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僕は思い出していた。
何千万人の人々を犠牲に一人の女の子を守った男の子のことを。
君が死ななきゃみんな助からないのかもしれない。
もうどうしようもなくて、世界を守るには君が死ななきゃならないのかもしれない。
それは仕方の無いことかもしれない、でも、仕方が無いって言いたくないから人間は戦うんじゃないかな?
僕は諦めたくない、ここで諦めたらきっと、世界を良くするなんてできない。
もしかしたら、何をしてももう駄目なのかもしれない、もうどうしようもないのかもしれない。
けど、もうちょっとだけがんばってみようよ。
そういって、一人のために多くの人を犠牲にした。
なぜこんなこと思い出したのかというと・・・・・・作戦前の葛城さんの発言にあった。
僕がシャワーを浴びて更衣室からでると葛城さんがいた。
回収班の人が次元回廊に閉じ込めていた可粒子砲を喰らいかけてパニックになったりしたけど、それはまた別のお話かな。
この人、上の人なんだから忙しいだろうに何でこんな少年に時間さいてるのかな?
こっちとしては都合いいけど。
「シンジ君、報酬はジェノサイ○の情報だったわね。なぜこんな組織の情報がいるのか聞かせてもらってもいい?」
「興味です。京都で世話になった人がお世話になったからちょっと御礼しようと思いまして。」
「鈴木という人ね、シンジ君。第三東京をあまり離れないほうがいいわよ、あなたはサードチルドレンとして他の組織に狙われているの。」
「サードチルドレンになりませんってば。登録されてるなら抹消しといてください。」
「ネルフでは登録はしてないんだけど、他の組織はそうは思ってはくれないのよ。」
「ふ〜〜ん、まあ、鈴木さんのことを知ってるんならジェノサイ○の情報も期待できますね。期限は一週間、守ってくださいね。」
「シンジ君。正式にエヴァのパイロットになってくれない?報酬は出すわよ。」
やっぱりこういう話がでてきたか。
「お断りします。僕は縛られるのは好きじゃないのですし、傭兵を気取ってますから、自由に、気ままに生きていきたいんですよ。」
「シンジ君。あなたの我がままで人類の危機に迅速に対応できないのよ。数時間遅れるだけで何人死ぬかわからないわ。」
葛城さんが人の命を出してきた。
この人がここにいるのって説得訳?はっきりいって役不足だな。
「じゃあ、さっさと他のパイロットでも探してきてくださいよ。僕をあまり巻き込まないでください。」
エヴァに乗るのから離れていたいって希望があるんです。
あ、そういえば聞いていないことがあったな。
「そういえば、さっきの作戦中に日本中のエネルギーをあなたに預けるって言いましたよね?あれってどういうことですか?」
出撃のときに疑問をもった問いを聞いてみる。
「え?ああ、あれはね、使徒のATフィールドを中和せず、高エネルギー収束帯による一点突破するために日本中のエネルギーを集める必要があったのよ。」
ちょっと得意になっている顔をしている・・・・この人は子供ですか?
「それはわかりますけど、そのエネルギーって?」
非常に悪い予感がするんですけど・・・・・・・
「ああ、日本のエネルギーっていうと電気くらいしかないでしょ?」
やっぱりか。
予感的中っていうのはこの場合は嬉しくないな。
「日本中の電気を集めたってことは、その間の日本はどうなっていたんですか?」
「もちろん停電してたけど?」
それがどうした?とでも言いたげな顔をしている。
頭がクラクラしてきた。
「そうですか。」
どっと疲れた。
本当に気づいていないみたいだから説明したほうがいいかもしれないけど・・・・なんだかなぁ。
「何?それがどうしたの?」
「本当にわかってないんですね。日本中が停電するって意味。」
怪訝な顔をしている。
本気でわかってないんですね。
「だからどうしたってのよ?」
葛城さんが聞いてくる。
「いいですか?日本の電気を集めたんでしょ?だったらあの使徒の殲滅でたくさんの人が死んだってことなんですよ。」
「なんでよ?」
葛城さんは眉をひそめて説明を促してくる。
「本当にわかってないんですね。電気が止まったってことは医療器具も止まったってことですよ。人工呼吸器なしで生きれない人はまず間違いなく死んだんですよ?復旧途中の地域では自家発電できる病院なんて数えるほどしかないでしょうから三桁くらいの人は死んだんじゃないですかね。」
葛城さんが明らかに真っ青な顔になった。
「で・・・でも、それは使徒を倒すには必要なことだったから・・・・。」
弱弱しく反論してくる。
この程度で揺れ動く程度の覚悟でこんな仕事してるんだ・・・・・
「はいはい、わかってますよ。ネルフは使徒を倒すためのところであって、人を守るのが目的じゃないですからね。僕はそんなこともわかってないで作戦を実行する人がただ嫌だなあって思っただけですよ。」
皮肉をたっぷりまぜていやみったらしく発言してみる。
他人の・・・・・いや、すべての命なんて知ったことじゃないんだけど。
なぜ僕はこんなにもいらついてるんだろう?
