ざっくざっく…ざっくざっく…

小気味良い足音を立てながら俺は黙々と歩いている。
まだモンスターに遭遇するどころか気配すら感じない。

 ―…本当に…孤独…―

でもこれは仕方ないんだ。自分の選んだ道だから…。


道は完全な未開地でないから大分楽だし、天候も楽観は出来ないものの今はそこそこで、俺の耳に入ってくるのはクリアな雪の声だけ。
 まぁ、無用な戦いは避けられている。
 天候が変わらない内にさっさと調査を済ませるとするか。

 ざっく…ざっく…ざっく…ざっく…

 俺は孤独な世界をひたすら歩いた。



 急に風が厳しいものに変わった。
 俺は空を見上げた
 視界内には今にも雪が降りそうな厚い雲が隙間なく敷き詰められていた。
「ああ…こういうのを『雪催い』って言うんだっけ?」
 俺はそんなつまらない事を考えていた。全く我ながらくだらない。
「まずはさっさと『休憩所』を探して休まないと…。」
 『休憩所』というのは、この山の中間地点に当たる位置にある天然の洞窟で、強い吹雪が吹いてきたときにはそこでビバークしてやり過ごしていたらしい。…尤もそれは事前準備の時に発見した古臭い古文書から偶然探し当てたもので、あるなんて保障は正直ほとんどない。
「うーん…らしくない…。」

 すると周りから…
「っ!?殺気!!」
俺は周りを見回しながら頭の中を戦闘用に切り替える。
すると視界範囲内に『奴ら』は現れた。
「ソルビースト…やっぱりな…」
ソルビースト…古代の王国で主に戦争の捨て駒として古代人に作られ、使役されていた『人工生命兵器』…天然のワーウルフとは少し違う『悲しき生き物』だ。奴らは俺の周りを円形に囲んだ。
数は5匹…知性もそこそこあるようだな…。
「さて…と…」
俺は今更ながら腰の鞘に収まっていて今日手入れしたばかりの剣を抜いた。
剣全体が長くも短くもない中立的なデザインで、このような類の剣は様々なカテゴリーがあるがどれにも当てはまらないので『雑種』と呼ばれている。…汎用性が高い分『昔の』騎士達には邪道扱いされていたとか言うが…俺は騎士じゃないのでどうでもいい。
さて…どうするかな…。


@先手必勝
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