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二対の天使のような翼をはためかせて戦っている僕が見える。
空間を歪め、高速で、光速に限りなく近い速度で動く。
刀身が自分の身長ほどある片刃の剣を軽々と振る。
光を集め、闇を支配し、風を操り、炎を燈し、大地を変化させて、水を動かす。
光は局所的に高熱を生み、闇は具現化して敵をとらえ、風は酸素や窒素をも分かち、炎は鋼鉄おも蒸発させ、大地は空に舞い、水はその姿を変える。
自分がしもべにした存在を呼び出し、けしかける。
空を舞い、水中を移動し、空間をも跳ぶ。
だけど、その姿はとても悲しそうだった。








ここは・・・・・・ベッド?
あたりを見渡してみると・・・・・・・間違いなく僕の部屋だった。
頬に何か違和感を感じる。

「僕は・・・・・・・・・・・泣いていたの?」

頬にそっと指を当ててみる・・・・・・・確かに泣いてたみたいだ。

「僕ってもしかして泣き虫?」

今も、とても悲しい気持ちだ・・・・・・・あの人の記憶が戻ったらずっとこんな気持ちなのかな?
気が重たくなった、だけど、僕の記憶が戻ってもあの人の記憶を取り戻さないと進めない僕がここにいる。

「世の中って不条理。」

声が少し拗ねているようにも聞こえる。

「それにしても、なかなか起きれないと思ったらこういうことか。」

僕に抱きついているレイを横目にすこしため息がこぼれた。
あ〜〜〜〜、そういえば昨日一緒に寝たんだっけなあ。
レイの戒めから抜け出そうとするが抜け出せない。
腕をはずそうとすると力を入れられてはずれないし下に移動してはずそうとしたら足を絡められてしまった。
本当にレイちゃんは寝てるの?っと言いたくなってしまう。
今、何時なんだろう?
時計を見ると7時・・・・・・・・学校にいかなきゃ。

「ん?・・・・・・・・シンジ君?」

レイがおきたみたい・・・・ていうか僕がうごいてたから起きたって感じだね。

「おはよう。」

「・・・・おはよう。」

レイは少しきょろきょろとしたあと時計を見つけて硬直した。

「・・・・・・・・行かなきゃ・・・・・」

「一緒に行く?」

「駄目、本部にいかなくちゃいけないから。」

本部ってことはネルフだね。

「そうか、気をつけてね。」

「うん、ありがとう。」

レイの頭をなでてやる。
レイは目を細めてなんだか嬉しそうな顔をする。

「いってらっしゃい。」

レイは名残惜しそうに僕から離れて自分の部屋に行った。
視界からいなくなっても確実にレイを捕捉している。
本当に前の体とは比べ物にならない身体能力だと実感する。

「行ってきます。」

何か食べ物を渡そうと思ったけど、買出しをあまりしてないのか食パンも無かった。

「ちゃんと帰ってこいよぉ。」

今日の夕飯はシチューあたりでもするかな。
それにしても・・・・・・・・・レイが出て行ったドアを見つめる。
レイ・・・・・お母さんに似ている・・・・・似すぎている。
もしかすると血縁者なのかもしれない。
でも・・・・・・・・・・アルビノというのが気にかかる。
遺伝子異常により色素が希薄であるために髪の毛が白に近いか、もしくは純粋な白。
瞳は透明であるがために血の色が映し出されて赤く見える。
自然が生み出すこともあるけど、人造人間を作るようなところだし、あんなに似ていること。
親戚じゃなかったらほぼ間違いなくお母さんのクローンだろうな。

「誰がそれを必要としたか・・・・・・・・・・父さんだろうな。」

父さんは母さんがいなくなってさびしいからレイを作った。
そう考えるのが妥当だと思う。
でも、その場合、母さんが帰ってきたからレイの立場が危ういんじゃないか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・僕は彼女に命の保障をあげないといけないんじゃないか?

「まあ、いっか。」

そんなことどうにでもなるし、勝手な想像でしかないから僕の考えで当たることなんてたかが知れてるだろう。
僕の勘はなぜか当たりやすいけど。

「あ、そろそろ出ないと遅刻しちゃうな。」

気があまり進まないけど学校に行くことにする。









「何のつもりかね?」

「何のことですかな?」

先生に呼び出されてしまったよ。

「何のこと?じゃない!髪の毛を白に染めてきてカラーコンタクトをしてくるとは何のつもりかときいてるんだ!」

担任の先生は見逃してくれたのになんで体育教師ってこんなことにつっかかってくるかな?
顔自体も変わっているし・・・・でも、さっきの僕のギャグを流さないで。

「ネルフのエヴァという兵器にのった影響でなったんです。文句ならネルフに言っていただけませんか?」

「な・・・何?」

あ、動揺してる動揺してる♪

「綾波レイっているでしょ?彼女もその兵器にのってるんだけど、その影響でああなったんですよ。聞いてませんか?」

「い、いや。」

ものすごく動揺してる♪
実際にはそのことが理由じゃないんだろうけど、今はこういっといたほうが良いだろう。
でも、外見が変わったってことは本人扱いしてもらえないということでもあるんだよね。
すっかり失念してましたよ。

「一応みなさんが生きていることに貢献してるんですし、僕の意思じゃないし、とやかく言われるのは嫌なんですけど。」

半目になって見つめてやると教師はすぐに目をそらせた。

「そ、そうはいっても他の生徒に示しが「校則違反をして染めろとでもおっしゃりたいんですか?」・・・・・・・・」

教師の言葉を無理やり侵食してやった♪
きっ持ち良い☆
ここの学校は髪の毛を染めることを禁止している。
つまり、この白髪が地毛である以上他の色にするのは染色になっちゃうんだよね。

「もう用はありませんね?失礼します。」

僕はあえて主導権をとって職員室から出た。
やれやれ、大変なもんだね。
教室に戻って全体を見回すと、本当に人数が少なくなったことがわかる。
でも、巨大怪獣が出てくる街にいつまでも残っている家族っていったい・・・・・・とか思ってもいる。
なんで残ってるのかな?

