05
「君は最高の作品だ」
白衣で眼鏡をしたいかにも学者ですというような男が俺にいった。
周りには培養液に入った人がたくさんいる。
「君はあの黒衣の騎士よりも強い。あるいは紅蓮の魔女よりも。」
男は興奮しているようだった。
黒衣の騎士も紅蓮の魔女も俺には覚えがない。
男はまだしゃべり続ける。
「お前のI-ブレインは他に類を見ない。まさに破格の最高傑作だ。お前にふさわしい魔法を入れてある。お前がどんな物語をつむぐのか楽しみだ。」
男は笑う。狂ったように。いや、実際狂っているのではないのか?
男はなお笑う。何に対してわらっているのかはわからない。
男は笑う。しつこいくらいに。
男は笑う。破滅していく自分を。
男は笑う。自分の作品を。
こういう夢をみて、僕は最悪の目覚めをした。
とある街角、公園やコンビニ、スーパーなどの位置を確かめる。
ここの地形を頭に入れておこうと思ったのだ。
人の数は怪物が襲ってきたわりには多かった。
人が絶えないとはこういうっことだろう。
都市にしては少ないとは思うが・・・・・・・・・・・。
「ほんまむかつくわ!」
大きな声が聞こえてきた。黒いジャージ着た男だった。
歳は同じくらいかな?何をむかついてるんだろう?まぁ、別にいいけど。
ん?なんとなく見上げる。
病院だった。
その時、病院の窓の外をみている年下であろう女の子と目があった。
ちょっと、好奇心がでたのかもしれない。
いつもならしないようなことをしていた。
つまり・・・・・・お見舞いである。
とりあえず、その部屋に向かう。
土産はなし。
これは仕方がない。
何しろ前の報酬が払われていないために今の僕は金欠なのだ。
残金1万ちょっと。どれくらい暮せるんだろう?ちょっとつらい。
目安をつけた部屋についた。
ドアを開ける。・・・・・・いた。
「何か用ですか?」
「いや、ただのお見舞いだから気にしないで。」
「知らない人に普通はお見舞いなんてしませんよ。」
しっかりした娘だ。
かなりの重傷のようだが、起きれないことはないらしい。
「いつ怪我したの?」
包帯が新しい・・・ってここは病院だから当たり前か。
なんとなく気になった。
「一昨日なんです。あの怪物が来た日です。」
「どこかのシェルターが壊されたの?」
「いいえ、抜け出してたんです。大丈夫だとおもったんですけどね。」
非難命令を無視したのか。案外不良なのかもしれない。
「用事があったんだろうけど、抜け出さないほうが身のためだよ。」
「はい、身にしみてわかっちゃいました。」
なかなか冗談も通じる。頭もいいみたいだ。
「でも、すごいのを見れました。あの怪物って戦闘機とかのミサイルがきかなかったんです。それで紫のロボットがでてきたんですけど、そのロボットがやられちゃってその時瓦礫の下敷きになっちゃって」
「僕もあの光景はみたけど、すごかったよ。絶対税金の無駄使いだと思った。」
「あ、私も思いました。」
二人とも笑う。それからしばらくたわいのない会話をした。
「そろそろ帰らないと。」
「あ、そうなんですか? 今日は楽しかったです。またきてくれませんか?」
「気が向いたらね。」
そう、気が向かないとこない。
だからか、ちょっとしたお土産を残していくことにした。
「ちょっと、目を瞑って、体を楽に、力を抜いて・・・・」
少女に手をかざして念じる・・・・・この子を治したい!
(I-ブレイン起動。情報身体制御起動。情報組み換え開始)
少女のあるべき状態に治す。
少女の身体でおかしな部分を直していく。
「ちょっとしたおまじないをかけたからすぐによくなるよ。」
(情報身体制御成功。情報組み換え率90%I-ブレイン停止)
I-ブレインを自分の意思で使えた。
なにができるか体が覚えている?
今は勘だけど、できることを正確に把握したらすごい人間なんじゃないだろうか。
僕って何者?
