06
人が生きるとはどういうことだろう?
人が死ぬとはどんなとき?
人って何?
人という存在は本当にあるの?
本当に他人は存在するの?
いつも確かなことは一つだけ。
自分という存在だけが確認できる。
だけど、記憶をなくして自分を確認できなかったら?
僕は、今、死んでいるんじゃないのか?
転校生っていつもこんな感じなのかな?
先生に紹介されてすぐに質問の嵐。
先生が地味にみんなを静めて、今の授業中に質問メールがわんさか・・・・・・
メールボックスがすぐに限界を超えてしまう。
・・・・・・めんどくさい。
全部消去しちゃえ♪
たぶん、質問があれば休み時間とかにくるだろうからね。
それにしても、僕って記憶喪失のくせに常識ってモノをわきまえてるよね。
どうしてだろう?
知識はある。
なんでだろう?
でも、常識を知ってるっていっても今、先生が話しているセカンドインパクトなんかはあまりよくわからない。
僕はどうなってるんだよ。
とりあえず、僕が前に住んでいた場所に戻るのが一番いいよね。
無くした記憶の場所に行くのも一つの手だ。
そんなことを考えているとあっというまに休み時間になっちゃったよ。
予想通り質問攻めにあった。
「ねぇねぇ、碇君ちょっといい?」
質問攻めかなぁ?
「疎開始まってるのになんで今頃この学校に来たの?」
「疎開?」
「怪物が襲ってきたり通り魔がいたりで治安が悪いから離れていく人が多いの。」
怪物・・・・・・昨日の獣のことか?
確かにアレがうろついている街にはいたくないよね。
「そうなんだ。」
「・・・・・・こんなウワサがあるんだけど。」
「ん?」
「君があのロボットのパイロットだってウワサ。」
「ロボット?パイロット?」
僕が前に乗ったエヴァは人造人間であってロボットじゃないし。
そもそも僕はパイロットではないし。
なんとなく見当はつくけど、実際そう言われたわけじゃないし、黙っているのが一番いいよね。
「碇君知らないの?」
「え?え?話が見えてこないんだけど・・・・・・」
「じゃあ、なんでこの街に来たの?」
なんか葛城さんみたいだなぁ。
「お父さんがここで仕事をしていて、その関係で呼ばれたんだ。」
あってるよね?
自信はいまいち無いけど。
「パイロットの仕事で呼び出されたんじゃないの?」
ずばり的中。
すごいねこの人。
「さあ、お父さんの考えてることなんて知らないよ。」
まあ、自分の考えてることしか知らないけどさ。
「本当に知らない?」
「知らない。」
「碇君じゃないの?」
「何が?」
「だからパイロット。」
「僕じゃないね。」
みんなが探してるパイロットなら近くにいるんだよね。
青味がかった白髪のレイと呼ばれた少女、彼女がパイロット。
僕はその予備で呼び寄せられたと考えていい。
このままぐだぐだやってれば用無しとほっぽりだしてくれるだろう。
それは願ったり叶ったりだ。
そこまで話が進んだらネルフの話ではなくて普通の転校生への質問に変わった。
前の学校は?とか
付き合っている人は?とか
趣味は?とか
好みのタイプは?とか
一曲どうぞ!とか
デートしてください!とか
・・・・・・最後のはちょっと違う気もする。
まあ、自分探しの旅にでるつもりでいるから別に馴染まなくてもいいけどね。
転校生としての物珍しさがなくなればこういったこともなくなるあだろう。
たぶん、三日くらいの辛抱だろう。
それまでこの街にいるという保障はどこにも無いけどね。
いつ出発しようかなぁ。
以外に早く収まったなぁ。
丁寧に質問を片付けていけばこうも簡単に収集できるものなんだ。
休み時間ごとに質問をされてたけど、一個一個回答していったら昼休みにはもう収まっていた。
人の感情ってどう動いてるんだろう?
「オマエが転校生か!!」
せっかく屋上にでて空を眺めてるのに・・・・・・
うんざりとした気分で振り向く。
無視してもいいけど、僕が転校生であることには変わりないからとぼけにくいのは明らかだしね。
僕を呼んだのは見覚えのあるジャージの男の子。
どこで見たんだっけな。
もう一人は・・・・・・同じクラスの人だね。
眼鏡をかけていてパイロットだろってねちっこく聞いてきたやつだ。
他のクラスの人にも声をかけて連携して質問してきた張本人。
僕が乗ったから傍から見ればパイロットで間違ってはいないんだけど、迷惑この上ない。
「一応、今日転校してきたのは僕だよ。」
「オマエがあのロボットのパイロットちゅうんはホンマか?」
「本当じゃないよ。」
朝から何度繰り返したことか。
「そんなことないよ!このタイミングでの転校生なんてその可能性しかないじゃないか!」
眼鏡君奮起。
暑苦しい。
「どのタイミングでどんな可能性だよ。」
思わず苦笑してしまう。
「それにね、そのパイロットっていうのは中学生にできるの?大人の人が動かしたほうが明らかにいいよね?違う?」
「適正がいるんだよ!世界にまだ三人しか見つかっていない適正者のうちの一人なんだろ?」
「適正者?」
サードチルドレンというのは三人目の子供ではなく三人目の適正者というコードネームだったのか。
「ワシをムシすんな!」
・・・・・・無視されて寂しいんだね。
「勝手に黙ったのは君じゃないの?」
しまった。
反射的に挑発的な言葉が出てしまった。
このタイプの見た目の人間は猪突猛進タイプが多いからからめ手でいかないといけないのに。
「なんやと!」
「ちょっとは落ち着いたら?」
「オマエ泣かす!」
あ〜〜あ〜〜〜〜
やっちゃったよぉ。
なんで丸く収まらないかなぁ?
