04
人には絶対にやらないといけないことがある。
人には絶対にやってはいけないことがある。
そして、僕が今置かれている状況は明らかに。
絶対にやらないといけないことと。
絶対にやっちゃいけないことが重なっている。
つまり、逃げなくちゃいけなく、捕まっちゃいけない状況なわけだ。
くそ、病院を抜け出したからってジオフロント内部じゃ迷うだけだよ。
というか、撒きやすいからって森に逃げ込んだはいいけど・・・完全に迷ったね。
僕って間抜けだ。
まあ、あの黒髪賞味期限切れ女と一緒に暮らすくらいならここで暮らしたほうがまだいいと思うけどね。
どうも、ここの、ネルフという組織の大人の人とは合わない気がする。
・・・・・・・・視線を感じる。
どこだ?
周りを見渡すけどわからない。
たぶん監視カメラかその類だとは思うけど・・・見つけられないんじゃ対策はその場所からの移動しかないか。
でも、全力で走ったから疲れてる。
もうちょっと休まないと移動できそうに無い。
まいったな、ここにいることを知られるのは時間の問題どころか、すでに知られてるかもしれない。
これから・・・どうすればいいんだろう?
ここに居たら殺されてしまうかもしれないからなんとかしてここをでたいんだけどね。
・・・・・・記憶の手がかり一個も無いんだもんな。
僕はどうしたらいいの?
ほとんど途方にくれている状態になっている。
それにしても、地下なのに明るいなぁ。
そんなどうでもいいことに思考が飛んでしまうあたり重症の証拠だろうね。
ガサッガサッと足音が近づいてくる。
もう来たみたいだね。
音源は後ろということは・・・・・・・・・
前に向かって走る。
こちらの動きを察したのか足音も早くなった。
しつこい。
しばらくまた追いかけっこをする。
しまった。
森から出てしまった。
しかも結構大きい湖が目の前にあるし。
「ぜえ、はあ、ぜえ、はあ、ぜえ、はあ、ぜえ、はあ。」
追いつかれた。
でも、かなりお疲れのご様子。
僕も似たようなものだから人のこと言えないけどね。
「なんで逃げるのよ。」
「逃げたいからに決まってるでしょう。」
何を当たり前なことを言っているのでしょうか?
「その逃げたい理由を聞いてるのよ。」
「僕としては逃げたくならない理由を聞かせてほしいくらいですね。」
「・・・・・・そんなにあたしと暮らすのが嫌なの?」
「嫌です。」
言葉尻を食う勢いで即答する。
「・・・・・・いきなりエヴァに乗せたことは謝るわ。」
「謝ってもらっても許すつもりは無いですよ。」
「あの時はああするしかなかったのよ。」
やっと、出撃の時の話が出てきた。
この人は意識的にこの話題を避けているみたいだったからやっと自分からこの話題を出させることに成功した。
「はいはい、仕方がなかったんですね。それで?」
「え?」
「それで何?それがどうしたんです?仕方が無かったからなんなんですか?それが僕が命を張る理由になるとでもいうんですか?」
「なるわよ!」
「ほう、そのなりえる理由とやらを聞かせてもらいましょうか?」
「世界を守るにはそれしか方法が無かったの。」
「それで、戦闘中にパイロットを気絶させるの?世界を守る振りして全て滅ぼそうっていうんじゃないの?」
そうだよ。
僕は気絶したんだぞ。
なぜ無事なんだ?
あのエヴァってやつ以外でもあの巨大生物を倒す手立てがあるってことか?
「あんなことするなんてあたしも知らなかったのよ!」
「知らなかったから仕方が無い。はいそうですか。バッカじゃないの!」
「何よ!悪いっての!」
「はっきりと悪いだろ!仕事でしょそれって!仕事をまともにしてない証拠でしょ!ものすごく悪いよ!!」
「このガキ!」
なにやら最接近されてきたからそのまま湖に入る。
「ちょっと!何してるの!」
「見て解らないんですか?馬鹿ですか?」
湖に入っているだけですよ。
それが理解できないなんて・・・・・・
「な、馬鹿って何よ!馬鹿はあんたでしょ!溺れたらどうするの!」
・・・・・・溺れるかな?溺れるのかな?泳げないのかな?
