資本コストと資本配分 

資本コストとは?

 資本コストとは、設備投資に必要な資金のコストであり、資本コスト率とは、資本コストが必要とする割引率をいう。

 設備投資を行うときには、たとえ無借金経営であっても設備投資に調達した資金のコストがかかっている。なぜならば、このような資金は、本来株主に配当するか配当したときと同様の利回りで運用する必要があるからである。

 例えばリースか購入かという意思決定をするときに、購入時の費用は資本コスト率で割引いて考える必要があります。これもつまり、会社の資金は全て外部から調達されているため、無利子の資金というのはあり得ないからです。

負債の資本コスト率


 負債の資本コスト率=負債利子率×(1−実効税率)

 負債利子は税務上損金算入されるため、資本コスト率計算で用いられるキャッシュフロー上は、実効税率を乗じた金額を控除した残額がキャッシュアウトする利子額となる。


 税前利益2,000円のとき、税引後は1,200円です。一方利子500円を追加的に支払うと、1,500円に対して課税されるので、税引後は900円です。キャッシュは300円しか減少しません。これは、利子500円×(1−40%)と同額になります。

利益剰余金の資本コスト法

 利益剰余金の資本コスト率には、DCF法CAPM法がある。

1) DCF法
 資本コスト率=(年度末の配当/現在の株価)+配当の成長率

 DCF法は現在の株価は予想される将来の配当の現在価値に等しいと仮定する方法である。

2)CAPM法
 資本コスト率=安全証券利子率(risk free rate)+(均衡状態の期待投資利益率−安全証券利子率)×その株式のリスク係数

 CAPM法は、安全証券の利子率にその株式のリスクプレミアムを上乗せして計算する方法である。

 利益剰余金に資本コストがかかるのは、本来配当すべき利益剰余金を会社側が預って運用しているという考え方に基いています。

資本金等の資本コスト率


 資本金等の資本コスト率も、DCF法CAPM法がある。

1) DCF法
資本コスト率=(配当/株価−(1−発行費割合))+配当成長率

 DCF法は現在の株価は予想される将来の配当の現在価値に等しいと仮定する方法である。

2)CAPM法
 資本コスト率=CAPM/(1−発行費割合)

 CAPM法は、安全証券の利子率にその株式のリスクプレミアムを上乗せして計算する方法である。

 資本金等は、資本金及び資本剰余金から構成されます。

加重平均資本コスト率(WACC)


 企業においては、上記の「負債の資本コスト率」、「利益剰余金の資本コスト率」、「資本金等の資本コスト率」を、調達割合に応じて加重平均した資本コスト率が現実の資本コスト率となる。

加重平均資本コスト率=負債割合×負債利子率×(1−実効税率)+利益剰余金割合×利益剰余金の資本コスト率+資本金等割合×資本金等の資本コスト率

資本配分について

 限りある資本を、複数の投資案件に対してどのような配分するかという問題については、以下のように整理することができる。

 投資案件の整理
      ↓
 相互排他的投資案については、正味現在価値法により選択
      ↓
 全て独立投資案となる
      ↓
 内部収益率の高い投資案から予算限度額まで順次採用する。

 限られた資本の中では収益率の高い投資案件から順次選択するという考え方です。

参考文献: 原価計算(岡本 清)

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