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「悪いな、少ししかいないのに飯つくってもらって。」
「兄様の料理もいいんです。ですが、私がいるときは私の料理を食べてもらいたいですから。」
「そうか、ありがとう。」
それにしても料理の量が多い。
まあ、予想は簡単にできる。
俺には本当に過ぎた妹だ。
「ずいぶんと料理の量が多いんだな。買い置きがもうないだろ。」
「兄様はキャパシティの補充ををすると思いましたので、多く作りました。」
「よくおわかりで、ありがとう。」
覚醒後の熱量は普通の人間となんら変わらない俺にとって異相容量にいれる熱量の確保は確かに一番大事なことだ。
うかつに法術を使おうものなら十発ほどで打ち止めになってしまう。
下手をすれば3発がいいところだろう。
まあ、I-ブレインがあるうちは法術を使うこともあまりないだろう。
「あいかわらずおいしいな。」
料理を口にした感想だ。
自分で作ったものなんか太刀打ちできないほどにおいしい。
同じ材料を使ってどうしてこうも差ができるのやら。
「ありがとうございます。」
ニコっと笑うリーザを少し観察しつつ食事をすすめる。
俺たちはちゃんと死ぬ。
だが永遠が約束された存在だ。
そんな存在になったのはなりてが俺かリーザが姉様しかいなかったからだ。
俺がならなかったら必然的にリーザか姉様がこの世界を守るという役目を負わなければならなくなる。
だから俺がなったんだ。
それなのにリーザは俺のサポートという名目で同じ運命を選んでしまった。
俺がこの道を選んでもついてきて選ばなかったら人の良いリーザのことだから引き受けていたことだろう。
何を考えているのかいまいちわからない。
それなりの年月を過ごしてきたのに・・・・・・そうか、それはリーザも一緒なのか。
「どうかしましたか?」
頭の上に可愛いはてなマークを浮かべて俺に質問するリーザに少し苦笑しながら答える。
「何も無い。ただリーザを観察してただけだ。」
そう答えるとなぜかリーザは顔を少し赤らめてうつむいてしまった。
何か悪いことでも言ったか?
「リーザは相変わらず綺麗だよ。」
とりあえず雰囲気を変えようとそう言ってみる。
嘘はついてはいないがますます顔を赤くしてしまった。
何が原因なんだ?見当もつかない。
だがなぜか楽しい気分になる。
「兄様、あまり、からかわないでください。」
リーザがシロドモドロになりながら小声でつぶやいた。
本音なんだがな。
「それよりも他に食べたいものはありますか?」
「いや、とりあえずこれだけあれば充分。」
「何かあったら遠慮なく言ってくださいね。それくらいでしたかお役に立てませんから。」
役にはたっている。
リーザは俺がリーザのことを支えにしていることに気づいていないのだろうか?
永遠を生きるといっても本当にずっと存在しているわけではない。
人間には精神を正常に運用できる制限時間が存在するからだ。
気が触れてしまったらもう兵器としての価値はなくなり処理される。
俺はその時を待って戦い続けるわけだが、普通がどれくらいかはわからないが俺は長いらしい。
神の使いの片割れであるヴァイのほうは主であるエーヴェと恋仲になっているため本来ヴァイのほうが戦闘能力は高いのだが俺に仕事が回ってくる。
つまり普通よりも消耗が激しいということだ。
今でも通常通りの精神活動しているのが不思議ではあるが、記憶を封印して精神活動をする時間を短縮したりしている効果が発揮されているのだろうか。
それとも俺の精神構造の問題か。
どちらにしてもリーザがいなければとうに発狂して楽になれていただろうが。
リーザといるとほっとする。
ずっとそばにいたいとも思う。
リーザは俺を存在させている足枷であり、俺の安定剤なんだ。
リーザがそばにいるというだけで役にはたっている。
「家事をしてくれなくてもリーザは役に立っている。」
「本当にお役にたててますか?」
「ああ、本当だ。」
「なら、ご褒美をください。」
そういって目を瞑って顔をこちらに向ける。
俺はリーザの唇に自分の唇を重ねる。
これが褒美になるんだからリーザの思考がいまいちわからない。
俺にキスされてうれしいものか?
「これでいい?」
リーザは俺の問いに真っ赤な顔をして笑顔になって答えた
「はい、いいですよ♪」
リーザは俺の世話をするのが生きがいではないのかと思うときがある。
世話をしてスキンシップを求めて・・・・・まるで恋人みたいに。
ある意味では恋人以上の存在ではあるんだが。
「兄様。」
「ん?」
リーザは真面目な顔をして俺の顔を見ている。
俺の顔に何かついているのか?
「兄様だけにつらい思いはさせませんから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何を言い出すかと思えばそんなことか。
「別に俺だけがつらい思いをしているわけじゃない。それに俺がつらい思いをしているとでも?」
「はい、してます。兄様の問題でも私に話してくだされば私は嬉しいです。」
「・・・・・・・・またその言葉か、わかってる。何か悩んだときにはリーザに相談する。ちゃんと覚えている。」
「・・・・・信じています。」
ああ、信じてもらって良いよ。
俺は笑顔をリーザに向けてかるく頷いた。
本当に久しぶりな兄妹の生活。
そばにいて安心できる人というの本当に少ないと思う。
もう1000年近く生きているがそんな存在はまだ二桁を超えていない。
特別な存在・・・・・・・・そんなモノが在るなんて兄様とリーザがいなければ知らずに生きてもうとっくに壊れていただろうに。
いったい、いつになったら楽になれるんだろう?
