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霧島マナ、彼女と会うと僕を思い出せる。
彼女とつながりがあるんだろうか?
彼女に特別な力があるんだろうか?
けど、何かが引っかかるんだ。
僕は碇シンジ・・・・・・・・これは間違いは無い。
でも、心のどこかで違うという声が聞こえてくるんだ。
もっと、もっと僕自身のことを思い出したい・・・・・・・・・・・
それがたとえ・・・・・・・・・僕の滅びへのいざないだったとしても・・・・・・・・





「そう、冷凍食品なのに肉なんだよね、人の肉の味に似せて作ってありますって開発者は人間の肉を食べたのか!って言いたくなるね。」

「その商品みてみたいな。」

ホントに見たいの?
そういっている間にやりあがったっと。

「へー、シンジ君料理上手♪」

「まあ、いつも作ってるからね。マナも下手じゃないんだね。がんばって。」

「ありがとう♪」

エプロン姿が似合っている人と似合っていない人が一目でわかる家庭科の授業。
マナは似合っている部類に入る、レイも意外に似合っている。
アスカは違和感ありすぎる。
スタイルが良い分日本人向けの服は似合わないんだろう。
ドレスとかはアスカは完璧に着こなして見せるだろうけど。

「わからないとこがあったら言ってよ。教えるから。」

・・・・・・・・あれ?もしかして先生に聞いたほうがいいのかな?

「ありがとう♪実は・・・・・・・エヴァのこと教えてほしいの。」

「エヴァのこと?別にいいけど僕はあまり知らないよ。アスカやレイなら良く知ってるだろうから僕よりも彼女たちに聞いたほうがいいと思うけど。」

僕は料理のことでわからなかったらって意味でいったんだけどな。

「シンジ君のことが知りたいの、だからシンジ君の口から聞きたいの。」

僕のことが知りたい・・・・・・・僕も僕のことが知りたい。

「エヴァの何が知りたいの?僕に答えられる範囲ならいいよ。」

「操縦ってどうするの?」

それってコックピット内はどうなってる?ってことかな。

「えっと、操縦桿が二つにペダルが二つ、あとは特殊なスーツを着こんで体の姿勢とかで動かすんだよ。」

「それってすごく難しくない?」

いかにもビックリしていますって顔してるね。

「そう、難しいんだよ。敵に攻撃を受けてその振動で姿勢が変わるだけで動いちゃうし、その不可抗力の動きで姿勢が保つのがすごく難しくてね。」

霧島さんは考え込むような顔になった。
何を考えてるんだろう?
でも、本気にしちゃったみたいだ・・・・・・嘘だってわかってよ。
僕は苦笑を漏らしながら霧島さんの誤解を解くことにした。

「冗談だよ、本気にしないでよ。」

「え?・・・・・・もうシンジ君ひどいよ。」

「ごめんごめん。」

これってもしかしてじゃれているように見える?

「ようシンジ、霧島とえろう仲ええやないか。」

トウジ、どうでもいいけど、なぜハチマキなの?

「そういうんはどんどんやれ!アスカがやきもち妬いてええ気味や。」

「アスカがやきもち?まさか。」

僕を好きになる人間なんていないよ。
そのときトウジの頭にフライパンが直撃する。
アスカの攻撃だ。
それにしてもよくフライパンの中の目玉焼きを落とさずに殴れるもんだ。

「痛いな!こんぼけ!」

「誰のおかげで地球の平和がまもられてるとおもってんのよ!」

「シンジをとられてくやしいんやろが!」

「な!なんですって!」

こうして見るとこの二人のやりとりも夫婦の痴話げんかに聞こえなくも無い。

「二人とも授業中だよ。」

テキパキと僕だけ作業を進める。

「あんたもエヴァのパイロットなんだから女とデレデレするのは禁止!」

「僕はパイロットってわけじゃないからOKだね。」

冷静に答えを返していけば可愛いものだ。

「そやシンジ!AもBもCも禁止じゃあ!」

「もっとも、キスくらいはしているでしょうけれど。」

人を視線で殺せたら、という視線を感じるのは気のせいではないと思う。
誰かというのが特定できない・・・・・・・・もしかして達人級?

「やめてください!私そんなんじゃありません!」

そんなんってどんなん?
話題の中心だと思われる僕が会話の流れに乗れてないんですけど・・・・・・

「じゃあ、なんでいつもシンジにべたべたなのよ!」

ベタベタしてますか?してます?してるかなあ?
なぜか冷やかしがギャラリーから聞こえてくる。
あ、視線が消えた。

「私、帰る!」

あら、でてっちゃった。
とりあえず追いかけようっと。





テニスコート裏って・・・・・・・ここが落ち着くの?