葛城さんはすっごく落ち込んだみたいだ。
それでもなにやらCDを差し出してきた。
「報酬はこのディスクよ。もうあの組織の情報はネルフにはあったのよ。」
すっごく意表をつかれた。
頭をかきながらディスクを受け取る。
「あ、家にパソコン無いのでここで見て言っていいですか?」
「いいわよ、」
葛城さんは撃沈していて、そのままどこかにいってしまう。
どこにパソコン室みたいなところってあるのかな?
そこいらにいる人にでも聞こう。
「あの、この建物の中にCDのデータが見れる場所ってどこですか?」
「え?あ〜〜〜〜、それならね。」
ん?帽子かぶってる・・・・・この人に見覚えが・・・・・・あれ?思い出せないや。
たいしたことじゃないだろうから気にせずにいこうっと。
「ありがとうございました。」
とりあえず教えてもらった通りに道を進むと・・・・・・・・
作戦司令室に出た。
確かにここならみれるだろうけど、こんなとこに民間人がきちゃまずいでしょう。
さっきの人って何者だよ。
「あの、このCDのデータみたいんですけど・・・・・いいですか?」
オペレーターらしき人(出撃の時の通信で顔は覚えていた)に聞いてみる。
「え?シンジ君?どうしてここに?え?」
あたふたと子供みたいにあわてるオペレーターさん。
「葛城さんにここでCDのデータを見ていきなさいって言われたもので・・・・いいですか?」
やっぱり、上司の言葉には逆らえないだろうと思い口からでまかせをいう(でまかせだが完全な嘘ではない)。
すると予想通りの反応を返してくれた。
「え?葛城一尉の?いいですよ。これですか?」
そういうと僕からCDを受け取り再生してくれる。
もしこれがウイルスなら汚染されるぞ・・・・・・・・・・・・。
なんの疑いもないなんて、この人は世間を知らないと見える。
「はい、これでいいですか?」
「あ、ありがとうございます。」
そんな僕の思惑とは別にオペレーターの人は話を進めてくれる。
「これってなんなんですか?」
「僕の今回の報酬ですよ。」
ジェノサイ○・・・・ふざけた名前の組織。
京都で世話になった人のお店を燃やしたと思われる組織。
このCDによるには組織の詳細な情報が入っていた。
予想以上だ。
「報酬・・・・シンジ君には私たちすごく助けてもらったものね。」
「そうなんですか?自覚ないですけど。」
自分のためにしか行動してないしね。
それが結果的に人のために成ったというだけに過ぎない。
「とりあえず愛知に行かないと・・・・・・・。」
「組織に接触するの?」
「はい、ジェノサイ○は滅ぼしますから。」
驚いてる驚いてる♪
「僕を敵に回したんです。唯じゃすまないことを教え込んでやる。でも、教えを守ることはできないけどね。」
ニッコリと笑って言う。
オペレーターの人はちょっと青ざめている。
この中の情報は記憶した。
もういいな。
「ありがとうございました。それでは。」
僕はさっさとこんなネルフ本部を後ににした。
もうちょっと警戒態勢練らないといけないと思うぞ。
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