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「じゃあ、前に使ってた部屋を使って。」

レイに荷物の整理を指示して僕は料理に取り掛かる。
ちゃんと荷物を整理したのか僕の手伝いをしにきてくれた。

「明日は・・・・・・・いつ行くの?」

「え?明日?」

学校に行く時間じゃないよね?どこかいく予定ってあったっけ?

「お母さんのお墓参り・・・・・・・・・」

僕が疑問に思って考え込んでいるとあっさり答えを教えてくれた。
でも、なぜそこで暗い顔をするのかな?

「レイのお母さんの墓参りに付き合ってほしいの?」

「違う、碇君の・・・・・・・」

僕の?・・・・・・お母さん?

「明日、僕のお母さんの命日なの?」

「・・・・・・忘れてたの?」

はい!きっぱりとわすれております!



「そっか、お母さんの命日か・・・・・・・・・・・・・」

お父さんも墓参り行くのかな?

「ねえ、お母さんの墓ってどこにあるかわかる?」

「ええ。」

「案内お願いできる?」

「・・・・・・・ええ。」

ますます暗い表情になちゃった。

「碇君はお母さんのこと・・・・・・好き?」

「さあね、ところでさ、碇君って呼ぶのやめる気ない?」

「え?」

「レイは僕に綾波さんって呼ばれたいの?」

「なぜ?」

「つまり、シンジって呼ばないのか?って聞いてるんだよ。」

「え?・・・・・・・・・いい・・・の?」

「そりゃいいよ、そうしてくれないと僕が困る。」

やられたらやり返す。
だから僕が呼び捨てにしてるのに向こう側が下手にでられるのはちょっとね。

「いい?」

「ええ。」

「そ、じゃあ、明日の案内よろしくぅ〜〜〜〜♪」

そういう会話をしている間にもう食事を済まして、入れておいた風呂に入ってさっさと自分の部屋に戻って眠りにつく。
レイがなにか怖がっているような表情を浮かべてた気がするけど、気のせいでしょう。





学校をサボって墓参りを実行したせいで花屋が閉まっていて花が買えなかった。
でも、コンビニで適当に食べ物を買ったし問題ないということにしておこう。

「へ〜〜〜〜、これ全部墓地?」

コンクリートの地面に棒が突き刺さっているのが墓石の代わりなんだろう。
レイは僕の問いに静かに頷く。

「花火でも持ってきたらよかったかな?」

「花火?」

「うん、花火って確かあの世から戻ってくるときの目印だったはずだからね。」

意味の無いことは知っているが、やっぱりノリは必要だろうからね。

「そう。」

レイの声には緊張の色が聞き取れる。
何をそんなに気にしてるのかな?
墓地を少し歩くと先客を見つけた・・・・・・・お父さんだ。
お母さんの墓参りだから来るのも当たり前か。

「お父さんも来たんだ。」

「シンジか。」

「そうだよ。冬月さんにでも見える?」

お父さんが供えたんであろう花の横にお供え物を置く。
花を用意してるなんて・・・・・お父さん、やるね。

「レイも一緒か。」

お父さんが少しいらついたようにレイを見る。

「案内を頼んだんだ。墓の場所を覚えてなかったから。一緒に来ちゃ駄目だった?」

「いや。」

明らかに駄目ですって感情を出してるけど言葉で否定してないので良いということにしておこう。

「お母さんってどんな人だったの?写真とかないの?」

「写真は無い。」

残念、お父さんのマイナス要素を補って標準のこの顔まで引き上げたお母さんの顔をみたかったんだけどな。

「どうして?もしかして捨てちゃったの?」

「ああ、この墓もただの飾りだ。遺体はここに無い。全ては心のなかだ。今はそれでいい。」

知ってる?死の認識を自己完結できたら墓なんて必要ないんだよ?

「写真ぐらい残してくれてもいいのに。僕の心の中にはお母さんはいないんだから。」

ちょっと拗ねたように言葉を出す。
本当のところはそんなことどうでもいいことなんだけどね。

「シンジ・・・・・・・・・・・・・変わったな。」

どういう意味?