「溺れたら・・・・・・それはそれで。」
「それはそれでって何よ!わけわかんないわよ!」
わけわかんないのはお互い様。
さらに進む。
「ちょっと!ホントに溺れるわよ!!」
何を焦っているんだろう?
まあ、予想以上に服が邪魔していてちょっと速く泳ぐのは無理だね。
なんとか浮いていられるくらいはできるか。
それにしたって全神経を集中しないといけない。
水の抵抗を考えて、息をするタイミングを間違えたらヤバイことになる。
最悪の場合は服を脱いで泳ごう。
・・・・・・・・・ヤバ。
ここまでの移動でもうすでに体力を使い果たしてたから水の中で長時間起動できることはできなかったようだ。
まずい・・・・・・本気で沈む。
ああ、水の中って気持ちいいなぁ・・・・・・
僕の意識がどこかに飛んでいく。
・・・・・・また同じ天井かよ。
どれくらい意識を失ってたんだろう?
地下じゃあ、ちょっと、時間がわかりにくい。
って、地上でもわかるものかよ。
何考えてるんだよ僕は。
過去の手がかりとして記憶に留めて置くけどさ。
起き上がる・・・が、すぐに立ちくらみでバタンとベットに倒れこんだ。
体力が回復していない。
そんなに時間がたってないのか、それともそこまで衰弱してたってことかな?
眠気がどっと押し寄せてくる。
自己身体検査。
疲労・・・そのための起動限界。
なんで意識が戻ったんだろう?
まあ、ここはこの流れに逆らわずに寝るけどね。
学者の講義を受けている僕がいる。
「お前はいろいろな魔法を使える。基本の騎士の能力を説明するからよく聞け。まずは自分の都合のいい世界を作る自己領域。ただし、領域の名のとおり範囲指定だから自分にちかづきすぎると相手まで巻き込むので注意がいる。第二に身体能力制御。これはその名のとおり自分の身体機能を上昇させ判断速度もあげ、無理な運動による体への負担をなくすものだ。第三に情報解体攻撃。これは物質にハッキングをかけて分子結合を分断する。ただし、人間など情報が多いものなどはハッキングできないからな。」
一気にしゃべる学者、それを一字一句聞き漏らさずに記憶していく自分。
「魔法士の戦いは限られた能力を組み合わせ、戦術を立てて戦うものだ。普通、自己領域と能力制御などは自己領域に演算能力を持っていかれるから同時には使えない。しかし、お前は使える。その点だけでもう騎士として最強だ!」
興奮しているようだ。いや、もしかしたらこれが普通の状態なのかもしれない。
「しかし、この最高の能力も引き出すための媒体である外部デバイスがいる。これを自分で製作できる魔法を入れてある。銀という貴金属を媒体に情報金属ミスリルを作れるミスリルは銀の同素体だからな。外部デバイスなしでも魔法が使えるお前ならではの能力だろう?情報の海と自我のリンクが必要なく情報の海の中にその実体を持っている為にデバイス抜きの魔法が出来るおまえならではのな!」
人格が破綻してしまっているのだろうか?
