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あたり一面にウィンドウが開いている。
それら一つ一つを確認して閉じていく。
文字なのかどうなのかもわからない羅列、それを自分は理解している。
丁寧に整理していく。
0と1の世界で自分が自由に移動できる自分が普通だと思える。
違和感がまったくない。
まるでこの世界を征服している論理を支配しているようだ。
現実を侵略するあっちの世界ではなく現実とともにあるこの世界。
時に精神世界といわれるここはとても平穏でやさしく僕を包む。





頭が痛い
布団もかぶらずに眠ってしまったらしい。
だるい。
今何時だろう?

ピンポンパンポーーーン

7時半か・・・・・・

ピンポンパンポーーン

・・・・・・・・・この近くにデパートなんてあったっけ?

「シンジ君。いないの?」

おい・・・・・・・・・・このマンションのインターフォンの音かい!
おしゃれすぎるぞ!!
すごくつらいけどドアを開ける。
軽率だけど今は思考能力も低下しているのでしかたがなかった。

「シンジ君。ちゃんと学校に行ってくるのよ。って、どうしたの?大丈夫?」

大声ださないで。死にそう。

「大丈夫ないです。それじゃ。」

そのまま引っ込む。
布団の中に入ってブレスレットをとって寝る。
どれくらいたっただろうか?チャイムがなった。
そのまま動かずにいたら鍵をかけてるはずなのに誰かがはいってきた。

「シンジ君。カレー作ってきたから食べてね♪」

葛城さんのようだ。
なぜご飯を作ってくるのかな?

「ありがとうございます。そこにおいといてください。」

「ほらほら、はやく。」

聞く耳もたないようだ。どうしようもない。
しかたなくテーブルにつきだされたカレーに手をつける。
色が真っ黄色のような気もしないでもなかったけど、気にする余裕はなかった。

「いただきます。・・・・・・・・・・・ぐは。」

不覚にも口から物体を吐き出しつつ意識が途絶えてしまった。
ただのカレーのなのか?恐るべし。





知らない天井だ・・・・・・・・・

「ここは?」

起き上がる。どうやら病院のようだ。
誰かが部屋に入ってきた。

「あら、起きたの?」

「赤木さん?ここは?」

「ネルフの病院よ。それよりも、どうしたの?ひどいショック症状がでてたわよ。もう少し手当てが遅れてたら確実に死んでたわ。」

そういえばなんで倒れたんだっけ?
えっと。。。。。。あ。

「葛城さんの料理を食べた気がします。」

「なるほど、そういうことね。」

何かメモをとりながら納得する赤木さん。

「あの人の料理って、周知の事実だったんですか?ほんとに死に掛けたんでしょ?危ないなぁ普通の兵器よりこわいじゃないですか。」

「確かにそうね。」

すかさず同意してくれる。
いや、しゃれになってないし。

「どれくらい寝てたんですか?」

これが気になる。

「2日眠っていたわ。」

「そうですか。ありがとうございます。それで入院費のほうは口座から勝手にひきだしといてください。」

そういって起き上がる。
大丈夫、いける。

「あら、もう退院する気?もう少し入院してる必要あるのだけど。」

「いえ、お金かかることをあまりしたくないですから。」

「検査されるのが嫌なんじゃないの?」

何かを探るように僕の顔を見ている。気味が悪いです。

「そうかもしれませんね。では、ありがとうございました。」

頭を丁寧に下げて部屋をでる。

「きっと正体を掴むわよ。」

後ろでそんな呟きが聞こえたが、そんなことは僕がしりたかったので反論しないことにして、さっさと進む。





翌日、僕は京都に来ていた。
記憶さがしに前に住んでたところにいくはずがどうにもわからない。
記憶喪失だってことを隠してるので誰かに聞くわけにも行かなかった。
そこで急遽(なぜか)、京都観光に目的を変更したのだ。
まだ試してないがI−ブレイン用の道具もつけてるし、金もある。たいていのことならどうにかなるだろう。
さすがに第三東京よりも人が多い。勧誘も多い。道を歩くのにも一苦労だ。
お腹も多少すいたところでしゃれた(?)お店にはいる。

「いらっしゃいませ。これがメニューです。」

ざっと目を通す。

「トマトソースのスパゲティで。」

ウェイトレスの人が退散する前に注文する。
注文を受けたウェイトレスが引っ込んでいく。
ここは結構人の出入りが多い割りにお店に人が少ないような・・・・・・あ、地下に入ってく。
何か地下にあるのかな?
注文の品をもらい食べ終わったころにちょっと大柄で人のよさそうな顔をした男の人が声をかけてきた。

「君、地下のイベントに参加してみないかい?」

怪しい!露骨に怪しい。

「イベント?何かやってるんですか?」

「やってるんだよ。見ないと損だよ。5000円とるけど絶対みないと。」

「内容は?」

「トークショーの類だね。参加していかないかい?」

ちょっと興味はある。とにかくお金はあるし。詐欺だったら裁けばいいだけだしね。

「いいですよ。」

「よし、ついてきて。」

地下の場所は見えてるんだけど着いてきてという・・・・・・迷うのか?
階段を下りると装飾が施されている扉があり、その中から声が聞こえてくる。

「ここでお金もらえるかな?」

「先払いですね。いいですよ。いやだったら勝手に出て行っていいんですよね?」

「声はかけてね。ありがとうございます。」

店員さんだったのか・・・・・・・・・・まんまとひっかかったな。
まぁ、どんなトークショーなのか・・・・・・・・
扉を開くとそこは・・・・・・

「無い乳は乙女の最強の武器なのですよ〜〜」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「かなり狭い範囲やけどな。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
はっ!しばし意識が吹っ飛んでしまった!
何かわからないコスプレをしている人々。
それはいいとしよう、だけど、オジさんがどうみても中学生以下の女の子の服を着るのはどうかと思うよ。
そう、扉を開くとそこは、イタい世界だった!