「お父さんは僕の何を知ってるの?人格形成が始まったときにお父さんは僕の近くにいた?・・・・・・・・・お父さんは部下の人が調べた僕に関することが書かれた文字を読んだにすぎない・・・・・・違う?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

沈黙しているってことは肯定ってことだね。

「もう一度言うよ、あなたは僕の何を知ってるの?」

「・・・・・・・人はなぜかお互いを理解しようと努力する。しかし、人と人とが完全に理解しあうことは決してできぬ。人とはそういう悲しい生き物だ。」

「お父さんはそんな当たり前のことが悲しいって感じてるんだね。」

それは僕のことを何も知らないって思っていいんだね。
もう、こんな人に用はないや。

「どうだ?レイ。体の調子は?」

「あ・・・・・・問題ありません。」

「学校のほうはどうだ?」

「問題ありません。」

「そうか、ならばいい。」

それで意思の疎通ができるんだー、すご〜〜〜〜〜い♪
非常に業務的な会話をレイとお父さんがして、ヘリでお父さんはどこかへ行ってしまいました。

「・・・・・・・・・学校って気分じゃなくなっちゃった・・・・・・・帰ることにするよ。レイはどうする?」

「・・・・・・・・・・・・帰る。」

「そうか。」

歩き出した僕をレイはジッとみている。
何をそんなに観察しているのですか?
僕もレイを観察してみる。
レイは僕と視線が合うと少し赤くなって視線をそらしてしまったが、なんとなく僕の手を見ていたようだ。
勘違いだったらかなり恥ずかしいことになるけど、レイの手をとる。
レイは文句も言わずに手をつなぎ少し力をいれてきた。
正解だったみたいだね。






「アスカ、何してるの?」

学校をさぼってる僕が言えた義理じゃないけど、アスカ・・・・・学校は?

「あんたには関係ないわよ!」

確かに。

「ファースト・・・・あんたたちってそういう関係だったわけ?」

「どういう関係?」

もう昼か・・・・・・・お腹すいたな。

「なんで手をつないでんのよ!」

「・・・・あなたには関係ない。」

レイそれはケンカをうっているようにしか聞こえないよ。

「別に、なんとなくだけど、いけない?」

あっけらかんと言う僕に何かをいいたそうなアスカ、なんだかなあ。

「今から昼ごはんにするけど、アスカも食べてく?」

どうせ、葛城さんからはロクな食事をさせてもらえないだろうからね。

「・・・・・・しょうがないわね、そんなにいうなら付き合ってあげるわ。」

ほら、乗ってきた。
それよりもレイ、顔が少し怖いから睨まないでくれないかな?

「では、いらっしゃい。」

僕は自分の部屋をあけてアスカに向かってそういった。

「え?」

「普通他人の家に上がるときは失礼しますって言うんだよ♪」

なぜかアスカはプクっとしてぶっきらぼうに声を出した。

「失礼します!」

「ただいま。」

レイはアスカが入ってすぐにそういって入ってくる。
アスカがビックリしたようにレイをみて、レイはなにやら勝ち誇ったように笑みをこぼしている。
この二人って仲が悪いのかな?

「ちょっと待ってて、すぐ作るから。」

今日は簡単にチャーハンをつくるつもりだったから材料はあるし・・・・・あ、晩御飯の献立考えなきゃ。
少したって出来上がる。
レイが手伝いをするって言ってくれたけど、簡単なものだし、こういうのは一人で作ったほうが基本的に楽だったりする。

「はい、おまちぃ〜〜〜♪」

「へ〜〜〜、見た目はいいじゃない。」

「あ、お変わりは無いからね。」

お変わりが無い代わりに量は大目だから残すかもしれないけどね。

「・・・・・・・・・・く、くやしいぃ。」

何が?
アスカが恨み言のようにうめき声を漏らす。

「おいしい。」

レイからはお褒めのお言葉をいただいた。

「そういえばシンジさあ、アンタまだ報酬取ってるんですって?なんでよ?」

「どういう意味かな?」

「人のために生きるのもいいって私には言ったのになんで報酬なんかとってるのって聞いてるの。」

「ああ、他人に見返りを求めたくないんだよ。他人のため、聞こえはいいけど、それを実践したら必ず無理がでてしまう。自分のためと思えば助けた人がどんな対応を後でしたとしても傷つかないですむ。そう、自分はここまでしてやったのにと思わなくていい。だから報酬をもらうんだよ。自分のためにするためにね。」

アスカは唖然とした顔つきをしている。

「こんな答えじゃ駄目?」

それなりに考えたんだけどな。

「アンタなりの考えがあるなら別にいいわよ。」

ご承諾を承りました♪

「そういえばアスカは今は何のために乗るの?」

「みんなに認めてもらうために・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ふ〜〜〜〜〜ん。」

前と答えはかわらず・・・・・・か、でも顔が赤いぞ。

「前にも言ったかもしれないけど、自分で自分を認められればそれで言いと思うけどね。」

人はこういうのを余計なお世話という。
なぜかこの後アスカは晩御飯も食べていった。
気が向いたらまたこういうことをしてもいいかもしれない。







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