06
僕が第三東京にきてから三週間。
特に変わったとこもない学校。
今僕はそこにいる。
なんでこんなとこきてるのかな?と自問しないでもないけど来てしまったものはしかたない。
あのあと葛城さんに世話を焼かれた結果ここにくることになちゃったんだけど。
別に来なくてもいいよなぁ。
義務教育っていっても子供にしてみれば権利だし、行かせる義務がある親はあれだし。
そんなことを思ってもきてしまった事実には変化はなく自己紹介をすまし、レイと同じクラスだったことに驚き。
僕は今、質問攻めにあっていた。
『碇君は何処に住んでいるの?』
『引越したばかりで住所覚えてない』
『付き合ってる人は?』
『いません』
『趣味は?』
『特になし』
『校舎案内してあげようか?』
『ありがとう。お願いします』
『ねえ碇君って、あのロボットのパイロットなんじゃないの?Y/N』
『N』
『今度一緒に出かけませんか?』
『考えときます』
今は授業中だからメールで質問してくるけど、ここのパソコン使い慣れてないからつたない動きしかできない。
まぁ、最後のは別として無難な質問が飛んでくる。
ちょっと憂鬱になりながら返事を返す。
僕って今、普通の学生してるのかな?
仮にも学校にくることにした理由、自分の経験や記憶を少しでも取り戻せたらと思ったからだ。
僕が中学3年ということは記憶をなくすまえも学校にいっていたってことだ。
通えば何か思い出すかとおもったのだが・・・・・・・
「何も感じない・・・・懐かしいとも思わないのって、僕って学校にいってなかったのか?」
ついつい声に出してしまった。
これがなぜかクラスの人に火をつけた。
「え?学校にいってなかったってどういうこと?」
「何何?なにかあったの?」
「あははは、登校拒否児童だったから。」
とりあえずとりとめのないことを言っておく。
「いじめられたりしたの?」
「かわいそう。」
「大丈夫。私がまもってあげる。」
なんか変なことをいっている人もいるけど、流れは僕を中心にしなくても回るようになった。
でも思わぬ伏兵がいた。
「碇がエヴァのパイロットなんだろ?話をきかせてくれよ。」
なんてことを言ってくれた。
それってどこの情報だよ?
「碇があのロボットに乗ってたのかあ?」
「やっぱり本当だったんだ!」
「ネェネェ怖くなかった?」
などと歓声があがる。
「誤解だよ。僕はパイロットじゃないよ。だいたいそれってどこの情報だよ?」
「父さんのPCにデータがあったんだ。お父さんネルフの人間なんだ。間違いないだろ?」
ネルフでは僕はパイロットってことになってるみたいだな。用心しなきゃ。
「ネルフの情報自体が間違えてたら?憶測でものをいわないでよ。」
切りかえしておかないとパイロットってことにされるからな。
「じゃあ、なんでエヴァに乗ってたんだよ?乗ってたのは間違いないんだろ?」
「それは間違いないけど、パイロットになった覚えはな・・・・・・」
「質問!どうやって選ばれたの?」
「 あのロボットの必殺技は?!武器は?!」
「恐くなかった?」
「このクラスの誇りだよなー!」
「あのロボットの名前は?」
「どうやって動かしてんだ?」
「かっこいい、うらやましいぜ!」
「操縦席ってどんな感じ?」
「あの怪獣みたいなのいったいなんなの?どこかの国の秘密兵器?」
続きを言わせてもらえなかった。
それにそこ!エヴァだって言ってるのにロボットの名前は?って何聞いてた!
いやいや、ツッコんでる場合じゃないな。
「僕はパイロットじゃないの。僕しか動かせないからって乗せられただけ。以上!」
さっさと切り上げるに限る。
「えー。いいじゃなーい」
「ちょっと位おしえてよ!」
「いいじゃん、別に減るわけじゃあるまいし・・」
僕は人間だ。知らないことまで教えられないよ。
結局一時間目がまるまる質問タイムと化してしまった。
はぁ、なにやってるんだろ?
