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お父さんは僕をみて何を思ったんだろう?
僕はお父さんを見て何を思ったんだろう?
本当に僕はあの人と親子なのだろうか?
お母さんはどんな人だったのかな?
僕はいったい何がしたいんだろう?
僕は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何者なの?
『西区の住民避難、あと五分かかります』
『目標は、微速進行中』
『みんな聞こえる?』
使徒が出たせいでデータ持ち出したときの特権を発動されて僕は今、初号機に乗っている。
『目標のデータは送った通り、今はそれだけしか分からないわ』
相変わらず情報収集は甘いね。
『先行する一機が相手の反応を窺い可能であれば市街地への誘導も行う。よろし?』
『はい先生!先鋒はシンジ君がいいと思います!』
あの球体・・・・・・・・・・なんとなく可粒子砲を撃ってきた使徒を思い出す。
こいつの武器も射撃系なのか?
可能性は考えないといけないけど、先入観はできるだけ無いほうがいい・・・・・・矛盾だな。
「で?誰が先行するんですか?」
命令とあらばいきますよ。
『シンジ君、先行して!』
「了解。」
『お手並み拝見!』
はは、なんだかなあ。
『シンジ、早く行きなさいよ』
「わかってるけど・・・・・・」
ケーブルが延びきる。
どのビルが電源のビルだっけ?
施設の場所を頭にいれておかなかったからなあ。
『足止め、かけるわよ!』
射撃音・・・・・・・効果あるとは思えないけどね。
よし、このビルに配置されてたみたいだね。
『消えた!』
何?消えた?
さっきまで使徒がいた場所を見る。
確かに何もいない。
『きゃああああああああ!』
え?アスカ?
弐号機を見ると足元の丸くて広い影に飲み込まれていくようだった。
『嫌あああ!なによこれ!!』
『アスカ逃げて!』
つけたばかりのケーブルを切り離して弐号機のほうへ走る。
影に取り込もうとしているのか・・・・・・・・・・・・・ならば!
勢い良く低い角度でジャンプする。
弐号機を掴んで一気に引き上げてそのまま影の外に着地。
回収成功♪
『零号機、援護します』
レイがそういうと零号機がパレットガンを撃った。
僕も撃とうと構えたが、使徒の姿がまた消えていた。
「どこへ?」
すばやく周囲を見渡す。
『きゃああああああああ!』
レイ?
今度は零号機か!
弐号機を回収した要領で零号機も回収する。
零号機を抱いたまま間合いをジャンプしながらとって威嚇射撃をする。
また使徒が消えた?
瞬間移動とは便利な能力を持ってるね。
さっきからのパターンからして、次は僕の下か?
予想通り影が下に出現したが、予想できるということは対応できるということだよ。
(アインシュタイン起動。空間曲率制御開始。次元回廊発動)
影のすぐ上に空間のひずみを発生させてそのひずみに入る。
真っ暗な上も下もわからない空間。
『使徒に飲み込まれたの?』
レイが不安そうに聞いてくる。
「いや、僕が空間を無理やり捻じ曲げて回避した。でも、出れるのは三十分後だから内部電源が切れちゃう・・・・・・・・どうしよう?」
あっちの空間と一時的に切れるからケーブルがきれてしまうし、そもそも僕はケーブルを切り離してるし。
『生命維持モードがある。それにしてればエネルギーの減りを抑えれるわ』
「え?」
そんな便利なものあったの?
レイの指示通りに操作すると時間の表示が変わった。
「レイ、ありがとう。」
『・・・・・・・・・いえ』
もしかして赤くなってたりする?
それから出れる時間になるまでレイに赤木さんから聞かされなかったエヴァの使い方を聞いた。
「そろそろ時間だから気をつけて。」
あと20秒。
『わかったわ』
空間がはじけてビルがたくさん見える世界に帰ってきた。
すぐさま近くのビルから電源を確保する。
でも、よかった、数少ない知っている電源確保位置にいて。
『初号機、零号機ともに確認』
『シンジ君、レイ、大丈夫?』
「こちら初号機、大丈夫です。」
『こちらも、大丈夫です』
ドン!
すぐ近くのビルからミサイルが発射された。
何してるの?
次の瞬間足元に使徒の影が出現した。
「は?」
せっかく回避したっていうのに!
「レイ!」
とりあえず零号機を放り投げて影の外に出す。
そしてすぐさま影に手を突っ込みATフィールドを発生させる。
二体に分裂する使徒を弾き飛ばした要領で発生させているが効果が無いようだ。
くそ、脱出の手段が無い。
「くそお!どうにかならないのかよ!!」
思いつく限りのATフィールドの種類を作る。
楯状のもの、干渉して無効化しようというもの、物理的に効果を発揮するもの。
全部駄目だった。
どんどん飲み込まれていく。
「まだ・・・・・・・・死にたくないよぉ。」
右腕を空に伸ばしてそんな言葉を言う。
無線の向こうで息を呑む気配がした。
『シンジ君!!』
完全に飲み込まれたね。
「な〜〜〜んてね。」
とりあえずここでも、一通りATフィールドでの攻撃をしてみる、結果は同じだったけど。
「こんな最前線の兵器に乗ってるんだ、死を覚悟してないわけがない。」
内部電源に切り替わった、省エネモードにする。
モニターをつけているだけでエネルギーの減りが早くなるけど、別にかまわない。
外が見えないほうが今の僕にとっては嫌だから。
「・・・・・はあ、僕の命も短かったな。」
数ヶ月の命・・・・・・・・か。
結局、僕が碇シンジだって事以外思い出せなかったな。
モニター越しに使徒の内部をゆっくりと見渡す。
次元回廊にもにた空間が広がっている、が、どこか命を感じる。
透き通る闇というのはこういうのをいうのかな?
