実際総合原価計算 

月末仕掛品の評価
 
量産品等のように生産が連続的に行われる場合には、個別原価計算ではなく、総合原価計算を適用する必要がある。総合原価計算とは、個別原価計算のように生産ロット別の原価を求めるのではなく、一定期間(通常1月間)あたりの製品原価を求める手法である。
 量産品では、月末時点においては、全ての生産が完了しているということは稀で、通常「仕掛品」(生産途中の製品)が存在する。そのため、総合原価計算においては、月末仕掛品の評価が問題となる。
 月末仕掛品の評価ができれば、次の式により製造原価を算定できるからである。

当月製造原価=月初仕掛品原価+当月製造費用−月末仕掛品原価

 月末仕掛品の評価には、次の3方法がある。

@平均法
 月末仕掛品は、月初仕掛品と当月生産品が均等に混在して構成されていると仮定して計算する方法:

             月初仕掛品原価+当月製造費用
月末仕掛品原価=--------------------------------
             完成品量+月末仕掛品換算数量

A先入先出法
 月末仕掛品は、当月生産品のみから構成されていると仮定して計算する方法:


             当月製造費用
月末仕掛品原価=--------------------------------
            完成品量−月初仕掛品+月末仕掛品

B後入先出法
 月末仕掛品は、原則として月初仕掛品から構成されていると仮定して計算する方法:

○月初仕掛品≧月末仕掛品のとき
            月初仕掛品原価
月末仕掛品原価=---------------×月末仕掛品換算量
            月初仕掛品換算量

○月初仕掛品<月末仕掛品のとき

月末仕掛品原価=月初仕掛品原価+当月製造単価×(月末仕掛品−月初仕掛品)

ここで、
           当月製造費用
当月製造単価=---------------------------------
           完成品量−月初仕掛品+月末仕掛品

 
実務的には平均法が多いようですが、月ごとの原価を厳密に区分する必要があるときは、先入先出法が適しています。先入先出法の場合の売上原価は、払出の都度いちいち計算するのではなく、先に月末仕掛品原価を求め、差引で求めるほうが実務的です。
 なお、後入先出法は月末仕掛品数量が月初仕掛品数量を下回ると過去の原価が売上原価として払出されるため、意図的に生産量を調整して、売上原価を操作できるので、個人的には好ましいようには思えません。

減損と仕損
 原価計算においては、生産中の減損や仕損の処理方法は次のやり方がある。

@正常減損度外視法
 正常減損を産出量から除いて製造原価と月末仕掛品原価を計算する方法である。この方法によれば、正常減損費は、製造原価と月末仕掛品原価が均等に負担することとなる。

A正常減損非度外視法
 産出量の計算をするときに、製造原価と月末仕掛品原価の他に正常減損費を区分して計算する方法である。減損費の正確な算定や負担を求める必要があるときに用いられる。

B異常減損
 非原価項目として扱い、営業外費用又は特別損失として処理する。(例:火災による損失等)

 一般的には正常減損度外視法で計算し、特別な管理を要する場合には非度外視法により計算することが実務的でしょう。

工程別計算
 製造工程が複数ある場合には、各工程ごとに工程費を求めるが、製品に集計する方法には累加法と非累加法がある。

@累加法
 その工程に投入された前工程の材料を計上するときに、前工程の完成品原価をもって計上する方法をいう。累加法によれば、各工程の完成品は、前工程費と当工程費を背負って次工程へ振り替えられていくこととなる。(俗に言う「ころがし計算」を行っていくことになる。)

A非累加法
 非累加法とは、前工程費を含めずに各工程費を計算し、それらを直接合計して製品原価を求める方法である。ただし、仕掛品原価を計算するときには、次工程以後の仕掛品に含まれるその工程の原価も含めて計算しなければならない。

 累加法により計算することが一般的です。

等級別原価計算
 同一工程において同種製品を連続生産するときに、製品を等級で区分できる場合に用いる総合原価計算である。等級製品の製造原価は等価係数を用いて一期間の製造費用を各等級製品に按分して計算する。

 製品別に仕掛品勘定も区分する組別原価計算の簡便法です。等価係数の設定方法に注意が必要です。

参考文献: 原価計算(岡本 清)

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