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自然に囲まれた小さな村で一人で寂しそうに空を見ている男の子。
白い髪は綺麗に輝いていてはかない存在に見える。
その男の子に女の子が近づいて抱きつく。
男の子はビックリしたようだが、女の子だとわかるとすぐに笑顔になった。
じゃれている男の子と女の子を少し離れて見つける少女。
少女は男の子と女の子よりも年上のようだ。
そこに一人の男がいきなり襲った。
男の子は昏倒させられ女の子と少女は男に連れ去られた。
男の子は目を覚ましたとき護れなかったと泣いた。
空を見上げる。
広い空。
無限に広がるように見える。
円形をしているから端は確かに無い。
空はいつでもそこにある。
それは絶対的な信頼。
だからだろうか、なぜか安心する。
誰もいない公園のベンチで寝転がってただ空を見ていた。
友達を殺したからって落ち込んでるわけじゃない。
ウウウウウウウウウウウウ
けたたましい音に起き上がる。
何の音?
空にはヘリやら飛行機やらが飛んでいる。
そして十字の光。
ちょっとヤバイ雰囲気になっているようだった。
僕は装備を整えるために一度自分の部屋に戻ることにした。
その帰り道に淡い金色の髪の毛と同じ色をした瞳を持つ女性が待っていた。
確信できる、間違いなく僕を待っていた。
そう、僕はこの女性を知っている。
「お久しぶりですね。」
久しぶり、女性は確かにそういった。
「ご自分で元の姿に戻るなんて思っていませんでした。」
元の姿・・・・・・・心当たりは・・・・・・・ある・・・・
「あなたは誰?」
女性はゆったりとした優しい笑みを浮かべて僕を見ている。
「それを思い出してもらうために私がきたんです。」
そういって僕を抱きしめる。
抵抗をする気も起きない。
「禊を済ませてるんですね。楽になって良いです。」
女性の唇が触れて、僕の口の中に何か温かいものが入ってくる。
それをきっかけに記憶が湧き出るように再生された。
自分の記憶がちゃんと起動していることを確認して唇を離す。
「ごめん・・・・・」
碇シンジに謝る。
俺が転生しなかったらちゃんと普通の人として生きていけたはずだから。
実質では自分に謝っているんだが、それでもこういうのは駄目だと思う。
自分への謝罪を終えて女性を見つめる。
「久しぶり、今は俺よりも年上なんだな。」
肉体的には俺よりも少し上だな。
「はい、22です。」
「で、追加の指令はあるのか?」
「はい、ここを速やかに救って次に逝ってほしいそうです。」
「次があるのか?」
「はい、私が先に逝ってくいとめて起きますので、早めにきてください。」
「タイムリミットは?」
「後半年です。」
「わかった。」
「兄様はここで思うようにしてください。とのことです、救うのも見捨てるのもお任せするそうです。ですが。」
「できれば救ってやってくれ、だろ?わかってる。ノイッシュはやさしいから。」
「兄様も。」
「俺はやさしくなんかない。それよりもいつまでここにいるんだ?」
「一週間後には、逝こうと思います。」
「それまではゆっくりできるんだな?」
「はい。」
「じゃあ、ついて来い、この世界での俺の部屋に案内するから。」
「はい♪」
なぜそこでうれしそうにするのかはわからないが、つまらなくされるよりはずっといい。
部屋に着くまでお互いの近況を報告しあった。
「ちょっとゆっくりしすぎたな。」
部屋につくまでのんびりしていた分装備の装着は急ぐ。
「ここで待ってろ、すぐに帰ってくる。」
「はい、いってらっしゃい。」
騎士剣を携えて青でまとめた服を着て2本の重力剣も持っていく。
(I-ブレイン起動。光速度、万有引力、プランク定数、取得。自己領域展開)
そのまま走って窓から飛び立つ。
通常は重力を1/3に設定していて重力による加速もないからここから落ちても全然平気だ。
公園から見えた光の場所を目指して走る。
結構手酷くやられているようだ。
いたるところに金属片やら火災やらが見える。
少しの時間進むと大きな穴が地面に開いている。
使徒はここから入っていったんだな。
その地面に迷わず飛び込む。
上からジオフロントを見下ろすかたちになっているから観察してみる。
零号機と弐号機が動きもせずに横たわっている。
もうすでにやられたようだ。
綺麗な円球になっているはずの洞窟、それでも機能は失ってはいない。
使徒がネルフ本部のピラミッドに向かっている。
まだ壊れてもらっても全然いいんだが、余計な混乱は生みたくは無い。
混乱の現況がこんなことを考えるのもおかしなものだが。
とりあえずは・・・・倒さないとな。
(自己領域終了。身体能力制御発動、運動速度を40倍、知覚速度を60倍で定義、グリューナグ発動)
重力剣を引き抜き狙いもそこそこに思いっきり投げつける。
投げた物質は情報強化されて空気抵抗による方向の誤差や熱摩擦による温度上昇を押さえ込まれて重力の3倍の加速をつけて進行方向上を爆進する。
あまり頼りにはしていないが重宝はしている。
コアをはずしたが使徒には命中した。
