実際原価計算 

実際原価計算とは?
 
実際原価計算とは、製品の製造に実際にかかった原価を集計することにより、製品の原価を求める方法をいう。この方法は一見真実の原価を表しているかのように思われるが、実際には材料相場・作業能率・操業度等の変動に左右される偶然的な原価である。

 5月のようにゴルデンウイークがあると、操業日数が少なくなるので、実際配賦行うと実際原価は高くなり、利益は減少します。休日の多寡により利益が増減してしまうという問題が起こります。

 そのため、実際原価計算においても、製造間接費については、予定配賦率に基く正常配賦を行う。「予定配賦率」とは、予算上の製造間接費を予定作業時間で割った、1時間あたりの予定コストをいう。この「予定配賦率」に実際作業時間を乗じて原価を算出するが、予定配賦率と実際配賦率との差異は、「原価差異」として把握しておき、爾後に分析を行い、原因を究明する。


  実際配賦率×実際時間
=(実際配賦率+予定配賦率−予定配賦率)×実際作業時間
=予定配賦率×実際作業時間+(実際配賦率−予定配賦率)×実際 作業時間
=正常配賦+原価差異


材料費会計
 材料の実際消費量を把握する方法として、継続記録法棚卸計算法がある。継続記録法とは一品目ごとに受払及び残高を記録していく方法であるため、材料の会計管理が可能となる。一方棚卸計算法とは、期中は材料の受払を記録せず、期末に材料の実地棚卸を行って、差引により期中消費量を求める方法である。

 実務では、期末実地棚卸高に最終仕入原価を乗じて期末評価額としている会社が多くあるようですが、これでは材料の会計管理は行えません。極端に言えば、横流しされていても分からないのです。材料の受払を記録することが損益管理の第一歩です。

労務費会計
 労務費には、賃金給料等の労務主費以外に労務副費といわれる費用が存在する。労務副費とは、社会保険料等の法定福利費や退職給付引当金繰入額などのように労働力の調達に付帯する費用である。福利厚生費は、個人別に把握できないため、原価計算基準上は経費として取り扱われる。

 社会保険料の会社負担額は、賃金の10〜15%に及びますので、保険というよりむしろ税金といった感すらあります。否、税金は赤字のときは納税が免除されますが、社会保険料は赤字でも支払義務があるので、もっと過酷です。

製造間接費会計
 予定配賦率を求める際に使用する製造間接費予算には、固定予算と変動予算がある。固定予算とは、実際操業水準の変化に対応しない方法であり、変動予算とは、実際操業水準の変化に対応して予算許容額を算出する方法である。変動予算としてよく使用されるのが、公式法変動予算である。公式法変動予算では、予算許容額を
   予算許容額=固定費+変動費率×操業度
により、求める。この方法によれば、原価差異を、予算差異操業度差異能率差異の三つに分解して分析することができる。

 製造間接費は通常固定費が殆どですが、電力料等のように操業度に応じて変動する費用がある場合には、上述の変動予算を用いて管理する必要があります。変動費があるのに、固定予算を用いて管理してしまうと、正しい原価差異の分析は行えません。


原価差異の処理
 原価差異の処理は次のように行う。
(1)材料受入価格差異については、材料の払出高と期末在高に材料の種類別に配賦する。
(2)材料受入価格差異以外の原価差異については、原則として当年度の売上原価に賦課する。ただし、原価差異が多額の場合には、当年度の売上原価と棚卸資産に科目別に配賦する。

 原価差異を品目別に配賦する向きもあるようですが、既に販売してしまった製品の原価を逐一修正したり、計算の終わった棚卸資産評価額を一品別に全品再計算するのは無益なことが多いです。原価差異の分析は品目別に行っても、評価計算は総額で行えば管理もラクです。

参考文献: 原価計算(岡本 清)

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