敵を倒しつつ、谷の出口へと向かう。
敵の姿を見つけるたびにフィソラが火を吐き、それだけで戦闘が終わる。
そして俺達は今、谷からの出口の少し手前にいる。
「あれだけ敵が多かったんだから、フィソラを変身させておいて、よかったな!」
横で、歩いているアイリスに話しかける。
「そうね、変身していたおかげでここまで楽にこられたんだもの。
無駄じゃなかったわね!」
自分のとった行動が、正解であったからか、太陽のような笑顔で、アイリスが答える。
『私も同感だ。無属性のままでは、少し苦戦したかもしれない』
「フィソラもそう思うって」
今回実際に戦ったのはフィソラだ。本人が言うのだから、間違いなく変身してよかったのだろう。
「ご苦労様、フィソラ!」
「ほんと、よく頑張ってくれたよな。ありがとよ」
最初の戦闘の時、フィソラがいなければおそらく負けていただろう。本当にありがたかった。
「皆さん、つきましたよ。出口です」
話しているうちに谷の出口まで来た。もう、すぐそこだ。
谷の向こうは、森のようだ。木々がうっそうと生い茂っている。
時間を見ると、変身してから6分。急いだせいだろう。やけに速く谷を抜けた。
「さて行くか!もうひと踏ん張りだ。谷を抜けたら休憩しよう」
風が当たっていたとはいえ、急いだせいで少し疲れた。ここいらで少し休むのもいいだろう。
谷を抜ければ木陰がある。きっと、ゆっくり休める!
「気持ちよさそう!森林浴も出来るなんて運がいいわ!先言ってるわね」
リーリアが駆け出す。谷の出口はすぐそこ。そして巣穴も見当たらない。
だが、そのとき俺達は誰一人気づいていなかった。空を飛び迫る奴に!
谷を抜ける直前、ゴーレムが降り立つ。
1体の、雲製の巨大な鷲の姿のゴーレム!そしてその雲は黒く、時折怪しく輝く。
そして核が黄色い。素早い風属性のドラゴンだ。
「なによ、もう少しで谷を抜けられるのに!」
リーリアが、怒り出す。休めると思ったところで強いのが出たのだから、解らないでもない…。
敵の体が強く光りだす。まずい!
「リーリア、離れろ!危ないぞ!」
大丈夫よ!今までの敵を見る限り、きっとこのゴーレムも、大したこと無いわよ!
敵からは離れる。防御力の低い魔法使いの基本よね!急いで離れちゃおっと!