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あなたに女神エーヴェの祝福を・・・・・・・・・
そういって僕の唇を奪う。
僕は左手を胸に当てて額、左肩、右肩、額と右手を移動させる。
エーヴェに祈りをささげる時のおまじないのようなものだ。
一緒にいる時間は少ないけど、間違いなく強い絆でつながっている。
僕は彼女のことを思い出さないといけない。




ここのところマナは学校を休んでいる。
何をしてるんだろう?
それよりも、周りが騒がしくなってきたけどなんだろう?

「見て、窓の外。」

「なんやあれ?」

「軍のトレーラーだ。」

「後ろのアレ、人じゃない?」

「えらいこっちゃ!」

「人権問題だよ!」

僕も視線をそっちに向ける。
・・・・女の子?・・・・・あれは・・・・マナだ。
檻に閉じ込められている。
なんだか籠のなかの鳥といった風景だ。
僕が立ち上がり教室から出ようとしたときに意外な人物から呼び止められた。

「碇君、今は授業中。」

どこか不機嫌な声でレイが僕を制した。
こういうときはアスカが声をかけてくるものだと思ってたんだけどな。

「そんなこと、関係ないよ。」

僕はレイにそう言い返し教室を後にした。
外に出たときにはもう追いつけないほどに車は進んでいた。
あの方向は・・・・・・・・・・・大部隊のようだから方角さえ覚えておいたら見つけられるだろう。
まずは装備を整えに家に帰らないと。

「シンジ、どうするんだ?」

「ケンスケ・・・・・・・・・どうしたいのかをマナに聞く、その上でどう行動するのかを決めるよ。だからまずは僕が本気にならないと・・・・・家に一端かえる。」

「どういうこっちゃ?」

「トウジ、いちいち首を突っ込んでたらそのうちとばっちりが来るから自重したほうがいいよ。」

そういい残すと全力で走る。
I-ブレインは騎士剣を持つまでは温存しとかないと、疲労が大きすぎるから。




「まさか芦ノ湖とはね。」

マナを確認して近くの木々に隠れている。
ここに騎士剣を置いてマナのところに向かう。

「マナ。」

「シンジ!」

お〜〜〜、驚いてる驚いてる♪

「きてくれたのね、嬉しい。」

本当に嬉しいらしく目に涙がたまっている。

「どうしてこんなところに閉じ込められてるの?」

なぜマナがこんな目にあっているのか理由を知りたい。

「私は湖からロボットを誘い寄せるための囮だから。」

「囮?」

「パイロットの名前はムサシ、私の親友。私がここでおびき寄せれば国連軍だって無理はしないはずよ。」

この軍隊は国連軍なのか・・・・・それはいいとして、僕がマナに問うことはこんなことじゃない。

「マナはそのパイロットを助けたいの?」

「うん!」

「そう、マナ!君の願いは何?君は何を望む?」

「え?シンジ、どうしたの?」

「君の願いを叶えるよ、そのための力もある、君の願いを聞かせて。」

「何を言ってるの?」

要領がつかめないか・・・・・・・仕方ない。

「マナはそのロボットのパイロットを助けたんだよね、それで?マナは?マナ自身はこんなところにいたいの?望んでここに残るなら無理は言わないけど、望んでいないなら、君が動きたいのなら連れ出して僕がそのロボットのパイロットをマナの代わりに助け出す。これでどう?」

「できるの?」

「できるよ。」

だって僕は人間であっても人間では無くなってしまった存在だから。
・・・・・・・・・あくまで記憶の断片を信じたらの話だけど。

「助けてくれるの?」

「君が望めばね。」

マナがじっと僕の目を見つけている。

「・・・・・・・・お願い・・・・助けて・・・・・・・・」

「了解、騎士碇シンジはこの戦いを霧島マナのために戦おう。」

(情報解体発動)

