術後

時間は12時過ぎ(母親談日付が変わるぐらい)

目が覚めると母親が何やら話しかけて来て適当に返事をしながら自分の視界に見慣れないものが見えて頭に違和感もあるし何だろうと母親に聞いてみると、

母親「この間まで刺さっていた俸が4本になってるねん」
(どう説明してよいのか?という感じで)

「4本?!」「どんなふうに?」
(何?何?今度はなんやねん)

母親「前2本は見えるやろ」
(冷静に話を聞けよ)

「うぅん」
(この2本は目を開けると自然に見えました。まるでカタツムリ触覚のように刺さっていました。)

母親「後ろにも同じように2本刺さってねん」
(気にするな!たいしたことない)

「それでこれなんやねん」
(これというのはその時の僕の視界では刺さっている俸と棒のをつなぐようにステンレス製のものが増えていました。)

母親「何の為かわからんけど4本が刺さっている棒につながってねん」
(安物の天使のようにステンレスのワッカがついていました。)

「なんやねんそれ!何の意味があんねん?」
(母親に答えを求めているわけではないですがとにかく切れ切れでした。)

母親「そんなことお母さんに言われてもわからんやんか!」
(母親も切れ切れでした。)

「だから医者がなんか言うてなかったかって聞いてねん」
(じゃあ最初からそう言えって感じですけど・・・偉そうですよねぇ)

母親「そんな言うてなかったよ」
(ちょっとわれに帰った感じで)

とにかく、僕は凄くイライラしていました。

手術を受ける前には全然聞いていなかったことになっているし新しく金属の棒を刺したところは痛いし、何かするたびに金属の棒を抜いては刺して、一体全部で何本刺されるんだろう・・・。

僕の頭の中のイメージでは頭がい骨が陶器のようなものだとしたら金属の棒を何本も刺されるとそこから亀裂が広がって頭がい骨が爆発するんではないかと考えるとパニックになりそうでした。

今刺さっている4本とダメダメ病院での2本それからこの病院に入院して来たその日に差し替えられた2本合計8本が分の穴が頭に開いている事になります。

こんなに頭がい骨に穴を開けて大丈夫なんか?頭がい骨が割れて脳みそが漏れている映像が脳裏をかすめてそれはそれはカッコ悪くて気持ち悪くて怖くて頼むから殺してくれ!そんな感じでした。

だってそうでしょう同じ死ぬにしても頭がい骨が割れて脳みそが漏れ出して死ぬ。じゃあどんなに悲惨でも笑うしかないでしょう?ドリフのコントじゃあるまいし「もしも金属の棒を突き刺すのが好きな外科医がいたら」って何でもしもしリースやねん(-_-)/~~笑いは嫌いじゃないけど、そういうのはいやゃゃゃ・・・(T_T)

そんなことを思えば思うほどイライラして、でもそんな事でビビっていることを母親に悟られたくないみたいな見栄もあってそういう気持ちをどうすればいいのかわからないままモンモンとしていると、どういう訳か咽の奥が痛いので母親に「水をくれ」というと

母親「ちょっと待って看護婦さんに聞いてみな」
(と言いながらナースコールを押そうとするので)

「そんなんどうでもいいから水をくれ!」
(こういうショボイルールは普通に無視してきた人生なので母親のそういう態度が凄くイライラしました。)

母親「そんなん言うても聞かな分からへんやないの〜!(怒)」
(小さい頃から何度もこの口調で怒られた気がします(;;))

「わかったからデカイ声を出すな(怒)
(金属の棒が刺さっている所も痛いのですが手術明けで麻酔が二日酔いのような頭痛を引き起こさせるのか最悪な気分でした。)

そんな会話がありながら母親がナースコールを押すと天井のスピーカーからアホデカイ声で看護婦さんが「どうしましたか?」という声が響いて、それを聞いた母親がちょっと焦りながら天井に向かってまたバカデカイよそ行きの声で「水が飲みたいと言っているんですけど飲ませてもいいでしょうか?」(ここで水の返事が聞けると思っていたら・・・)看護婦さんが「ちょっと待って下さいお部屋に行きますので〜ぇ」って来るんかい!それやったら最初から来いや!なんやってん今のバカデカイ音の会話は!!

こんな会話がこれからイライラすることに集約されている気がします。
自分で動ければどうという事は無い事がいちいちイライラさせられる。
それが間違った考え方にしても、とにかくフラストレーションの溜まる日々の始まりです。

しばらくして看護婦さんが来て

看護婦さん「どうしましたか?」
(どうかしましたかってお前さっきの会話はなんやってん)

母親「咽が痛いから水が飲みたいて言っているんですけど飲ませてもよいでしょうか?」
(また説明かい)

看護婦さん「北嶋君咽痛いの?」
ワレ何回同んなじこと聞いとんねん)

「はい」
(我慢や我慢!もうちょっとで水が飲める)

看護婦さん「麻酔のチューブが咽に当たって痛いんやねぇ。ちょっと待っててください先生に聞いて来まから」
(なぁぁぁにぃぃぃ〜?!聞いてくるだぁぁぁ?!じゃあなにかい?今水飲まれへんのか?なんやねんそれ!今の女はなにしに来てん!(殺))

そう言いながら部屋を出て行きました。

看護婦さんが出て行ってすぐに!!