「あ、兄様。ご飯できましたから座ってください。」
リーザが嬉しそうに支度をしている。
「ああ、運ぶの手伝うよ。」
「いえ、いいですから。兄様は座っていてください。」
「いや、そんなわけにも。」
「駄目ですか?」
こういうときリーザはいつもなぜか瞳に涙をためてとても寂しそうに俺を見つめる。
「あ、いや・・・・・・・・・頼みます。」
「はい♪」
どうにも勝てないので、俺はおとなしく席につく。
リーザは俺の世話をするのが好きなようだ。
何かにつけて世話をしたがる。
家事なんてやっていて愉快なものではないだろうに、別に不愉快でもないだろうが。
結局は母性本能が強い世話好きなのかもしれないな。
「この世界での仕事はうまくいきそうですか?」
「ちゃんとやるけど、ちょっとつらいかもしれない・・・・・・エーヴェは親殺しをさせて嬉しいのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・兄様、私が代わりましょうか?」
甲斐甲斐しくそう言ってくれるが、俺の仕事をリーザにさせてはいけない。
「大丈夫、ちゃんとやるよ。」
リーザは悲しそうに俺を見ている。
感情が外に出て、それを目ざとく見つけたのだろうか?
「大丈夫だよ、慣れてるから。」
考えてみればかなら恐い言葉のような気もするが本当のことだからしょうがない。
「すみません、できればそばにいたいのですが、向こうのほうも緊迫していますので。」
「気に病むな、大丈夫だ、本当に。」
「はい。」
ご飯を食べて自分の部屋に戻ってベットでまどろんでいるとリーザも入ってきて俺に抱きついた。
「どうした?寝るのか?」
「はい。」
一緒の世界にいるときはたいてい抱き合って寝る。
なぜかリーザはくっついて寝るのが好きなようだ。
寂しがりやなのかもしれない。
まあ、俺にもリーザの出す心の匂いを取り込めるというメリットがあるため拒否はしない。
リーザの匂いは乾いていくだけの心に水を与えてくれるようなものだから。
ずっとこうしていられれば俺は幸せなのかもしれない。
「加持さん、ギリギリですよ。」
「悪い、ちょっと手間取ってね。」
リーザがこの世界をたってから6日後ネルフ本部に情報収集のために乗り込もうと準備をし終えて実行直前に加持さんが情報をもってやってきた。
「これがお望みのネルフ支部の全てだ。技術提供はどこからも受けていない。機密保持のためとネルフが最初から技術者や研究者の集まりだということがその原因だな。」
「ゼーレの情報は?」
「これに書いてある。」
二束の書類を受け取り目を通す。
計七ヶ所の襲撃か・・・・・・・・・・・結構な手間になりそうだ。
ゼーレはネルフ支部を襲撃してメンバーの詳細を手に入れてっという手順で大丈夫だろう。
まったく、この世界ではかなりの数を殺さなければならない。
俺の趣味に人殺しなんてものは存在してないんだが。
「移動手段とかはどうするんだい?」
加持さんが当然の疑問を投げかけてきた。
そう、普通なら当然の疑問だ。
「ご心配なく、確保はしています。それよりも加持さんは自分の命の心配をしていればいい。」
「まいったな。」
加持さんは苦笑を残して俺の前からいなくなった。
「さてっと。」
どうしたものか、どこから手をつければいいのやら。
近い順に始末していけばいいか。
まだ使徒が残っているらしいからそれの対策はネルフ本部にさせよう。
よって、ネルフ本部は後回しで・・・・・・・・・
海外に出ないといけないのか。
まあいい、俺にはあまり関係はない。
意識領域増大。
人間が持つ意識の許容量を増やす。
知覚範囲拡張。
自分が認識できる範囲をある程度広げる。
自分を中心に地球を全部囲うくらいに広げた後、目的の場所に意識を持っていく。
次に空間湾曲の術の構成を組み上げ発動させる。
目的の場所と自分の身体がある空間を交換し、移動完了。
目の前にはネルフ支部その1がある。
さっそく潜入してここのコンピューターから情報を抜き取った後、完全破壊をしてまずは一つ目っと。
よし!完璧な作戦だ。
さすがに一日で全てを潰すというのはできないこともないが疲れることなので休憩をしながらになる。
一日一ネルフ支部といった具合のペースだ。
ひとつのネルフ支部で手に入れたゼーレの情報を元にゼーレの機関も潰しているから三日に一ネルフ支部という進行具合もやむ終えないだろう。
別に焦ってするほどのことではないし、それはそれでいい。
だが、この世界には"奴"が来ていた。
そのことのほうが俺にとっては重大事項だ。
俺が派手な動きをしだしたから"奴"も動かざるおえなくなるだろう。
"奴"はあまり動きたくはないだろうけど、動かなければ処分されてしまうので必ず動く。
絶対に役目が反対のほうがお互いに気合が入ると思うんだが・・・・それを思っても現実は何も変わらない。
