見積原価計算 

見積原価計算の定義
 
見積原価計算とは、一製品あたりの原価を全くの勘で見積もって決定し、この原価に一定のマージンを加えて売価を決める方法をいう。商的工業会計を実施する場合には、製品別原価を算定できないので、この方法は、売価の設定にあたり不可欠の計算方法となる。

 見積原価は、根拠のある金額ではないため、実際の発生コストとの間に差額が発生する。この差額は、見積原価差額と言われる。


 つまり、簿記だけはつけているが、原価計算を全く行っていない状態です。しかし、売価は決めざるを得ないので、社長の経験と勘で原価を決めることになります。これでは、締めてみないと、儲かっているのか損しているのか分からないので、眠れない夜が続くことになりそうです。

見積原価計算の長所
 見積原価計算の一番の長所は、記帳管理が簡単で事務経費及び事務処理時間を節約できる。また、勘で決めたとは言え、締めてみれば見積原価が合っていたか、高かったか、安かったかは分かるため、一応正確性の検証はできる。

 見積原価の検証ができたときは、決算は終わっています。見積原価が実際のコストよりずっと安かったら、大幅な見積原価差額が出てしまい、「高い授業料」を払うことになってしまいます。

見積原価計算の短所
(1) 消費量の内訳が分からない
 見積原価計算では、材料等の消費量を棚卸計算法により、(期首有高)+(当期仕入)−(期末有高)により求めるため、材料消費量の内訳が分からない。

 期中に仕損や盗難があっても、発見できず、全て製品原価に取り込まれてしまいま
す。必然的に従業員の仕事も甘くなります。

(2) 直接材料費と間接材料費の区別ができない
 見積原価計算では、棚卸計算法により原価を計算するため、直接材料費(製品製造に使用する材料)と間接材料費(製品の製造管理に使用する材料)の区別ができない。

 
例えばオイルを無駄に使っていても分かりません。

(3) 部門別・支店別管理ができない。
 材料や労務費がどの部門や支店でいくら消費されたのか分からないため、部門別・支店別の原価管理ができない。

 原価管理ができないと、部門別・支店別管理も精神論に終始してしまいます。

実際原価計算への移行
 見積原価計算は、(原価)+(利益)→(売価)という前提に基いているが、市場競争の激化に伴いこのような考え方は通用せず、(売価)−(原価)→(利益)、さらに進んで、(売価)−(利益)→(原価)という状況に至った。このような状況では、製品の実際原価を確定し、実際原価そのものを下げなければ、企業間競争から脱落するようになった。そのため、原価計算も見積原価計算から実際原価計算へ移行する必要が生じた。

 やはり見積原価計算では、不十分といわざるを得ません。
 実際原価計算の導入は決して早すぎると言うことはありません。

参考文献: 原価計算(岡本 清)

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