純粋な闇ではなくて、こういうなんというか見えそうで見えない闇が・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・そういえば、ビルはなんでミサイルを撃ってたのかな?
もしかして遅い情報収集をしていてそれに巻き込まれたとか?
信憑性ありそうだなあ。
役に立たないのに邪魔はするんだよね。
まあ、予想でしかないけど、
なんにせよ、することが無い・・・・・・・・・・・せめてこの世界でも変化があったらなあ。
おそらく周りには車やらビルやらがたくさんあるんだろうけど、光源がないせいで全く何も見えないんだよね。
・・・・・・・・・・・・・・取り込まれてからどれくらいたったんだろう?
なんか・・・・・・・眠くなってきた・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねえ・・・・・・そこにいるのは・・・・・・・誰?
君は僕に会いたいの?
君からはこれないみたいだね、僕から会いに行ってあげるよ。
(異邦人起動。リンク徴収、インプリュード発動。)
「君はだれ?」
”おいで、シンジ”
「知らない人にはついてっちゃいけませんって、お母さんからきつく言われてるのでいけません。」
僕はガキか!・・・・・・・・・ガキか・・・・・・・・そうだね。
”大きくなったわね、すっかり大人びて”
女の人、マナくらいの髪の長さで、全裸だ・・・・・・ついでに僕も。
「ここで何してるの?」
”あなたが来るのをまってたの”
それはそれは気が長いことで。
”あなたがここへ来るものはわかってた、もう何も心配はいらないわ。これからはずっと母さんと一緒よ、シンジ”
お母さん?この人が?まさか。
女の人が抱きついてきたので僕は拒否する。
「僕はあなたと一緒にいる気は全く無いので・・・・・・ごめんなさい。」
”あなたは充分がんばったわ。みんなのためにじゅうぶん戦って傷ついてきた。実も心もボロボロのはずよ。だからもう、もどらなくていいのよ、シンジ”
「・・・・・・・・・・・・僕も傷つくこともある、でも僕は自分のために生きてるからね、傷つくのはあくまでも僕のためだよ。」
自分を守るために作った理屈・・・・・・・・こっけいなものだ。
でも、確実にこの理屈は僕を守ってくれる。
”私にはわかってる、休んでもいいのよ”
休むことなんて僕は願ってないよ。
「それもいいかもしれないけど、まだいく気はないよ。」
”シンジ君、あなたはもうあなただけのものじゃないのよ。あなたはエヴァのパイロットなの、私たちはあなたに未来をたくすしかないの”
葛城さん?いきなりなに?
”そう、戦うのよ、今あなたを失うことはできないわ”
赤木さん?何言ってるの?
”そうだ、戦うんだ、逃げてはいけない。真実から目をそむけるな”
加持さん・・・・・・あなたには真実というのが見えてるんですか?
”戦うのだ。人類の存亡をかけた戦いに臆病者は無用だ”
お父さん・・・・・・・無用ならもうかかわらないでよ。
”戦うのよ!あたしたちは選ばれた特別な人間なのよ!!使徒をやっつけるのよ!!!”
アスカ・・・・・・・君が使徒を倒せばそれでいいじゃない。
”使徒を倒し、サード・インパクトから人類を救えるのはエヴァンゲリオンだけだ”
「都合のいいことを言ってくれる!」
この人たちのことを否定はしないけど、僕はこの人たちの言うことを聞くほどお人よしではない。
「不愉快だ、消えろ!」
世界が暗転した。
”なぜお父さんが嫌いなの?”
「嫌いじゃないよ。」
”寂しいってなに?”
「なんだろうね。」
”幸せってなに?”
「静寂、平穏、普通と言われていること。」
”やさしくされることじゃないの?”
「やさしさはいつか崩れる、他人に優しくするのは知らないうちに負担になるから。」
”ほら、わたしと一つになりましょう?”
「嫌だね。」
”わたしと一つになりたくない?”
「そうだよ。」
”それはとてもとても気持ちの良いことなのよ?”
「そんなのは僕が決める!!」
”わたしと一つになりたくない?”
「なりたくない。」
”心も体も一つになりたくない?”
「なりたくない。」
”それはとてもとても気持ちの好い事なのよ?”
「なりたくないよ!」
”””だからほら、心を解き放って”””
「なっちゃいけないんだよ!!」
”・・・・・・・・・・・・・あなたは、何を願うの?”
「僕は・・・・・・・・・・・・僕でいることを願う。」
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