思うだけでは何も変わらない。
思いが無ければ身体は動かない。
思い、動いてこそ、現実を動かすことができる。
でも、俺は動き方がわからない。
どうすればみんなうまく納まるとわかっているが、そこにたどり着く道がわからない。
わからないから動けない。
動けないから何も変わらない。
何もしていないのと同じ。
"奴"も俺と同じように動かない。
"奴"はこのままのほうが良いと考えているから仕方が無いかもしれない。
俺を優しい人だと言うような人間だからな。
いつも俺に殺されているくせになぜその俺を優しいと言うのかわからない。
銃を構えているネルフ職員を発見、一振りのもとに殺す。
自己領域でマギのところにたどり着くのは難しく、やむ終えず身体能力制御やラプラスを使いながらマギに近づく。
あとで消滅させるから残党がいても問題は無いので極力戦闘はさせようとはする。
あまり気を使ってはいないが。
マギまでもう少しのところで武器を持たずに歌っている少年がいた。
脅威にはならないから無視して通り過ぎようとすると壁にぶつかったような感触に襲われた。
「・・・・・・・・・進めない?」
オレンジ色の光・・・・・・・・ATフィールドか。
「歌はいいねぇ、歌は心を潤してくれる、リリンの生み出した文化の極みだよ、そう感じないか?碇シンジ君。」
少年が俺に話しかけてきた。
のんびりとしている状況じゃないと思うのだが。
「俺の名前を知ってるんだ。」
「僕は渚カヲル、カヲルでいいよ。」
「じゃあ、俺はシンジでいい。」
「君はとても強いんだね。」
「まあ、よく言われる。」
最高の人間兵器とされているハーメルだが、俺の場合はハーメルにしては強すぎるらしい。
万能のハーメルは戦闘は苦手なはずらしいのだが、俺は戦闘能力が高い。
「君の心は強い光を放っているね。」
「強い闇じゃないのか?」
強い力はよく光と表現されるからね。
「君は一人でも生きて行けるんだね。」
「あまり良いことではないと認識はしてるんだけどね。」
「なぜだい?」
「人は寂しがりやのはずだからね。」
「人間は永久に寂しさを無くすことは出来ない、人は一人だからね?ただ忘れることができるから、人は生きていけるのさ。」
あまり活きているという表現には当てはならないんだよな。
「いいコトいうね。」
オレンジの壁を切りつける。
たいした影響は与えられなかった。
「ATフィールド、君達リリンはそう呼んでるね?、何人にも犯されざる聖なる領域……心の光、本当はリリンも分かっているんだろう?ATフィールドは誰もが持っている心の壁だと言う事を。」
心の壁・・・・・・ということは俺には有効ではない。
夢界異邦人顕現。
意思を目の前の少年、渚カヲルに向ける。
レゾネイト・・・・シンクロナイズ・・・・・ドッキング。
オレンジ色の壁をすり抜ける。
ATフィールドが使えるということは神の似身の出来損ないの一つ、つまり使徒だということだ。
ここで壊していく必要がある。
「君とは他のどこかで会ってゆっくりと話がしたかったよ。」
唐突に剣を振るう。
渚カヲルはその剣をどうにか避ける。
振り切った勢いを乗せて二撃目を放つ。
一撃目でバランスを多少なりとも崩している渚カヲルは避けられずに剣の餌食になった。
「でもこのまま死ぬ事も出来るんだ、生と死は等価値なんだよ、僕にとってはね。自らの死、それが唯一の絶対的自由なんだよ。」
「何を言っている?」
「遺言だよ。」
袈裟切りにされて余裕で生きている。
自らの死、それが唯一の絶対的自由・・・・・・俺には死んでも自由なんてものは無い。
力をもつということは犠牲を払うということ、この強大な力と引き換えに永遠の束縛を受ける身としてはうらやましい限りだ。
「さあ、トドメをさしてくれ。」
触れれば爆発する法力を剣に乗せ渚カヲルを切る。
爆発が渚カヲルを木っ端微塵にする。
「死という逃げ道があるから、救いがあるから、人は生きられるっか・・・・・・誰の言葉だっけ。」
少し考えた後思い出せそうに無かったから、当初の予定通りマギのところに向かう。
マギからデータを引き出す。
この近くのゼーレの施設は一つか・・・・・ネルフ支部があと二つでゼーレの施設が四つ、あと少しだな。
次に建造中のエヴァの位置を確認してマギを法術で破壊。
エヴァを確認後法術で破壊してネルフの外に出て外法でネルフ支部を消滅させた。
大きな法術を立て続けに使うからそれなりに疲れる。
一応人間だから栄養補給も馬鹿にできない。
法術を使わなければ2ヶ月ほど何も食べなくても大丈夫だが法術を使った戦闘をすると人並み程度には食べないとすぐに死んでしまう。
大事をとって食事してからゼーレの支部に向かうとするか。
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