「鈴原!鈴原トウジはいるか?」

「あ、はい。」

「至急校長室まできなさい。」

僕は・・・・・・・・・・・・・残ってるじゃなくて残されてるって感じだね。

「シンジ・・・・・・?」

ケンスケがおそるおそるといった感じで問いかけてきた。

「そうだよ、まあ、普通の反応だね。」

「どうしたんだよ?」

あきらかにほっとした様子でさらに僕に尋ねてくる。
主語がないとよくわからないんですけど。

「エヴァに取り込まれちゃってね、出てきたらこうなってたんだ。」

「取り込まれる?」

「うん、原因は知らないけどコックピットには水を入れてるの知ってるよね?あれに溶け込んじゃうみたいなんだ。」

「それってヤバイんじゃないのか?」

「うん、良く戻ってこれたよね。」

あっけらかんと答える僕に何か感じたのかケンスケは話題を変えてきた。

「トウジの妹が交通事故にあったんだって。」

「あれ?エヴァの戦闘に巻き込まれて重症をおって入院中じゃないの?」

「比較的早く完治したみたいだぜ。だけど、前日事故にあって瀕死だってさ。」

「それはまた災難だね。」

「トウジも昨日まで見舞いにいってたみたいなんだよな。」

「そんなものだろうね。」

「トウジがさっき呼ばれたのもそれが関係してると思うんだけど、シンジはどう見る?」

僕はそういうことあまり興味ないんだけどね。

「給付金でもどっかからでたのかな?まあ、そんなところじゃない?」

「そっか・・・・・・・ところでさ、チョイと気になる情報を仕入れたんだけど、エヴァ参号機、アメリカで建造中だったやつ完成したんだろ?」

「僕には情報がこないからね、知らないよ。ケンスケのほうが良く知ってると思うよ。」

「そっか、ゴメン、変なことを聞いて。」

ケンスケは落ち込んだ様子で自分の席に帰って入った。
別に学校にいても良いことなんて何もない・・・・・・・・・・なんできたのだろう?







シチューを作ってレイを待ってたけど、全然帰ってこないから先に食べた。
ずいぶんと遅いな。
もう時計は22時を回っていた。
何かあったのか実験が長引いてるのか。
・・・・・・・・・・・・・・・心配してもどうしようもない。
会ったときに聞けば良い。
もう寝よう。
僕は剣の練習をほうりだして寝ることにした。
明日は帰ってくるのかな?







昼過ぎに僕はネルフに呼び出されてしまった。
まあ、機嫌も悪くないけど・・・・・・・・・・何か複雑な気分だ。
結局昨日レイが帰ってこなかったのはネルフに呼び出されてたんだな。
また葛城さんが交渉に来るのかと思ったけど、今日はなぜか父さんじきじきに交渉してくるみたいだ。

「シンジ。乗れ。」

・・・・・・・・・頭痛くなってきたよママ・・・・・・
いや、フランス人の真似して泣きいれてる場合じゃないね。

「嫌だ。以上。」

そろそろ来るかな?

「「乗るなら早くしろ、でなければ帰れ!!」」

うん、ばっちりと声がハモったね♪

「うん、帰るよ。」

「待ってくれシンジ君!碇、シンジ君を怒らせないでくれ。」

「冬月さん・・・・・・大変ですね。」

「シンジ君。わかってくれるかい。」

「はい、甲斐性なしの補佐ほどつらいものはないですよね。」

涙ながらに冬月さんに同意する。
父さん、あんまり冬月さんに迷惑かけないようにね。

「シンジ君こんか「今回の報酬は綾波レイをもらいます。」なのだが、そうか、レイが・・・・って!」

冬月さんが驚愕の表情を浮かべている。
ついでに父さんも。

「レイのオリジナルの母さんが戻ってきたんだ。もう用はないでしょ?だから僕がもらう。どこか問題ある?」

「シンジ君、人を物のように言うのは関心できないな。」

「物扱いしてるのは父さんであって僕じゃないんですけどね。」

きっぱりと言ってやる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「くれるの?くれないの?時間無いんでしょ?」

「しかしだね・・・・」

「いいだろう。」

「おい!碇!」

「問題無い。」

勝手にやってろ。

「くれるんだね?」

父さんのサングラスの向こうの瞳を見つめながら確認する。

「ああ。」

「僕がもらったら勝手に呼び出すのは許さないよ。僕を通してもらうよ。」

「いいだろう。」

「交渉成立ですね。」

僕が部屋の外に出たら中から話し声が聞こえてきた。

「碇、いいのか?」

「問題ない。いざとなったら3人目に変更するだけだ。」

・・・・・・・・・・・・僕が聞こえないとでも思ってるのかな?
・・・・・・・・・・・・・・・・きっと思ってるんだね。
さて、レイの自由を確保したし、楽しませるか。
・・・・・・・それよりも敵の殲滅が先だよね。




















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