ブレスレットを檻に当てて情報解体を加える。
檻は跡形も無く消え去った。

「シンジ、何をしたの?」

「ちょっとした手品だよ。」

何が起こったのか理解していないマナに冗談で返しておく。
ザッバーーーーーーーー
ロボットが湖の上に上がってきたみたいだ。
・・・・・・・リザードマン?
容姿的にはそんな感じだ。
まあ、陸に上がってくれるなら好都合だ。

(自己領域展開)

マナを抱き抱えて自己領域を展開して騎士剣を置いている場所に向かう。
マナはI-ブレインの魔法についていけていない様子だ。
騎士剣を握りさらに山を登る。
山の頂上付近でマナを離す。

(自己領域終了)

「僕を信じてここでまってて、じゃないとマナの命の保障ができなくなるからね。」

「シンジ、その格好・・・・・・」

「騎士だよ、僕の仮の姿。じゃあ、もう行くね。」

笑顔でマナの疑問に答える。
そして走る。

(自己領域展開。身体能力制御発動。運動速度、知覚速度、40倍で定義)

マナを運んでいた車に剣をつきたてて爆発させる。
これであとの調べで爆発によって死亡ってことにできるかもしれないから。
ロボットを睨みつける。
どこにコックピットがあるのかな?
どうでもいいか、そんなことは、情報解体の攻撃であらかた剥ぎ取ればわかるだろう。
跳躍してそのまま額に剣をつきたてる。
接触した瞬間、論理構造をハッキングし消去する。
あっけなく首の根元まで崩れ去る。
あ、パイロットらしき存在を発見。

(身体能力制御終了)

「君がパイロットだね?脱出するよ。」

自己領域の中に男の子を入れて同じ時間軸で話をする。

「誰だ!おまえは!」

ごもっとも、でも頭に血が上りすぎ、殴りかかるのはよくないと思うよ。

(身体能力制御発動。運動速度、知覚速度、3倍で定義)

横隔膜をほどよく刺激して脊髄を殴打しておく。
・・・・・・・・・・死んでないよね?
男の子を抱きかかえてコックピットを真っ二つに切り裂く。
情報解体によって切り口から砂のように崩れ去った。
マナが待っている場所に行く。
なんか下に降りようとしてる・・・・・・・僕って信用無いんだね。

(情報解体終了。自己領域終了)

「僕ってそんなに信用できない?」

「え?」

マナが歩みを止めてこちらに振り向く。

「ちゃんと待っててくれないってことは信用できなかったんだね。」

およよよよよ、っと嘘泣きをしてみた。

「え?もう終わったの?」

「もちろん、時を止める能力があったりするんだよね、嘘だけど。」

自己領域は時間の流れを遅くするだけ、約3000万倍の時間差を生み出し僕が普通に動くと客観的には光の速度の約90%ほどで動いているように見える。
ただ、それだけのこと。

「本当のことは教えてくれないんだね。」

「嘘は嘘って言ってるよ、ほかの事は本当のことだよ。まずは僕の部屋に行こう、そこで対策を立てよう。」

この作戦で二人が死んだことになってくれれば新しい戸籍を用意して・・・・・・どうやって用意しよう?
とりあえずは自己領域を展開してマナと背中の少年を僕の部屋に連れ帰ることにした。




「とりあえず、ベットで寝てる彼が起きたら状況説明を頼むね。僕じゃややこしくなると思うから。」

「うん、わかった。」

加持さんに連絡して、きてもらうことになってる。
加持さんが来てくれれば何とかなるだろう。

「できればマナあの男の子が死んでいるって誤解してくれれば手を打ちやすいんだけどな。」

じゃないと、わざわざマナを運んでいたあの車両を爆発させた意味がなくなってしまう。

「私は、この世にいない人になっちゃうの?」

「そういうことだね、その代わり自由を手に入れることができるよ。」

自由すぎるのも問題だとは思うけどね。

「・・・・・・・・ねえ、あの剣っていったい何なの?」

騎士剣のことだね。
まあ、疑問に思って当たり前か。

「あれは騎士剣といって騎士タイプの魔法士が装備するものなんだ。」

「魔法士?」

「そう、魔法士。頭の中に高性能のパソコンを埋め込まれた人のことを言うんだ。」

「シンジ君の頭の中にも入ってるの?」

「入ってないよ。」

「それって・・・・・・・・・・・・・・」

「僕のI-ブレイン・・・・・・頭の中のパソコンは特殊でね、情報の海という場所に存在して常に僕の脳とリンクしてるんだよ。リンクといっても切れることは無くて同じものが蜃気楼のように存在しているようなものなんだ。」