「言葉が端的で知能が低そう。」
ブチっという音が確かに聞こえた気がした。
とりあえず走り出すと黒ジャージは追いかけてくる。
そのまま屋上をぐるぐると走る。
ものすごく間抜けなことだなぁっとは思うけどなかなか有効だと思う。
少し時間がたったら黒ジャージが倒れた。
「はあ、はあ、はあ、はあ、少しは、はあ、落ち着いた?」
「ぜえ、ぜえ、ぜえ、ぜえ、ぜえ。」
「僕に何か用だったんだろ?何のようだったの?」
「ぜえ・・・ぜえ・・・ぜえ・・・ぜえ・・・」
急いで息を整えようとしている。
少したって、やっと息が整ったようだ。
「妹がアメリカに行くのです。」
「は?」
いきなり何の話?
「いや、なんでもあらへん。」
いや、あの、一瞬黄色い物体が見えた気が・・・・・・
「妹が怪我してもうてな。」
「へぇ、それは災難だね。」
所詮は人事だけど。
「オマエもしっとるやろ?あのロボット、味方やっちゅうのに暴れて街壊して。」
「知らない。」
「オマエいかれとるんちゃうか?」
「実際見たわけじゃないからね。知らないよ。」
街はあまり壊してなかったはずだけど・・・・・・意識を失っているときに何かあったのかな?
「まあええわ、そんでロボットが暴れたせいで妹が大怪我してもうてな。」
「うん。それで?」
「オマエがパイロットやったら殴ったろうおもてな。」
「はあ、それはそれは。」
「碇がパイロットだよな?」
「だから違うってば。」
少佐!眼鏡と黒ジャージのコンビネーションはなかなかのものであります。
「どうして僕をそういうのにしたがるかな。」
「カッコいいじゃないか!」
「よくないだろそんなの。」
ため息交じりな言葉が出る。
「碇君。非常召集。」
「え?」
いつの間にか屋上に包帯だらけのレイが現れた。
「先に行くから。」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
僕とジャージと眼鏡は唖然として固まっている。
「じゃ。」
言いたいことだけいうとさっさとその場を後にしてしまった。
状況が飲み込めずにしばしの沈黙が続く。
「何やったんや?」
「さあ?」
「なんで綾波が碇のことを誘いに来たんだ?」
「オマエ綾波と知り合いやったんか?」
「知り合いというほどでも・・・・・・二度ほどすれ違ったくらいかな。」
「そんなので誘いに来るか?普通。」
「僕だってわからないよ。普通は無いと思うけど・・・・・・」
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
うわ!うるさ!
「何の音?」
『全校生徒の皆さん。避難命令が発令されました。慌てず騒がず優雅で華麗に避難所に向かってください。』
「・・・・・・僕的にこの放送を誰が流してるのか非常に気になるところだね。」
「碇、それは諦めたほうがいいよ。」
「なんでさ?」
「この学校の怪談の一つだから。」
「・・・・・・・・・わかった。」
触らぬなんとかかんとかってやつだね。
「何しとんねん。はよ非難せな。」
ジャージが催促するが僕はその気にはなれなかった。
「僕はまだここにいるから君達はいっておいでよ。」
「な!なんでや?」
「ここは危険なんだろ?」
「どこにいたって死ぬ時は死ぬさ。なら最後まで自分のしたい行動をとるよ。」
「・・・・・・そうだな。」
眼鏡君が何か決めたように言葉を出す。
「今度いつくるか解らない怪物を待つよりも、今のチャンスを逃したらいけないよな。」
あのね、今度が無いかもしれないって言ってるんだけど・・・まあ、いいけどね。
「オマエらアホちゃうか?」
「そうかもね。」
同意してやるとこの手に言葉は続きを言えなくなる。
「トウジは非難しとけよ。」
「いた!鈴原!!」
ソバカスがある髪を後ろで二つにくくっている女子登場。
鈴原ってジャージか眼鏡かどっちだろう?
「委員長!なんでここに!」
ジャージが鈴原ね。
「相田も碇君も何してるの?避難命令が出てるのよ!」
眼鏡は相田っていうのか。
「避難はしないという話をしてたの。」
「え?」
委員長と呼ばれた女子はわけがわからないという顔をしてくれた。
それが正しい反応だと僕も思うよ。
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