そんな疑問が膨れていく。
それに今朝の夢。
「ありがとうございます。」
あ、思考が深くなちゃった。
「こっちも楽しかったから。じゃあね。」
そういうを部屋をでる。
さて、昨日材料買ったし、晩御飯でもつくって眠るか。
ご飯の用意をしていると、チャイムがなった。
何かやってる最中に邪魔がはいるとむかついてくるよね。
「はい、誰ですか?」
葛城さんくらいしか来ないのはわかってるが返事をする。
そういえば新聞屋さんもこないな。こないほうがいいけど。
「私だけど、ちょっと話していいかしら?」
ちょっとびっくり、予想に反し、赤木さんが訪問してきた。
「ご飯の準備してる最中なんですけど?」
「なら、中で待たせてもらってもいいかしら?」
「いいですよ。ついでに食べていきます?」
「お願いできるの?ならお願い」
態度は悪いほうだな。
まぁ、助かった。ちょっと多く作ってしまい。苦しい思いをしていたところだ。
それから20分程度
「はい、どうぞ」
ちょっとした中華料理。シュウマイに焼き飯、春巻きなど。
「いただくわね。・・・・・あら、おいしい。」
一応お褒めにあずかったようだ。
あんまりわかりにくいリアクションしてほしくないんだけどね。
自分でも食べる。上出来、なかなかいける。
「シンジ君、エヴァの操縦訓練は明日、朝の8時からだからきてね。」
食べ終わって、後片付けしていたら、話しかけてきた。
そういえばこの人話にしたんだっけ?
「なんで訓練なんかいかないといけないんですか?」
「うまく動かせなかったら困るでしょ?」
「うまく動かせなくていいです。」
「次に使徒が来たときにうまく動かせないと困るでしょ?」
「まだ乗せる気なんですか?冗談でしょ?」
「あら、一億出してるんだもの、乗ってもらわなきゃ。」
「報酬はまだもらってませんし、次もその金で乗るなんていってませんけど?」
だいたい信用されようって気がないのかね。・・・・・って!次?
「え?次ってことはまだあんなのがくるんですか?」
「そうよ、くる可能性は高いわね。」
「高いってだけで、確定じゃないんですね?」
「そうね、まだきてないのに確定はできないものね。」
微妙に発言の意図をそらされた。
答えになってない。
何か隠してるな。
関わりたくない指数がまた、上がりだした。
「あなたたちには自分たちの意思で動いてくれるパイロットがいるでしょう?その人に任せたらどうです?ファーストや、セカンドさんたちに任せたら?」
「いま一番確実にエヴァを動かせるのがあなただからいっているの。」
微動だにせずに言い返してくる。
やりにくい。
「とにかく、そんなことは自分の子飼の犬にいってください。訓練という名の実験に参加させられるのはごめんです。」
そう。データ収集とかそんな感じだろう。
動かすだけなら問題なくできたんだ。
「・・・・・・・・・」
しばしのにらみ合い。
「そう、お邪魔したわね。」
意外にも引き下がった。
そのまま帰っていく。
今日のところは勝ち・・・・・かな。
鍵をかける。そこでふとコノ鍵って意味あるのか?僕以外でも簡単にあけれるよね。
他の鍵をつける必要があるかな?
いろいろ考えたけど、
結局なにしても、入られるときははいられるという結論がでたのであきらめた。
そこで昨日放置していた荷物の整理をし始める。
自分のことが少しはわかるかな?
特に物っていうものはないなぁ。
人格に関わるのは特になし。
特殊な持ち物といえばチェロくらいだ。
弾けるのかな?
近所迷惑になるから今は弾かないけど。
そうこうしてるとまたチャイムがなった。
今度は何?
「シンジ君、言い忘れてたけど通う学校が決まったからこの日から登校してね。」
葛城さんだ。
「はい。」
とだけ、ドアごしに返事した。
別に気が向かなければいかなくてもいいんだ。
そのまま寝床に向かう。
何かまだ葛城さんがいっているようだけど、無視して寝る。
明日は変な夢で目覚めることはないように願って・・・・・・
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