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不思議・・・・・・・・・なぜ僕はアスカと一緒に下校してるんだろう?
いつも通りに授業が終わって掃除して、なぜかアスカが待ってて・・・・・・・・・
何か話でもあるのかな?と思ったけどまだ口を開いていないし・・・・・・・・
僕にどうしてほしいの?

「・・・・・・・なんであんたは弐号機を動かせたの?」

やっとモノをいったと思ったらそんな話ですか。

「エヴァンゲリオンの構造について何も知らないんだからわからないよ。」

動かせるものなんじゃないの?

「じゃあ!前の使徒が勝手に爆発したのはあんたが何かしたの?」

「何?前の続き?」

「あの時はみんなが聞いてたから話せなかったのよ!」

気づいてたんだ・・・・・えらいえらい♪

「なんのことだかよくわからない。」

いつの使徒のことなのかな?

「あんたは何もやってないのね?」

だからいつの使徒のことだよ。

「何のこと?」

沈黙・・・・・・・・・かなり長い。
別にしゃべらない状況は好きなほうだからいいんだけどね。

「最後の質問。」

生涯最後の?

「何?」

「あんたって何者なの?」

「記憶喪失だからわからないって言ったろ?」

「・・・・・・・・・記憶が戻るまで一緒に暮らす?」

それはプロポーズですか?

「一人のほうが気楽だから一人でいい。」

人と関わりあいになることは僕にとってプラスになるというわけではないんだ。
それにしても今日のアスカは変なことばかり口にするな。

「えっと・・・」

「最後の質問ってさっきいわなかたっけ?」

僕は意地悪っぽく言う。

「あんたって意地悪ね。」

「そうみたい♪」

お褒めのお言葉ありがとう♪ってとこかな?
そのあと、何の変哲も無くマンションに到着って!

「同じマンションだったんだ。」

今まで全然気がつかなかったよ。

「一応ミサトが保護者代わりらしいからミサトの部屋にお世話になってるだけよ。」

だけってことは無いような気がしないでもないけど・・・・・・まあ、いいや。
手で挨拶をしてそのまま部屋に入る。
もしかして僕が夜な夜な剣を振るために下に下りてる事に気がついてる?

「借りは返すからね。」

ドアの外からアスカの声が聞こえた。

「借りなんかあったっけ?」

「あんた、私を馬鹿にしてる?」

「そう聞こえる理由でもあるの?」

「もういいわ。」

いったい何を言いたかったんだろう?







ブオン!ブン!ビュン!ビュ!ヒュ!シュ!
一振りするたびに剣のスピードが上がる。
圧倒的な力のベクトルを理想的に操ることによって心地よいくらいのスピードになっている。
下手するとそのうち音速を超えてソニックブームがでるんじゃないかな?
その場での素振りから移動を加えた戦闘を想定した練習に入る。
知覚を全開にして視覚に反応するもの全てに気を配る。
必殺技とか・・・・・・・・あるような気もするけど覚えてない。
自分で作り出すしかないのかな?

ドオオオォォォォォン!!

街のほうで火の手が上がった。

「・・・・・・賑やかだね・・・・・・」

無視して練習っと。
何事も無かったので目標を決めてそこへ斬撃を繰り出す。

「なんで!非常事態宣言が発令しないのよ!ホントにこの国ってトロいんだから!」

アスカの声だ。
剣を下ろして声のしたほうを見る。
なぜ裸?

「敵?新手の使徒?もお!ミサトはどこをほっつき歩いているのよ。」

今日のところは大人しく部屋に戻るか。
僕の安眠を邪魔しないでね。





「今日は転校生が来るらしいぜ。」

ケンスケが情報を持ってきた。

「なに?転校生?なら、挨拶したらなあかんな。」

別にいいけどおせっかいではないかい?

「別にどうでもいいけどね。」

「つめたいな、シンジも転校生だっただろ?」

「付き合いがしたかったらあっちから話しかけてくるでしょ?君たちみたいに。」

・・・・・・・もしかして今、僕はけんか売る台詞を言った?

「きついやっちゃのぉ。」

トウジが苦い顔をして席に戻る。

「言うことは気をつけたほうがいいぜ。」

ケンスケも席に戻った。
やっと静かになった。

「起立!礼!着席!」

先生が来て委員長が号令をかける。
転校生は女の子みたいだ。
黒板には霧島マナと書かれている。

「きりしま・・・まなです。よろしくお願いします。」

「よろしゅう!」

トウジがそういうと笑いが起こった。
なんだかなあ、どうせなら全員でウェーブするとか・・・・・・

「はい、よろしく。」

いや、担任のあなたにいったわけではないと思うのですよ。

「霧島さんの席は碇君の横の席に座ってください。」

碇君っていきなり言われてもわからないだろうから手を上げる。

「ここだよ。」

席を指してパソコンを起動し始める。

「いかりくん・・・・・・・・ね?」

レイの声に似ている気がする。

「そうだよ。」

そっけなく答える。

「あはは♪可愛い♪」

その言葉に反応してフラッシュバックがおこった。
可愛いね♪
5〜10歳くらいの少女が僕をみて笑った。
銀色のような白い髪の毛に、白い目の可愛い女の子。
心拍数が上昇した。
今の顔の色は赤だと思われる。

「よろしくね、碇君。」

男子からひやかしの声が上がった。
なにやら怖い視線を感じているような今日この頃。

「くそ〜〜〜〜!なぜ碇の奴ばっかり!」

「のろってやる。」

「この世は不条理だ!」

なんて声もあるせいだと思われるが・・・・・・・・・・・
先生が授業に入った。
次の休み時間はちょっと気が重いな。






「担任の先生が優しそうな人で安心しちゃった。よかったら碇君の下の名前教えて。」

なぜか霧島さんは質問攻めに会わずに僕に話しかけてきて、周りに痛い目を向けられてる。
僕は別にいいけど、普通に学校生活したかったら僕にはあんまり近づかないほうがいいんだけどな。

「シンジ。」

でも、この娘どこかで見た気がする・・・・・・・どこだっけ?

