事業部の業績測定 

事業部制のメリット・デメリット
 
社内の特定の営業部門等を独立させて、「事業部制」を取る会社が多くなってきている。事業部制には、以下のようなメリット・デメリットがある。

メリット デメリット
賢明な意思決定
迅速な行動
やる気・貴重な経験
部分最適≠全体最適
諸経費がかかる

 事業部制を取ることにより、現場に精通した事業部長による賢明な意思決定や迅速な行動を行うことができ、現場のモチベーションも上がるが、一方セクショナリズムの横行や管理費の増大といったマイナス面もある。

 事業部制に移行するか否か、また事業部長にどれだけの権限を与えるか否かは各社ごとに異なります。また、「事業部長ができる人」の育成の問題も重要です。

事業部の業績測定
 事業部の業績を判断する指標としては次のようなものがある。

管理可能営業利益=事業部売上高−変動費(製造・本社)−管理可能固定費

管理可能ROI=(管理可能営業利益/管理可能投資額)×100

管理可能RI=管理可能営業利益−管理可能投資額×資本コスト率


事業部は、経営の全権を委任されている訳ではないので、事業部で管理できる管理可能費に基いて業績を判断する必要がある。

事業部長には、通常本社の移転や管理部門の増減等の権限はありませんので、売上や原価等の自分でコントロールできる範囲に絞っての業績を測定する必要があります。



※1 ROIとは
 ROIとは、投下資本利益率(Rate of return On Investment)のことをいう。
 ROI
=利益/資本
=(利益/売上高)×(売上高/資本)
=売上高利益率×資本回転率

ROIを高めるためには、利益率を上げることと資本の回転率を高めることが必要です。


※2 資本コスト率とは
 資本コスト率とは、調達源泉別の加重平均コスト率でWACC(Weighted Averege Cost of Capital)ともいう。株主資本にはリスクプレミアムが加算されている点と、借入金利率は税引後のレートである点に留意する。
 WACC
=借入金利率×(1-実効税率)×(負債/総資本)
+(リスクフリーレート+リスクプレミアム)×(株主資本/総資本)

※3 RIとは
 RIとは、残余利益(Residual Income)のことをいい、資本コスト差引後に残る利益という意味である。

注意して欲しい点は、会社の資金は全て有償ということです。「無借金だから調達コストがかからない」というのは誤りです。会社の現金預金に対しても配当を支払う必要があり、資本コストがかかっているからです。



参考文献: 原価計算(岡本 清)

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