「水をくれ!」
(わかってるよなぁ(脅))

母親「今看護婦さんが先生に聞いて来るって言うてたやないの!」
(そんなん言うてもあげへんよ)

「関係あるかそんなもん!早く水くれ!」
(なんでこんな簡単なことがわからんねん)

母親「ちょっとぐらい待ちぃなぁ」
(この子は何でこんなんやろう(涙))

「あんなもん待ってたらいつまでたっても飲めるかぁ!早く飲ませろ!」
(咽が痛いのに喋らすなよぉ(涙)早くぅ)

母親「あかん!」
(何と言われようと)

「お前何のためにおるねん!黙って飲ませんかぁ!」
(どう言うたらわかってくれるねん(涙))

母親「・・・」

「こら!ボケッ!ワレなにシカトしとんねん!お前ほんまにむかつくのぉ!お前がいらんことするから待たなあかんようになったんやんけ!だから最初から黙って飲ませたら良かったんじゃ!ボケッ!」
(水の事はどうでも良くなった。)

母親「そんなこと言うても勝手に出来ひんやないの!」
(母親も切れていた)

「うるさい!ボケッ!もう一回ナースコール押せ!」
(でっかい声が頭に響くし言うことは聞かんし!お前じゃ話ならん)

母親「押してどうすんのよ(;;)」
(何言い出すの!?)

セカスんじゃボケッ!黙って待ってられるか!」
(いらんこと言うてんと早く動け)

母親「じゃあ押すからあんたが言いや!」
(半分引きつりながら捨てぜりふのように)

「当たり前じゃボケッ!お前になんかに任せてられるか!」
(またうだうだ言うてんのかぁ)

そんなアットホームな会話の後母親がしぶしぶナースコールを押すと天井のスピーカーから看護婦さんが「どうかしましたか?」とまたまたアホデカイ声で出てくるので、さっきは初めてでちょっとビビったけど今度は気合を入れて「水まだですか?」って普通じゃん!さっきまで勢いはどうしたの?と思うでしょう?天井のスピーカーに向かってはなんか気合が入らなくて・・・(^^;
とにかく、そういうと天井のスピーカーから看護婦さん達の声が漏れていて忘れていたみたいな雰囲気の中「お部屋の方に行きますので」と言ってスピーカーの音が途切れました。

看護婦さんが来るまでの間ちょっとドキドキしました。でも、さっきみたいに黙って引きさがらないようにテンションを上げて待っていると脳天気に看護婦さんが入って来て「お水の事ですよねぇ?」と言われて正直ちょっと焦りました。というのも僕のシュミレーションでは「どうかしましたか?」と同じことを聞いてくると思っていたからです。

思わず「はい」と普通に答えてしまいました。
このままじゃいかん!何とか体制を立て直さないと、と思っていると看護婦さんが「まだ先生から返事来てへんねん。もうちょっと待ってくれる」と言われて、この「もうちょっと待ってくれる」という言葉にテンションをあげるまでもなく自然に反応して、

「先生は今何してんの?!」
(時間稼ぎはもうええねん)

看護婦さん「・・・(焦)当直の先生に今聞いていますからもうちょっと待ってて」
(急に焦った様子で・・・)

「もうちょっとってどのぐらい?!」
(適当なこと言うなよ!)

看護婦さん「今日は当直の先生が〇〇先生(僕の主治医)ではないので・・・」
(焦りまくった様子で・・・)

「じゃ!いつわかるの?!」
(そんなことさっきは言うてなかったやんけ!ごまかされへんぞ!)

看護婦さん「とにかくもうちょっと待って!」
(逆ギレモードで)

「もうちょっと待ってって、それはさっき聞いた!いつ飲めるかを聴いているんですけど!」
(はっきりせえや!)

看護婦さん「だから今聞いて来るからもうちょっと待って下さい!」
(開き直った様子で)

そう言いながら怒ったように部屋を出て行きました。
僕はまだ話が終わっていないとばかりに興奮して呼び止めようとしましたがなにぶん咽が痛くて寝たきりで頭も痛いのでそのまま何かを言いかけた状態で尻すぼみに終わってしまいました。

看護婦さんが出て行って母親と二人きりになってなんだか変な空気でした。その前の母親との会話もありながらの今の看護婦さんとの会話ですからねぇ。

そんなんアンニューイな空気もそこそこに今度はすぐに看護婦さんが来て「口を潤す程度なら飲んでもいいそうです」なんでこんなに早いねん!とも思いましたがそんなところでかみ付いている場合でもないので黙って我慢しました。

看護婦さんがお茶の入った吸い飲みを「ゆっくりねぇちょっとずつ」と言いながら僕の口もとに持って来るので僕は待ってましたとばかりに一気に飲もうとすると看護婦さんが「ゆっくり!」と言いながら吸い飲みを引くのでちょっとむかつきましたが我慢して再び看護婦さんが吸い飲みを口に近づけた瞬間フェイントかけて十分引き寄せてから吸い飲みの口に噛み付いてごくごく飲んでやりました。

看護婦さんは少し怒っていましたがあきれた感じで「トローチも置いていきますから最後まで噛まずに舐めて下さいね」と言ってトローチを1つ口の中に入れていきました。

最初は少し我慢をしていたんですが途中から噛んでしまってトローチはすぐになくなってしまいました。

それからすぐにナースコールを母親に押してもらってトローチを要求したのですが一応薬ということですぐには駄目とのことでしたがそんなことですんなりと引きさがれる訳もなく、これが世に言うトローチ戦争ぼっ発です。

結局、朝まで嫌がる母親に「ナースコールを押せ!」と言い看護婦さんが来たら「トローチをくれ!」というのを繰り返した次第であります。

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