「アスカの言うことは冗談半分だって思っとかないと身が持たないよ。実験とかのせいでイライラしてるんだと思うし。」

「実験?」

「エヴァって発展途上だし操縦できる人間も少ない、だからモルモットの代わりをさせられてるんだよ。僕はそれが嫌で断ってるんだけどね。」

実際はそんなに嫌なものじゃないかもしれないけど、他人に主導権を渡すのはあまり面白いことではない。

「操縦方法が特別なの?」

「うん、さっき家庭科室言った感じじゃないけど、操縦は難しいと思う。そうじゃなきゃ世界で三人しか動かせないって言うのは伊達でしかないからね。」

「ペダルとか操縦桿とかで動かすんじゃないの?」

「レイとアスカはどうかわからないけど、僕はもうひとりの僕を精神内に作り出してそれとリンクさせて動かしてるんだ。」

「作り出す?」

今ひとつ要領を得ないようだけど、説明が難しいので省略。

「エヴァの秘密をもらしちゃいけないんじゃないか?」

「秘密だったの?」

ケンスケが背後から話しかけてきたのをちゃんと返すことができた。
なぜかアスカもきている。

「霧島さんも教室に戻っておいでよ。仲間はずれにするつもりは無いから。」

「いいんです。」

かたくなに拒否って感じかな?
とりあえずは静観ってところかな。

「シンジ。」

「何?」

「帰ったら話があるの、いい?」

「いいよ。」

「それだけ、じゃ。」

「おい、惣流!」

ケンスケとアスカが教室に帰ったのかな?

「なんだかなあ。」

「シンジ君。アスカさんと同じ家なんだ。」

「マンションが一緒なんだよ。」




「私、シンジ君といると迷惑なのかもしれない。」

「そう?ならあまり近づかないようにするね。」

「え?」

「だって、僕が近くに行くとマナに迷惑がかかるんでしょ?」

「違う!・・・・・・シンジ君が迷惑なんじゃないかって・・・・・」

「なら別にいいよ、僕は迷惑してないから。逆に感謝しているくらいだから。」

「え?」

「君の存在は僕にとって有益だからね。」

僕の記憶を取り戻す鍵を君がもっているかもしれないから。

「君は自由にしていればいいよ、したいようにね。」

「・・・・・・・・自由っていいね。」

しみじみと言うんだね。
実感がこもっているっていうか、説得力を持っている。

「私アスカさんのこと気にしてないから!」

「急にどうしたの?」

「ううん、なんでもない。はあ、私の自由もここまでかな・・・・・・・・・・」

僕にはここで言う言葉は持っていなかった。
僕は自分の首を絞めているのかもしれないから・・・・・・・・・・




ミサトさんの部屋ではなくてアスカが僕の部屋にきていた。
理由は簡単でゴミの山で話ができないからだそうだ。
どういう部屋になってるのかな?

「霧島マナはスパイよ。」

「それで?」

アスカの第一声は

「だからあの子のことは忘れなさい。」

「僕には関係の無いことのように聞こえるんだけど?」

会話をしながら夕飯を出す。

「関係あるでしょ?あんたはエヴァのパイロットなんだから!」

「僕はパイロットじゃないっていったでしょ?」

なんだろう?言いたいことを意図的に封じ込めて遠まわしにしか言えないという状況のようにみえる。

「エヴァのことを知りたいならアスカとかレイをターゲットにすると思うんだけどな。」

「あんたがチルドレンになるのを拒否してるのは内部事情でしょ!」

「それもそうか、マギには僕がチルドレンだってことになってるみたいだし。」

「だからもうあいつには近づかないで。」

ずいぶんと思いつめている顔をしているね。
何がそんなに心配なの?

「そういうわけにはいかないよ、まだ彼女は必要だから。」

含みを持たせて言葉をつむぐ。

「あの女に惚れたって言うの?」

弱弱しい声色。
なぜなきそうになってるかな。

「違うよ、霧島さんは僕にとって有益なんだよ。僕は記憶が無いって言ったよね?彼女はその記憶を呼び起こしてくれる。破格の人だよ。」

「じゃあ、あの女と付き合う気は無いってこと?」

「そうだね、少なくても今の状態ではね。」

は!料理が冷めてしまう、食べなくちゃ。
箸を進める。

「そうなんだ♪」

アスカはそういいながら上機嫌になって料理に箸をつけた。
これでアスカの話は終わりのようだ。
なんだったんだ?











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