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「僕がいなくても良かったんじゃないですか?」

弐号機が宇宙服を着てつられているとこを見ながら葛城さんに問う。

『エヴァを二体以上用意しなくちゃ捕獲は駄目って言われたから。』

さいですか。

『サード!私が使徒を倒すところをしっかり見てなさいよ!』

いや、今回は捕獲でしょ?

「任務達成を心待ちにしてますよ。セカンド殿。」

『くっ!馬鹿にして!』

いや、してないから・・・・・

「ところで上の飛行機はなんですか?一定距離で旋回しているみたいですけど。」

なんか攻撃するぞ!という気迫を感じていい気分はしない。

『UNの戦闘機よ。』

『何のために?』

葛城さんの説明にアスカが疑問を投げかける。
ほんと、何のためだろ?

『失敗したときの後始末のためね。』

後始末?

『後始末?』

アスカも僕と同じことを思ったようだ。

『爆雷で使徒を殲滅するのよ。』

『私たちごと?』

葛城さんの答えにアスカは驚いているようだ。
後始末は大事だよ・・・・だけど・・・・・・

「爆雷で使徒を殲滅できるんなら、はじめからしてほしいものです。」

できてたら僕はこんなものに乗らなくてもいいんだよ。

『まあ、できないでしょうね。』

「つまりあいつ等は僕たちを殺すために用意しているわけですね。」

『な!!』

『・・・・そうね、でも、失敗しなければいいのよ。』

しばし沈黙。

『・・・・・・・・・・それもそうね。』

ま、別にいいんだけどね、どうでも。

『アスカ、準備はいい?』  

『いつでもオッケーよ。』  

アスカの声と共に、弐号機を吊ったウインチが、カラカラと音を立てて降りていく。
準備はいい?って、準備してるのは外の人たちでしょうに、報われないね。
 
『あっつそ〜〜〜。』

溶岩なんだから冷たかったすごいね。
新発見だ!常識が覆される瞬間だね♪

『現在、深度70、沈降速度20、各部問題なし。視界0・・・・・・何も分からないわ。』  

『CTモニタに切り替えます。』

『深度400、450、500、550・・・・・・・・』

こっちからでは全然わかりません。

『地震観測所の観測機も、特に新しい情報はキャッチしていません。』  

『そう・・・・・・やはり目標深度まではいくしかないようね。』  

目標深度ってどこまで潜るのさ?
僕は何をすればいいの?
何もしなくていいならそれもいいんだけどさ。

『アスカ、暑い?』  

『天然サウナね。痩せていいわ、こりゃ。』

サウナ・・・・・給水はしたほうがいいよ。

『余裕があるようね〜。』

余裕って言うよりやせ我慢っていわない?  

『あったりまえでしょ! 誰だと思ってんのよ!アタシを!』  

『はいはい、期待してるわ、アスカ。』  

『任せなさいよ、そこのサードより私のほうが役に立つわよ。』

僕が役に立つ?冗談じゃない。

『深度1020、安全深度オーバー。」

つまりココから先は安全じゃないってことね。
ほんとに命がけだね。
何が君をそこまで歩かせる?
自分は死なないとか考えてるんじゃないだろうね?

『ピシ。』

何の音?

『大丈夫なんでしょうね。リツコ。』

『理論上はね。』  

ねえ、何の音?

『何よそれ。』  

『何があるか分からないのは確かよ。それを否定する気はないわ。』  

まあ、正しい見解ですね。  

『やめる?』  

『冗談。』

冗談を言ってる場合じゃないでしょうに。

『使徒、発見!』

『計算より浅いところにいたわね。』

『アスカ。用意はいい?』

『オッケーよ。』

僕の出番全然ないんだけど。

『使徒、予測軸線に入りました。』

なにやら音がする。
こっちに映像を送ってくれないんだもんな。
全然わからない。

『使徒、捕獲成功です。』

『何とかなったわね。』  

『ま〜ね〜、まだ気は抜けないけど。』

司令部に気を抜かれたら前線の人間が困るよ。

『ミサト・・・・・・あなたも不安だったんでしょう?』  

も? 

『そりゃね・・・・・・さっきリツコも言ってたけど、セカンドインパクトはイヤよね。』  

『そうね・・・・・二度とゴメンだわ。』

『それに・・・・・・シンジくんをココに呼ぶ必要も無かったようね。』

「あくまで保険だったんでしょ?セカンドという優秀な駒があるんですからもう僕を呼ぶのは勘弁してもらえますか?」

『私の名前はアスカよ!惣流・アスカ・ラングレーよ!』

君には何も言ってないよ。

「そう、じゃあ僕のこともサードって呼ぶのはやめてもらえる?」

『・・・・・・・・・・・』

『使徒に変化!』

『ちょっと!なによこれ!!』

『孵化が・・・・・・・・始まったの?』

・・・・・緊迫しているみたいだな、話している状態じゃなさそうだ。

『捕獲中止!キャッチャーを破棄、作戦変更!』

『了解!キャ!!』

『使徒、弐号機に接触!弐号機プログナイフをロスト。』

え?失くしたの?
初号機のナイフを取り出し火口に投げ込む。

「双竜・アスカ・ラングレー!ナイフを送る!」

『あ・・あんたの助けなんて要らないわよ!』

「そういう言わないでよ、もう落としちゃったんだから、受け取ってもらえなかったらもったいないだろ?」

『・・・・・・わかったわよ・・・』

『弐号機の引き上げ急いで!』

『速い!』

どんな形状の使徒なんだろう?

