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3.伝統の一(はじめ)を知ること
何事も基本に始まり基本に終わり、
基本なくして応用はありません。

「木造は簡単である」とは建築関係者の多くの人が思っている事ですが、「基本は一番優しくて、実は一番難しい」ことを理解して実践している人は多くありません。
木造の基本は「木の繊維を利用する」ことに尽きるのですが、この「木は繊維である」ことを知らない人はいないにもかかわらず、「繊維を利用した木造の納まり」を実行しない図面と現場と加工が溢れています。

伝統木造では行なわれなかった納まりで、現代建築では当たり前の納まりに土台があります。

「土台に柱を載せる」方法は、近代になってからの事(←はっきりした時期は調べてません。)で、これは、いわゆる設計側からの発想です。
柱が腐るから地面の湿気から遠ざければ、腐りにくいんじゃないかという机上の考えから「柱の荷重を基礎に伝え、柱と基礎を連結する」目的で基礎と土台の関係が生まれました。(←違ってたら教えて下さい)
ここで思い返して欲しいのは「木は繊維である」から力を出す為に「木は突っ張りに使う」という原則です。
「建物の力を柱から地面へ逃がす」(これは大工さんの原理です。)ために柱は直接基礎(礎石)に繊維を突っ張らせて着けなければなりません。(3-1)
社寺を思い出して下さい。柱は石の上に載せているだけです。(古い建物も礎石に柱が載ってます)
今は、どうでしょうか?基礎を立ち上げて、土台に柱を載せて、‥建物は強くなり、柱は腐らなくなったのでしょうか?
考えたはずの矛盾がそこにあります。

土台に柱を載せるという行為は、木の繊維を横に使った物(この場合土台)の上に力をかけるということになります。
土台に柱を載せるということは、繊維をひしゃげさせる方向に力をかけるということになります。当然柱が土台を押せば柔らかい繊維は凹み土台と柱の間には目に見えなくても隙間が出来ます。
これでは建物全体の力を正確に柱から地面へと伝える事は出来ません。
土台の上に柱を載せると柱は腐らなくなるのか?
木は腐るのは当たり前です。腐りにくくすることは出来ますが、腐らなければ自然の物ではありません。
繊維をタテに使い、水を繊維に添って流すのと、
繊維を横に使い、水が流れない状態では、横使いの方が早く腐ります。
そして、土台は繊維の横使いです。
木は外側から風化(腐る)するのですから、
(白太から腐って、赤味が残る)
長年の間に土台と柱の間に(風化して)隙間が出ます。
そしてガタツキが生じるということが起こります。(3-4)
風化した白太で柱の力受けなければなりません。
ガタツキが出ると建物の継ぎ手はその揺れによって傷んできます。
3-3
3-4
その頃の大工さんは土台へ柱を載せる事を嫌がりましたが、図面と法律によってこの納まりが標準となった時に大工さん達は(3-3)のような納まりを行ないました。こうすれば、一番腐りにくい芯(赤味)は基礎につきます。こうした方法も、なぜ柱を基礎につける必要があるのかを理解する大工さんがいなくなった時点で(図面の納まりの指示は土台に載せるのであって、基礎に着けるのではありませんから世代が下がれば、理解はなくなります。)土台に柱を載せることが重要で柱のホゾは短くなります。(3-4)
土台の上に柱を載せる場合でも、柱は長ホゾにして柱の中心にある赤味の芯を直接基礎へ着けることが大切なのです。(3-4)
ただし、柱を基礎につける場合は、基礎の精度が重要になります。要の基礎がキチンと施工出来ていることが肝心です。
いくら、基礎を地面から離しても、湿気から木を守る事はありません。
「石(御影石)は水を切るけど、コンクリートは水を呼ぶからね。」とは大工さんの言葉です。
石で水を切って、木は腐るものして柱の根継ぎの方法(修理する方法)があったわけです。
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