・・・・・・・・・・・それが良いとは言えないだろ?」

「少人数を犠牲にしても大人数を救う、守護者はそれをしなくちゃいけない。または、少人数の選ばれた人間だけを残して他を殺す・・・・・・どちらも僕にはできないことだ。」

血が少ない・・・・・・浅すぎる。

「確かにオレはそれ実行することが可能だ。でも、優しいってコトにはならないだろ。」

「優しいよ。君はずっと心に留めている。ずっと、心を削っている。」

「自分を傷つけて喜んでいるマゾだっていいたいのか?」

「違う!全てを受け入れて、その殺す人のことも、生かす人のことも考えて動けて、殺す人にも慈悲を忘れない。それができる人ということで優しいといっているんだ。」

「この世界を守るために自分を殺すことができるお前のほうが優しいさ。」

「君もするだろ?」

「しないさ。」

「嘘だ。」

「俺は、人間を恨んでいるほうの人間だから。」

「それでも守るんだね。」

「運命を剥ぎ取られて放棄できないだけだ。」

「僕は運命を決められても放棄してるよ。」

「それはレオだからだ。」

「僕より強いセシルができないはず無い!結局みんなを助けたいんだよ!!」

「うるさいよ。」

「意志の強さはセシルが一番強い!」

「違う、心が壊れているだけだ。強いのとは違う。」

幼少期にできた心の傷はずっと癒されずに残っている。

「セシル・・・・・・・・・・・強いんだよ。ハタから見ればよくわかる。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

戦闘中だということを忘れてないか?
まだ致命傷ではないだろう。

「セシル、僕が死んでも、もう一人送り込まれている。」

「もう倒した。記憶を喰う奴だろ?」

「違う、僕の手下じゃなくて、僕と同じ直属の使徒がきてるんだ。」

「まだ寄こしてたのか、飽きないな、奴も。」

「僕とそいつでセシルをなんとかしようとしたみたいだけど・・・・・・共闘ができなかったから意味はないと思う。」

「そうか・・・・・・教えてくれてありがとう。」

「うん、がんばって。」

「ああ。」

「それじゃあ、続き・・・・・・しようか?」

レオはそういうと鎌のをスライドさせる。
俺は右腕の小手で防いで左腕でレオの頭を掴む。

「光の奇跡!!」

高出力エネルギー系統の最高法術を解き放つ。
レオの頭がなくなりレオの体が力を失った。

「ヘリオル!!」

爆裂系で身体を爆砕し、完全に勝ちをものにした。
自分から死んでくれているようなものだから、勝利とは言えないだろうけど。

「レオ・・・・・・・・またな。」

さあて、仕上げをしないといけないな。
昔、自分を唯一の神だと公言していた神が作り出した自己満足の象徴。
自分の力を少し貸すということをするための装置。
この空洞を埋めなければならない。
術を形成して解き放つ。
指向性の爆裂系。
腕を動かすとそれに合わせて爆発する場所が変わる。
一通り・・・・・円を描くように・・・・・・・・・
円が完成すると地震が始まった。
探査モード・・・・・・・ちゃんと破壊できたようで、さっきまで起動していたシステムが今は機能していない。
地震が大きくなってきた・・・・・・・やばい、やりすぎたか?
案の定、天井が落ちてきた。

「しまったなぁ。」

物理干渉、対象万有引力、重力遮断!!
生物反応検索・・・・・・・・・・・検索完了。
空間干渉、位置データを処理、交換場所確保、ディストーション。
とりあえず、関係の無い人たちまで殺すことは無い。
俺は殺人狂ではないんだから。
重力開放。
そして飛ぶ。
落ちてくる天井を避けながら地上を目指す。
さっき検索かけた時にアスカが引っかかっていたけど、なんか変だったな。
少し様子を見てみるか。


















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