『このままではD型装備が持ちません!』

『いや!来ないで!早く来て〜!』

来てほしいのほしくないの?どっちなんだろ?いや、わかってますよ?

『そんな、この環境化の中で口を開くなんて・・・・・・』

予想しとけよ。
・・・・・・無理か・・・科学者には特に。

『アスカ!なんとか振りほどくのよ!このままじゃ、D型装備がマグマの圧力で潰れるわっ!』

エヴァは?D装備は駄目でもエヴァならどうなのさ?

『やってるわよっ!』

『初号機のナイフ、あと5秒で弐号機に到達します!』

意外と早いな。
投げ入れたときの力が強かったか?
ちゃんと受け取れるのか?

『これさえあれば!こんのおおおおおおおおおお!!!!』

すごい、ちゃんとキャッチしたみたいだね、それにしてもすごい声を出すね。

『高温高圧の極限状態に耐えてるのよ。プログナイフじゃ駄目だわ。』

『じゃあどうしろってのよ!』

どうするの?僕ならどうする?
I-ブレインに頼る?
だとしてどうやって倒す?
自己領域は駄目だ、エヴァが動かなくなる。
身体能力制御は・・・・駄目だ、吊られているから移動できない。
情報解体・・・・駄目、ハッキング距離に無い。
チューリング・・・・これでマグマの手を作って使徒を押さえつけることができるけど、マグマにとてもじゃないけど生身では触れない。
マクスウェル・・・・氷、炎、電気・・・・・氷・・・・いつも使う水蒸気爆発。
熱を戻さなくても周りの熱で勝手に爆発してくれるし、使徒の内部で氷槍を発生できればそれだけで決着はつく。
マグマの中に潜るんだ、冷気供給はしているはず。

「双竜・アスカ・ラングレーさん。熱膨張って知ってる?」

『は?当たり前でしょ!それにこんなときに何言って・・・く、なるほど、このおおおお!!!』

『熱膨張・・・なるほど、冷却液の圧力を3番に集中させて!早く!!』

空白の時間・・・・・結果は?まだなの?

『使徒殲滅確認、二号機のライフラインの切断を確認!』

それって弐号機は回収されなくて落ちてつぶれるしかないってこと?

『せっかくやったのに・・・・・・やだな、ここまでなの?』

そのアスカの言葉に僕の中の何かが動いた。

「葛城さん聞こえてるね。1分時間を与えます。その間にココに来たときのヘリで逃げてください。」

I-ブレインで時間を確認する。

『何?何をする気なの?』

「早くしろ!死にたいんだったら別だけど。」

『!!!避難開始!時間は1分!急いで!!』

それでいい。

『ちょっと!私は助けてなんていってないわよ!あんたに助けられるなんて迷惑よ!』

「うぬぼれるなよ。死ぬなら勝手に死ね!ただし、僕のわからないところでな!」

(目標設定完了)

二号機に反応するように設定する。
ちらりと葛城さんたちのほうを見る。
あと10秒、非難はあと20秒もあれば飛びたっているだろう。
この人たちは生きてるのかな?
運がよければ生きているだろうな。

「ATフィールド!!!」

棒状のATフィールドを火口に向かって突き刺す。
そしてATフィールドを膨張させてマグマに空洞をつくりそこに飛び込む。
マグマを沈んでいくよりも空気抵抗のみで落ちていったほうが断然速い。

(目標物確認、あと2秒後に接触)

肉眼では確認できないが近くにいるんだろう。
ATフィールドを解くとマグマに満たされる。
熱い・・・・が、圧力自体には耐えられているようだ。
ATフィールドで全身を固めてもいいがそれだとまた自由落下をしてしまう。
I-ブレインを頼りに二号機を探す・・・・掴んだ!

『あんたどうやってきたの?それよりも一緒に死ぬ気?私は嬉しくないわよ!』

「誰が死ぬもんか!」

(マクスウェル起動。エントロピー制御開始。『氷槍』起動)

マグマの中で形成された氷の槍はすぐにマグマの熱によって膨張し爆発する。
その爆発はマグマの中から初号機と弐号機を追い出す。
脱出成功。
だが、その代償として噴火させてしまった。
ここらへん一帯の人たちすみません。

『あんた何をやったの?あんた何者?』

そんなことは僕が聞きたいよ。
とりあえずは・・・・

「ただの馬鹿者。」

とでも答えておこう。





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