手術の前の日

手術をする前の日に看護婦さん達がバリカンを持って、やってきました。
ダメダメ病院では絶対安静ということで、横になったまま(上向き)バリカンの届く所だけ刈られて落ち武者のようになっていた僕のヘアースタイルを(想像)6東の看護婦さんたちは体位変換(横向き)をする事が出来るので、手術室に入るには清潔にしないといけないということで、残りの髪を切りにやって来たのです。

それはそれで構わないのですが、問題なのは看護婦さん達の悪戦苦闘ぶりです。
しつこいようですが、首の骨が折れているので、首を左右に曲げることは出来ないので、身体を動かす時はどんな時でも看護婦さんの1人は頭を身体と平行に持たなくてはいけません。

今回の看護婦さん達の指令は僕の頭を坊主にするということですが、この2つの相反する(頭を持つ、頭を刈る)事を作業するのは意外のほか難しく危険な事だったりします。

どうして、こんな事に命を賭けなくてはいけないんでしょうか?

それは看護婦さんたちにとって規則は絶対だからです。
それが原因で患者さんの容体が悪くなるようなことがわかっていても、やっぱり規則が第一!
これはよく考えれば医療スタッフの自己防衛と暴走を防ぐために仕方がないことですが、でも、こういうことから患者さんと医療スタッフとの溝が深まっていくような気がします。

(確かに「殺せ」とは言うたけど、こんなかっこ悪いのは嫌じゃ〜)
そして、2人で体位変換をして砂嚢(さのう)を僕の背中の所に置いて固定して、いよいよ丸坊刈りにしようというのですが、身体は砂嚢で固定できても、頭は看護婦さんが持ち続けなくてはいけないので、バリカンを持っている看護婦さんは、頭を持っている看護婦さんの手が邪魔で、上手く刈ることが出来ないので、「もうちょっと手ぇどけてくれへん」と申し訳なさそうに言うのですが頭を持っている看護婦さんは「わかってんねんけど、これ以上は無理やわぁ」と僕の頭(重い)を持ちながら苦しそうに息を漏らしながら結構、頑張ったりして、頭を持つ手が不安定になってきて今にも落としそうなので、(あんまり頑張らんないでいいんちゃうんかなぁ)と思っていたら頭を持っていた看護婦さんが何かを決心したように「ちょっと待って」とバリカンを持っている看護婦さんに言うと「私、ベットの上に上がるわ」と言うと「お母ちゃんタオルない?」とちょっと男前で、尋ねると母親は急いでタオルを出して看護婦さんに渡しました。

看護婦さんはそのタオルを受け取ると、何の迷いもなく「ちょっと我慢してな」という言葉と同時に僕の顔にそのタオルを乗せてバリカンを持っていた看護婦さんに「ちょっと持ってて!」バリカンを持っていた看護婦さんも「うん」と、すかさず僕の頭を持って一瞬2人で持って安定したと思ったら頭を持っていた看護婦さんが「いい!離すで!大丈夫?」と言うとバリカン看護婦さんか「うん!大丈夫!」それからゆっくり髪の毛をたくさん引っ張りながら(ぃぃぃ痛い)頭を持っていた看護婦さんの手が僕の頭から離れていきました。

頭を持っていた看護婦さんは苦しい体勢から逃れられた喜びからか「ちょっと待て」と言うと背筋を伸ばしているお様子で「ぅぅうんもうちょっと待ってなぁ」

今は頭を持っている看護婦さん「気持ちいいやろう〜(背伸びをしている看護婦さんを見ながら)

今持看護婦「この体制 かがまなあかんからしんどいなぁ」
元持看護婦「そうやねんだから私上に乗って上から持つわ」
今持看護婦「でもあなた大丈夫」
元持看護婦「北嶋君も頑張ってねんからもうちょっと頑張るわ」

よっぽど辛い体制だったんでしょうね(^^)でもねぇ僕にはね「ちょっと待って」はないのですよ。
どちらかの看護婦さんが頭を持っている時に手を滑らせれば終わりという緊張感・・・でも、一生懸命やってくれてるのでそういうことは言ってはいけないのかなぁ。

数十秒休んだ看護婦さんは「よし!」と心機一転、気合いを入れてベットの上に上り僕を股いで改めて僕の頭を持って、さっき刈れなかった所を刈っていきました。
プロ意識にあふれる勇気ある行動だとは思いますが、僕に一言も許しをこうことなくまたぐとは・・・どういうことなんでしょう?顔にタオルを掛けられて看護婦さんに股がれている間何を考えていたと思います?

エロエロなことをってだれがやねん(-_-)/~~

看護婦さんに股がれるというのは一見ううらやましいと思われる男性の方も多いでしょうが、当時の僕にとっては凄く屈辱的なことでした。
これでも僕は当時、女の子にモテモテとまではいかなくても、モぐらいはいっていたんですよ。

それなのにお世辞にも綺麗とは言えないおばちゃん看護婦さんに「見んといてなぁ(笑)」なんて事を言われて、僕は心の中で「誰がそんな臭いも見るねんコラッ!恥ずかしい骨を折るどぉ〜われぇ」などとちょっといけないことを考えていました。

日本では昔から男の人を女の人がまたいではいけない事になってる筈なんですが、そんな事を頚椎損傷は言ってはいけないのでしょうか?

意気込んでベットに登った割にさっきの体制とあまり刈れる所が変わること無く(どういう体制になっても頭を持つ!ということは変わらない!ことにどうして気づかないの!)ベットの上に立って頭を持つのが予想以上にしんどかったらしく今度はすぐに泣きを入れて「これ以上はもう無理やわぁ」と言うとまた僕の頭を持ち変えて髪を引っ張って、看護婦さんはベットからおりました。

看護婦A「もうこれでいい事にしようか、だってこれ以上無理やもん」
看護婦B「そうやなぁこれでとりあえず先生に聞きに行こう」

その後、髭剃り、首剃り(理髪店のおっちゃんよりうまくしろとは言わんけどそれにしても痛いのぉ)が終わって1人の看護婦さんがドクターを呼んで来て「どうですか?「先生髪の毛がどうしてもうまくいかないのですがぁ」と甘えた声で言うと、ドクターは軽く「いいよこれで十分!ようするに傷口に入らんかったらいいねんから」という言葉を聞くと看護婦さんは

看護婦A「なんやーもっと早く聞きに行けばよかった(笑)」
看護婦B「そうやん、あんなに苦労する事なかったんやん(笑)」
母親「・・・ ・・・ ・・・」(一生懸命手伝っていました。)
僕「言葉にするとプロバイダーに怒られてしまうのでここでは多くは語りませんが ・・・ ・・・(怒)」

そんな大騒動の1日が終わって明日は待ちに待った手術の日です。
だからこの日は絶食で夜の10時からは水分も止められて、明日はいっぱいうんこが出るように薬を飲まされました。

ご飯を止められるのは全然問題ありませんが水分はきつい...。

10時を過ぎてから母親に何度かお茶を飲ませてもらうように頼み(正確には、命令、恐喝、脅し)ましたが母親はくれませんでした。(完全に無視していました。)

せめて片腕でも動けばどうにでもなったていたのに・・・

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