「シンジの話、難しいよ。」

「理解はできなくてもいいよ。僕もわかってるのかどうか怪しいんだから。」

夢の受け売りであって知識として頭に入っていることじゃないし。
ブレスレットは所詮簡易型だから同時に魔法を使うことは難しい。
騎士剣は専用武器だから同時に使うこともでき、高い能力を引き出すこともできる。
だからって、原理がわかって言ってることではなく、夢に出てきたことをそのまま実行しているだけだしね。
そこまで考えて僕は唐突にマナの首に手をかける。
ネックレスを探す・・・・・あった、ちゃんとつけてる。

「それより、お守りちゃんとつけてるんだね。」

マナは恥ずかしそうにうつむいてつぶやいた。

「シンジがくれたものだから。」

「そう。」

記憶に残る守護の呪いをかけてある。
つけている限り突発的に死ぬということは無い・・・・・・・・・と思うんだけど。

「大事にしてね。」

「うん。」

マナはそう答えてスッと僕の背中に手を回してそのまま顔を近づけてくる。
僕は近づいてくるマナの顔に手を置いて進行を阻む。

「見られながらキスするのって趣味じゃないんだよね。」

不満そうな顔をしているマナに指で今にも噛み付きそうな顔をしているパイロット・・・・・えっと、ムサシだっけ?・・・・・・がいることを伝える。

「ムサシ!」

「説明よろしく。」

マナに言っておいた説明役をまかせて、玄関まで来ている加持さんを迎えに行く。

「いつまでそこにいるんですか?」

「あ、ああ、いや、入るに入れなくてね。」

「すいません、鍵しまってるんですから入れるわけ無いですよね。」

「いや、それはいいんだが・・・・・」

なんですか?それって、入ろうと思えば簡単に入れるって事?まあいいけど。
加持さんをリビングに入れて要求と作戦会議をする。

「現状の確認をさせてください。マナとロボットのパイロットの扱いはどうなってますか?」

奥の部屋でマナとムサシの声がするけど・・・・・無視!!!

「とりあえずは死んだってことになっているが・・・・・・生きていたようだね。」

「はい、僕が助けました。死んだことになってるんでしたら新しい戸籍って用意できませんか?」
「なるほどな、シンジ君やるね、あの子たちに自由をあげようっていうことか。」

「はい。」

「シンジ君はそれでいいのかい?」

「?どういう意味ですか?」

加持さんはじっと僕の顔を観察して何を思ったのか困惑した顔をした。

「何ですか?」

「いや、なんでもない。」

ごまかしか・・・・・・・・いいさ、こっちもごまかすことがあるんだから。

「駄目・・・・・・ですか?」

「コンピュータをいじくれば簡単なんだが・・・・・そこまでいくのは難しいな。」

「・・・・・・・・・・・・それは駄目ってことですか?」

「まあ、そういうことかな。」

やっぱり見返りも無く動いてはくれないか。

「報酬としてマギの中に入っているデータを持ってきます。マギのデータを閲覧する権利を与えてもらってますからできますし、僕が引き出すので加持さんが怪しまれることはありません。ちゃんと僕が知りたいことも加持さんの要求に近いものも同時にしらべますから疑われないと思います。」

「それじゃ、シンジ君が疑われることになるぞ。」

「どうせ信用なんてありませんし、ネルフの人は僕に頼るしか脳がないんですし、大丈夫です。・・・・・・・・・・いいですか?」

「いいだろう。」

「交渉成立ですね。うまくやってください。」

深々と頭を下げる。
僕ってもしかしてお人よしなの?







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