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4 伝統木造の継手 伝統の木造の継手の殆どは塔・社寺などの建物の歴史とともに成立して来ました。これらの建物の材は、 全て今とは比べ物にならない程、大きな断面を持っています。 ですから、小径木で構成される今の建物にそのまま使うには木の断面が足りずに、木は無理を強いられています。 さらに、継手を作成するめたに必要な寸法(補4-1)が足りなくて、伝統の形を真似たものの、 その効果がないような継手も出現し、今ではそれが当たり前になってしまいました。 木の耐力を出す為には、木の繊維を利用しなければなりません。 ですが、継手は木を切って造ります。 どのように切り目を入れるのか?繊維を残すのか! それを理解せずに形だけを真似して小断面の木に加工すれば、継手の耐力は落ちてしまうのです。 一般によく知られているアリ加工を例に解説していきます。 4-1 アリの仕口 |
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4-1図は一般によく知られている胴差と梁の関係 叉は土台と大引の関係ですが 右と左の図では明らかな違いがあります。 昭和40年代以前に書かれた木造を歌った本の中での継手の納まりは全て4-1右図が描かれています。 何時の間にか、本も現場も4-1左図のような納まりが一般的になってしまいました。 |
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4-2図は現在使われているアリ加工と柱のホゾの関係です。 アリ・ホゾの寸法を単純にとっていくと、 アリとホゾの間には繊維が残らずホゾから大入れまで大きな穴が空いてしまいます。 例え1ミリであろうともこの繊維は切ってはならないのが伝統の継手の基本でした。 120巾の材であれば、大入れの寸法などを工夫して、その繊維を残す事が出来るのですが、(4-3図)105巾ではそれも難しくなります。 「しかたない」ではすまない強度の低下が起こっているのに、誰もそれに目が行かず安易に繊維が切られています。 見かけはそっくりでも、これはもう伝統の木造の継手とは言えません。 こう説明しますと、ある方は「それでは、大入れの寸法やアリの寸法をもっと小さくしたら?」と言われます。 伝統の寸法は長い間に渡っての経験と実地の蓄積を積み重ねた経験値であると共に、仕事と道具にも結びついた寸法です。 この寸法はどこから来たのか? この“15”またはホゾ巾の“30”という数字はどこから来たのか? 大工の道具・定規であるさしがねの巾は15なのです。 そしてホゾは差金2枚巾分の30ミリなのです。 |
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大工さんはさしがねのこの巾15を使って、寸法を木に記入しているのです。道具がつかえない寸法を実際の加工現場に持ち込む事はしない事が作業をする場で間違いを起こさない条件ですから、現実的ではありません。 戦前の大工道具の写真を見たことがありますが、差金は15ミリ巾だけでなく、12ミリ巾もありました。 (現在12ミリ巾のさしがねはありません。) ですから戦前は、4-3図の加工を行なう道具が存在したことになります。 またある方は「それではホゾの位置をずらせて繊維を残せばどうだろう?」と言われます。 |
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木を利用する為に忘れてはいけないこと。 『繊維に力が流れるのだから、たとえ1ミリであっても繊維は切ってはいけない』 『木は繊維一枚で一金・鉄は1平方メートル当たり1トンの力を受け持つ』 |
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補4-1 材木の定尺(←流通している長さ)は現在 2m・3m・4mまでが規格品で、規格外として〜6m、それ以上となると特注品扱いとなります。 大工さんの話によれば、戦前は尺寸法ですから、 7尺(≒2120)・10.5尺(≒3180)・14尺(≒4240)‥が規格の寸法で今より少し長いのですね。 戦争中の輸送の統制からトラックの荷台に合わせてメートルでの寸法統一が決まったということですが、 この少しの長さの差が、伝統工法ー 得にー関西間といわれる寸法が崩れ去る要因の一つになったと言っていました。 きちんとした継手を造るには寸法が足りないのです。 |
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