「シンジ君ね♪本日私霧島マナはシンジ君のために午前6時におきてこの制服を着てまいりました。どう?似合うかしら♪」

・・・・・・・・・・・・・・・早口でしゃべる人だな。

「似合って無くは無い。」

似合っているわけじゃないけど、似合ってないわけでもない、きわめて普通です。
色素の薄い髪の毛、レイは薄すぎるけど。

「それって似合ってるわけでもないってこと?」

「うん。」

少しショックを受けたようだ。

「ねえ、この学校って屋上に出られるの?」

しかしすぐに持ち直したようだ。

「うん、出られるよ。」

「私シンジ君と一緒に眺めたいな。」

なぜ僕が集中攻撃されているんだろ?

「女の子なら誰でもいいって感じね。」

なぜか険しい顔というか恐ろしい顔をしてアスカが参戦。

「何か用?」

レイと同じような反応・・・・・・・・気持ちいいかも♪

「来たそうそうファーストネームで呼ばれるなんて、幼馴染かしら?」

やめなさいよ!
大丈夫?
マナはね、大きくなったら。

「あ、もしかして昔近所に住んでたマナちゃん?」

少しだけ昔のことを思い出せた。
先生のところに預けられて、いきなりいじめられているときに助けてくれた女の子。
そう、僕は間違いなく碇シンジだ。
やっと確証が得られた。

「え?」

霧島さんは驚いて時間がとまったようだ。

「ごめん、苗字を覚えてないから君かどうかはわからないけど、近所にマナって女の子がいた気がする。」

「ごめんなさい、たぶん私じゃないと思う・・・・・・」

そっか・・・・・・マナを探すたびに出るのもいいかもしれないな。

「シンジ君、屋上いこ。」

「うん。」

思い出させてくれたお礼にどこへでも行きましょう。





「綺麗ね。」

とくに珍しくも無いけど・・・・・・・・・・・雲が晴れない世界では青空を見ることは少なかった。
霧島さんといると記憶が結構戻ってくる。

「いい空だ。」

「違う、山よ、ビルの向こうの山、緑が残ってる。」

緑・・・・・・・・人が植えたものだろうから残っているという表現は間違っている気もする。
・・・・・・・・・・例のごとくなぜに盗み聞きされないといけないのかな?

「私ね、自分が生き残った人間なのに何もできないことが悔しい。」

「生きてるでしょ?それで充分だと思うけどね。」

生きるために生きる、それを理由で生きていたころもあったはずだ。

「そうかな?」

「そうだよ。」

ま、誰にもこの考えを押し付ける気にはなれないけどね。

「見て。」

そういって赤い光物のついたペンダントを出した。

「これは?」

「私がシンジ君に付けてあげるの。動かないで、くすぐったいけど我慢してね。」

「ちょっと待って。」

僕は霧島さんを制し自分の首飾りをとる。

「いいよ。」

霧島さんは不思議そうな顔をしたけど、取り付け作業にうつったようだ。

「ハイ、付けたわ。」

「ありがと、お返し。」

僕は自分が付けていたネックレスを霧島さんに付けた。

「僕のお守りだけど、お礼にあげる。」

「シンジ!ネルフ本部に行くのよ!」

アスカがなぜかそういってきた。

「これから訓練?がんばってね♪期待してるよ☆」

そう、僕がついていく理由なんてどこにもないから。

「邪魔して悪うござんしたね!」

そしてアスカは猛スピードで走っていく。
アスカ・・・・・・何をしたかったんだろ?

「シンジ君はネルフには行かないの?パイロットなんでしょ?」

「パイロットって誰から聞いたの?まあいいけど、僕はパイロットじゃないから行かなくてもいいんだよ。」

「え?」

何かものすごく予定外というリアクションだね。
何かたくらんでたりなんかしてます?

「僕は操ったことがあるだけで、パイロットにはなってないんだよ。」

「え?え?」

さらに混乱したようだ。

「エヴァって特殊みたいでね、乗る人間を選ぶみたいなんだよね。それで僕が乗れるからって乗せられたんだ。でも、アスカが日本に来たから僕は乗らなくてもよくなったんだ。」

「シンジ君はロボットに乗りたくないの?」

「好き好んで死に最も近い最前線にいこうとは思わないでしょ?」

霧島さんは困惑したように視線がきょろきょろしている。
今って授業中のはずなのになぜギャラリーがいるのかな?

「そろそろ教室にもどろうか?」

「え?・・・・うん。」

青い空・・・・・・・・・・これは当たり前であっても当たり前ではないもの・・・・・




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