授業が終わってすぐに黒ジャージの男子が僕のほうにやってきた。
「転校生、ちょっとツラかせや?」
「僕は転校生って名前じゃないよ。」
返事してる時点で認識してることがバレバレだけど、とりあえずは訂正しておく。
「ええから、ツラかせっちゅーとんじゃ!」
ものすごい(?)剣幕に周りがしずまりかえる。
はぁ、しんど。
「何?用があるならここでいって、さっきメールで校舎を案内してくれるって人がいて、お願いしてるんだけど。」
「なら、ここでええわい、転校生、わいの妹がいまどこにおるかしっとるか?」
「お、おいトウジ・・・」
僕を睨み付けたまま話す黒ジャージにメガネ君が後ろから声をかけるが無視されている。
「病院や、誰のせいやと思う?」
「さあ?」
僕にいわれてもな〜〜〜〜〜。
「オマエのせいや!オマエがもっとうまいことあのロボットを操縦しとったらよかったんや!!」
周りのクラスメートたちがざわめく。
何か無茶苦茶なことをいわれた気が・・・・・・・・・・
「それで?」
「なんやと?!」
ジャージ・・・・・・トウジと呼ばれた男子・・・・そういえばなんで制服の学校でジャージ?・・・・・は拳を握る。
撃墜モードON!
「君の妹さんっていつどこで怪我したの?」
「どこって、ビルの下で瓦礫の下敷きになっとったんや!オマエがもうちょっと・・・」
「ビルね・・・シェルターじゃないんだね?」
「それは・・・」
「避難勧告はでてたはずだよね?それで怪我して、僕のせいってのはおかしくない?」
トウジは僕のあざやかな口撃にうつむいたが
「そんなんどうでもええんじゃ!!とにかくワシはオマエを殴らんとあかんのや!!」
トウジが拳を振り上げる。
無茶苦茶だぁ〜〜〜〜。
そのまま殴られる僕。
だけど、すぐにトウジの腹に足をあて、そのまま蹴り飛ばす。
豪快な音を立てて倒れるトウジ。
派手だな。
「いったあ。なにすんじゃ!」
「お前が何するんだよ?」
無表情になって冷たく言い放つ。
「怪我した妹さんが怒りに来るのは理不尽だけど、まぁ、理解できるよ。でも、君は肉親ってだけで関係ない人間なんだよ?妹さんが僕のことが怖くて君に殴ってきてって頼んだとしても妹さんは立ち会うべきだし、そうじゃないなら、ただ君の勘違いの自己満足でしかない。自分の感情のみで状況が見えないやつって最低だよ。しかもそれで得する人がいないのって無駄って意味しかない。」
トウジは怒りの顔を崩さない。
説明的なセリフ・・・・・・これはしかたないよね?
「しかも・・・だ。僕が乗ったのは出撃用意。出撃。撃退。撤退。この間だけで、街にでてたのはほんの10分乗ったか乗ってないかだ。戦闘に関しては1分たったかたってないかくらいだ。この上なくうまく操縦してると思わないか?それにあれのパイロットのやつは殴るのか?乗ったから。正規のパイロットの人が倒してれば僕は乗らなくてすんだことだし。どうするの?」
トウジはあきらかに驚いた顔をした。
あれより手際よく処理できるならやってみろというんだ。
しばらくにらみあう。
すると携帯がなる音がした。レイだ。
「・・・はい・・・わかりました・・・・います・・・はい・・・」
携帯電話をきったレイは教室中の人間が見守る中シンジに近づき口を開いた。
「碇くん・・・非常召集・・・」
レイは僕をじっと見つめている。
照れるとこじゃないよねやっぱり。
「いってらっしゃい。がんばってね。」
「・・・そう・・・・」
レイはにっこり笑った僕から目を離すと教室をでていった。
僕の応援はいらないってか?
「なんなんだ一体?」
しばらくして眼鏡くんが呟いたのと同時に警報が鳴り響いた。
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