商的工業会計 

商的工業会計の定義
 
商的工業会計とは、商業簿記の計算記録方法をそのまま工業に当てはめたものである。したがって、原価の計算は棚卸計算法により計算される。棚卸計算法とは、「原価=期首繰越高+当期仕入高−期末残高」 によって、計算する方法である。

 つまり、ひらたく言えば製品別・部門別の管理を行わない丼(どんぶり)勘定ということです。

商的工業会計の長所
 商的工業会計の長所は、何といっても計算事務に手数がかからない点です。部門別・製品別の原価・損益管理を行わないので、計算事務は大幅に節約されます。

 決算書の作成はできますが、果たしてそれだけで良いのでしょうか?

商的工業会計の短所
(1) 売価を決められない
 もし製品別の原価が分かれば、これにマージンを加えて製品の売価を決めることができるが、商的工業会計では製品別の原価が不明であるから、売価決定に役立たない。

 せっかく簿記をつけても決算書の作成にしか役立ちません。

(2) 期中に損益が分からない
 商的工業会計では期末棚卸高が分からないと、原価を計算できないため、期中には損益を計算できない。

 
決算したら赤字だったという事態では遅すぎます。

(3) 部門別・支店別管理ができない。
 材料や労務費がどの部門や支店でいくら消費されたのか分からないため、部門別・支店別の原価管理ができない。

 原価管理ができないと、部門別・支店別管理も精神論に終始してしまいます。

(4) 製品別管理ができない。
 製品別の原価が分からないため、どの製品が儲かっていて、どの製品は赤字なのかを把握できず、利益管理ができない。

 忙しいのにちっとも儲からないということはありませんか?

原価計算の誕生
 以上のような商的工業会計の欠陥を克服するため、原価計算が誕生した。原価計算を使用することにより、売価決定や期中損益の把握が容易になる。

 原価計算の誕生は必然性があったわけです。
 原価計算の導入は決して早すぎると言うことはありません。

参考文献: 原価計算(岡本 清)

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