「はい、この服着てね♪」

さっきの男の人がいつの間にか服をもってきていた。
その服は明らかにメイド服に猫耳というその世界の人でも女の子が着る服だった。
なによりこの人の顔が言い表せないほどににやけている。

(デンジャー!!!デンジャー!!!!!すぐにその場から退避せよ!!!!!!!!)

わかっている!
I−ブレインが起動の知らせもなしに危険を知らせてくる。
本能も逃げる準備をしていた。

(光速度、万有引力、プランク定数、取得。自己領域展開!)

自分の都合のいい世界を自分の周りに作って移動する。が!

「まぁ、まぁ、そんなにあわてないで、遊んでいきなよ。せっかくお金払ったんだからもったいないでしょ?」

おっさんに捕まってしまった。
どうやら範囲内におっさんも入っていたようだ。

「まぁとりあえずこれ着て、ね?」

(自己領域終了)

周りの空間が普通の流れを取り戻す。
おっさんはすでに僕の服を脱がしにかかっている。

「いやだあああああああああああああああああああああああああ!!!」

必死の叫び。
精神が支障をきたしたせいのかI-ブレインが反応してくれない。
平均よりやや劣る肉体の僕ではこのおっさんをどうこうできるだけの攻撃もできない。
た〜〜〜〜〜す〜〜〜〜〜〜〜〜け〜〜〜〜〜〜〜〜て〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
声にならない叫びも出す。

「離してあげな。嫌がってるだろう。」

立派なひげを蓄えたおじさんが止めに入ってきてくれる。
でも、このおじさんもこの異様な集団に属している人間なのだから油断はできない。

「あ、先生・・・・・はい、わかりましたよ。でも似合うと思いませんか?」

「似合うだろうが嫌がってる人に無理やりはいかんな。」

ほらあああああ!やっぱり異様な人だああああああ!
男の人が上に上っていく。
なんとかあのおっさんからは開放されたようだ。

「大丈夫か?」

「え・・・・・・・・・あ、は、はい!ありがとうございます。」

とりあえず助けてもらったのだからお礼は言っておく。だがまだ油断はならない。
するとおじさんが。

「ここは嫌だろうから私の店にでもいこうか。」

は?
さっき先生って言われてなかったっけ?お店?
とりあえずここからは脱出したいからうなずく。
店をでてすぐにおじさんは僕にむかってまっててくれと言って知り合いらしき人に向かってどこから出したのか巨大な石を投げつけた。
巨大な石は知り合いらしき人にぶつかるルートにあったがいきなり進路を変更してしまった。
知り合いらしき人が手刀で打ったのだ。
通行人が血を撒き散らして倒れていくのが見えたような気がしたがきっと気のせいだろう。
あっけにとられる僕をよそにおじさんは極々普通に近寄っていく。

「誰だ!」

知り合いらしき人はすぐさま石の飛んできた方向を向く。

「やっぱりおまえだったか。」

「す・・・鈴木!」

お〜〜、驚いてる驚いてる。
まあ、普通は驚くよね。
この人と知り合いという時点で普通ではないがどうやら一般人のようだ。
というか、この人、人違いだったらどうするつもりだったんだ?

「お前だとは思ったから一応石を投げてみたんだが、見事な腕前だ。」

「・・・・・・お前、"普通に声をかける"とかは考えなかったのか?」

「・・・・・・・・・・・・・あ。」

僕からでは見えないがその手があったかという顔をしているのだと思う。

「まさかその手があったかなんて言うんじゃないだろうな。」

「そういった手段もこの世には存在していたなぁ。」

この世に存在って言うのはまた盛大な・・・・・ というか、なんでそんなにしみじみといった口調で言うんだろう?

はああああぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜・・・・・・わかっている。お前はそういう奴だ。」

青木さんのため息には、いつものことだとでもいいたげな諦めがはいっていた。
普通の人じゃない・・・・・・
棒読みにそんな言葉を心の中で繰り返す。まだココロが壊れているようだ。
京都に来たのって間違いだったかな?

「ところでそこの子は?」

「えっと、僕は・・・・・・・」

「待て!コイツに名前を教えるとは、お前死ぬ気か?」

名前教えるだけで死活問題ですか?

「何を物騒なことを・・・・・・・・・・」

「お前の存在が物騒だからな。」

やっぱり間違いだったかなあ。
極力乱闘に僕を巻き込まないでくださいね。
・・・・・・・・・この血溜りってどうにかならないかな?
そう、道路が真っ赤に『なぜか』染まっていた。






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