爆発が起きる。
重力剣に刻まれている論理回路の能力が発動し局所的核爆発をおこしたようだ。
その余波で結構流される。
そしてやっと着地。
生身だからいくら身体を強化しているといってもあの高度から着地するには姿勢に気を回す必要があったが、問題も無く成功したようだ。
着地が成功したのを確認して周りをみわたす。
使徒は半壊しているがまだ健在。
僕はスイカ畑のすぐそばにいて、近くには加持さんがいる。
(身体能力制御終了。グリューナグ終了)
「こんなところで何をしているんですか?」
加持さんは別段驚いた様子も無く僕をみる。
「驚いたなどこから来たんだい?」
「あの穴から来ました。」
上の穴を指差して答える。
「加持さんはここで何をしているんですか?」
「戦闘の時の居場所がなくてね、ここで水をやってる。シンジ君は何をしにここへ?」
「使徒の処理です。」
「戦わないんじゃなかったのかい?」
「戦いますよ。自分のためにね。エヴァンゲリオンに乗るのが嫌なだけです。」
碇ユイの溶けた現場に居合わせたんだ。
嫌に決まっている。
「それでどうやって使徒を倒すんだい?」
「この剣があれば十分です。」
騎士剣を少し持ち上げて答える。
「それで使徒が倒せるのかい?」
「体長1キロ以上の化け物も倒しているんです。大丈夫ですよ。」
まあ、最強の騎士だったからあの芸当ができたんだろう。
俺もできるがI-ブレインの助力だけではやる気にはなれない。
「そろそろ止めを刺しにいきますね。」
「ではここでシンジ君が使徒を倒すところを見学させてもらうとしよう。」
「ご自由に。」
(光速度、万有引力、プランク定数、取得。自己領域展開)
遠くから投げても外れるだろうから接近戦でコアに重力剣をぶち込めばそれで終わるだろう。
2分で使徒の足元に辿りついた。
まあ、特別急ぐ理由はまったく無いのだが走ってきてしまった。
使徒を見上げる。
コアが見ていた。
(自己領域終了。身体能力制御発動、運動速度を40倍、知覚速度を60倍で定義、グリューナグ発動)
今度は狙いをつけて投げる。
殻のようなものに覆われている使徒のコアに正確に命中。
爆発。
使徒はまだ生きていた。
(グリューナグ終了、身体能力制御発動、運動速度、知覚速度を60倍で再定義)
力を込めて飛ぶ。
勢いを乗せて使徒のコアに騎士剣を突き立てる。
そこから上に向けて切り上げ、そして振り下ろす。
この一連の作業で殻ごと使徒のコアを真っ二つにした。
すばやく離れて様子を見る。
なかなかの速さで壊死していく。
死んだな、こりゃ。
(身体能力制御終了)
「悪いな。」
こいつも生きてたのに・・・・・
俺が思っても仕方は無いことだ。
これから行動を起こすには少し情報が足りないな、加持さんにでもたよるとするか。
という考えのもと、俺は加持さんのところへ行った。
「君は何者なんだ?」
加持さんは少々あきれたように俺をみる。
「神の使いですよ。創造神のね。」
「神の使いね、なるほど。」
納得したような返事だな。
「全知全能の神ではないので能力には制限があるんです。そこであなたの力をかしてほしいのですがいいですか?」
「俺は何をすればいいのかな?」
とりあえずは内容を聞いてみるってところか?
「ゼーレのメンバーの情報とネルフ支部の正確な位置です。」
「どうしてその情報がほしいんだい?」
「潰さないといけないから。」
場所がわからなかったら壊しにいけない。
「それはネルフとゼーレを敵に回すってことになるぞ。」
「違います。ネルフとゼーレが俺の敵に回っただけで俺自身は動いてません。」
「ほう、それは豪快だな。」
「で、どうします?協力願えますか?」
「しないといったらどうする?」
「どうもしないですよ。手間が増えるだけでやることは変わりません。だからこれはただの勧誘です。無視しても結構。」
「受けるよ。そのほうが面白そうだ。」
子供みたいななかなか良い笑顔を見せる。
「それではこれを。」
騎士剣で左腕を少し切る。
「我が血よ、呪われよ。」
流れ出た血が結晶化し、赤い宝石のようなものが出来上がる。
結晶化が完了したころにはもう傷はふさがっていた。
「これを契約のしるしとしてもっておいてください。」
「これで俺も神の僕ってところかい?」
「いいえ、俺ともう一人使い魔が存在するだけ、神の僕になりたかったら俺の使い魔になるしかないけど、それはいやでしょ?」
「まあ、な。」
「他に聞きたいことは?」
「君の本当の名前は?」
「碇シンジです。」
この世界ではね。
「神の使いの名前が碇シンジかい?」
「そうですよ。変ですか?」
「いや、いいさ。」
「それじゃあ、調べ終わったら僕の部屋に来てください。期限は一週間で、一週間たったら自発的に行動を起こします。それまでに情報を集めてきてください。」
「わかった。」
「それでは、帰ります。また近いうちに。」
(光速度、万有引力、プランク定数、取得。自己領域展開)
自己領域はデフォルトでも十分に使えるな。
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