「デバイス抜きならさすがのお前も全力は無理だ。無い状態でI-ブレインを起動したら体に負担が掛かってしまうからな。」
「負担をかけたらどうなるの?」
「最悪死ぬ。だからデバイスを作ってそれを使うことだ。いいな?」
「はい。」
「よろしい。」
そこから延々と夢の人物は魔法について解説してくれた。
「だから!なんで僕ばっかりそんなものを背負わせるんだよ!!」
・・・・・・駄目だ。
夢の内容が途中からごっちゃにって。
なんなんだよ、あの夢は。
「シンジ君、起きた?」
「まだ、覚醒途中なのでもう一眠りいいですか?」
思いっきり目が覚めてしまったけど・・・・・・係わり合いになりたくない人がそばにいるから狸寝入りしたいですますはい。
「駄目よ。」
黒髪アンド金髪コンビぃ〜〜〜〜〜
消費期限まじかな人々。
ちなみに賞味期限はもうとっくに・・・・・・
「シンジ君、聞いてね。あなたの住居を用意したわ。」
「他人なんかと暮らすのは嫌ですよ。」
「そういうと思ってちゃんと用意したわ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「案内はミサトにさせるから。」
「わかりました。」
つまり、その気になればちゃんと出て行けるわけだよね。
不意を着けばどこへでもちゃんといける・・・・・
あまい考えかもしれないけどね。
監視なんかは当然つくだろうし。
それでも、今までと比べるといい条件であることには変わりは無い。
僕は指示にとりあえず従うことにした。
これ以上めんどうなことにならないように祈りましょう。
ここは葛城ミサトという黒髪おばさんの車の中。
ぼろがでるといけないので黒髪おばさんと呼ぶのはやめて葛城さんでいこう。
ぼろがでたら凄まじいことになりかねないからね。
「シンジ君、そんなにあたしと住むのが嫌だったの?」
「他人と住むのが嫌なんですよ。なんか、落ち着かなくて。」
「自分のお父さんでしょう?」
「それでも、理解しあえていなかったら他人と同じですよ。」
そう、どんな人物なのか知らないし。
状況証拠だけであの髭サングラスを父親と認めただけで本当にそうなのかは疑問だしね。
「でも、肉親なのよ。気にかけてないってことはないと思うわよ。」
「多少なりとも存在は意識していたとしても、それが愛情とは限らないでしょう。」
「親が子に感じる感情のほとんどは愛情だと思ってるわ。」
「それはあなただけの意見です。僕をその考えで洗脳しようとしても無駄ですよ。」
「洗脳だなんて。」
「自分の考えを他人に押し付け、植え付ける。ほら、洗脳だ。」
「……考え方が暗いわよ。」
「もうすでに殺されかけてますから、疑り深くなるのは仕方ないですよ。」
もちろんエヴァに乗ったときの仕打ちのことだ。
外部からパイロットに直接危害を加えられるというのはかなり危ない。
しかもそれを気が失われるまでやられたからたまったもんじゃないね。
葛城さんは無茶苦茶気まずいという顔をしているが僕は気づいていないふりをする。
敏感に反応していればいいというわけでは世の中決してないからね。
「・・・・・・そうね。」
そのまま、沈黙したまま車はどこかに止まった。
家が見当たらないけど・・・・・・ここで野宿しろと?
なんかここって、高台みたいだけど・・・・・・
「ナイスタイミング♪そろそろ時間ね。」
何を狙ってるんでしょう?
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
警報?
大きな音が鳴り響いて、地面からビルが生えていく。
なんてカラクリだよ。
「対使徒迎撃要塞都市、第3新東京都市、これが私達の街よ。そしてあなたが守った街。」
「無理やり乗せられて気絶して”守った”ですか?冗談じゃない。」
「・・・ち、理由はどうあれ、あなたは立派によくやったは、自信を持ちなさい。」
「・・・・・・・・・会話がかみ合ってないこと、わかってますよね?」
「・・・・・・まあね。」
「それと、地上に潜っていて迎撃できるなんて、なんて都合のいい。」
葛城さんは苦々しい顔をしてこういった。
「物事を斜めから見るのはやめたほうがいいわよ。」
「ご忠告どうも、でも、真実を見ている自信はありますよ。」
「世間に公開されている情報は極一部よ。」
「僕が見ているもの、それが真実です。」
「いいきるわね。」
「結局、人間という生き物はそういう生き物ですから。」
無理に理由付けずに本質を見れば、こういう結論も出てくるよ。
「・・・・・・・・・・」
なぜか葛城さんはがっかりしたような感じがする。
「ところでここに僕は住むんですか。」
「え・・・?そんなわけ無いじゃない。」
「そうですか、よかった、ちゃんと屋根くらいはありますよね?」
どんな待遇にされるかわかったものじゃないからね。
「あなたの部屋は私の部屋の隣よ。」
「つまり、同じマンションということですか。」
「そういうことね」
ということはこの人が事実上の監視役というわけか。
僕もなめられたものだね。
いや、なめられているほうがなにかと都合はいいからありがたいんだけどね。
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