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2015/12/02(水)

在所の青年が死んでしまった。仕事中に機械に挟まれて・・・
奥さんと女の子二人を残して。

俺の入院中に、お見舞いにも来てくれたのに。即死じゃお見舞いにも行けない。
今朝、当家にお悔やみに行ってきた。
遺体は帰ってきていて、当然冷たくなっていた。
柔道の大後輩で、子供の時から知っていて、今じゃ俺より大きくて、
この在所が大好きで、高齢集落の有望株だったのに・・・

この前まで、俺が一番お葬式に近かったのに、分からないものだ。
遺族の涙につられて泣けて泣けて。
まだ、俺は俺の家族にこんな涙を流させてはいけないと感じた。
救いは二人のセガレが二人とも立派に成人してくれてることと、
嫁さんは大企業で、お局さんに昇格してること。

今夜はお通夜。寒いし、抵抗力ないらしいし、嫁さんに行ってもらう。

2015/12/04(金)

◇白骨の章

結局、通夜にも葬儀にも出席してきた。
棺の中に柔道着も入れて荼毘に伏してきた。
最近は、ダイオキシンがどうのこうので、斎場でも金属の遺品は入れられないから。

子供のころは、まだ、墓場の釜で遺体を焼いていた。
下っ端がのぞき窓から中を覗いて、まだ耳がとろけ落ちただけとか、腹が膨らんできたとか、
焼け具合を確かめる。
子供たちは遠くから立ち昇る煙を見ることだけが許される。
「黒い煙は悪い人〜白い煙は良〜い人ぉ〜」とか怖いもの見たさで唄いながら・・・。

座棺だったから、焼ける途中で突然立ち上がる仏さんや、桶をけ破って釜のフタから足を出してみたり、
それをまた押し込んで薪をくべる。俺も大人になってから二回人を焼くのを経験した。
その後は斎場ができて廃れたが、年配の人は、住民に送ってもらえなくなったと嘆いてた。

今回の仏さんは、体も大きく若いから、さぞかし昔の焼き方じゃ苦労しただろう。
が、重油で高火力の最上の釜では、定刻通りに白骨になってしまった。
小さな壺に納まって、ご浄土に帰られた。

それ、人間の浮生なる相をつらつら観ずるに、おほよそはかなきものはこの世の始中終、
まぼろしのごとくなる一期なり。さればいまだ万歳の人身をうけたりといふことをきかず、
一生過ぎやすし。いまにいたりてたれか百年の形体をたもつべきや。
われや先、人や先、今日ともしらず、明日ともしらず、おくれさきだつ人はもとのしづくすゑの露よりもしげしといへり。
 されば朝は紅顔ありて、夕には白骨となる身なり。
すでに無常の風きたぬれば、すなはちふたつのまなこたちまちに閉ち、ひとつの息ながくたえぬれば、
紅顔むなしく変じて桃李のよそほひを失ひぬるときは六親眷属あつまりてなげきかなしめども、
さらにその甲斐あるべからず。さしてもあるべきことならねばとて、
野外におくりて夜半の煙となしはてぬれば、ただ白骨のみぞのこれり。あはれといふもなかなかおろなり。
されば人間のはかなきことは老少不定のさかひなれば、たれの人もはやく後生の一大事を心にかて、
阿弥陀仏をふかくたのみまゐらせて、念仏申すべきものなり。
あなかしこ、あなかしこ。

残された二人の中学生の娘さんの号泣が耳から離れない。

この字で、一番葬式に近かった俺は複雑な気分。

2015/12/09(水)

暇でしょうがない

退院から二週間が経った。お外は寒いし雑菌がいっぱい。
ということで、家から出してもらえない。唯一、おととい退院後最初の外来で出ただけ。
採血して、結果が出たらCTスキャン〜外来診察。
「調子はどうですか?」と主治医さんが尋ねる。「絶好調でっす!」勇ましく答える。
でもね〜血液検査の数値・・・やはり白血球とタンパク質が足りないんですよ。
引き続き、感染症予防に心がけて栄養をたくさん採ってください。ということ・・・。
また首回りをCT画像と照らし合わせながらグリグリされる。
「今のところ、再発の兆候はありませんね。」と言われた。

白血球の減少は仕方ないことだとしても、いわゆる栄養失調とは・・・。
確かに、舌の三分の二は腕から持ってきた筋肉や血管で創った模造品。
喋るのも舌足らずだし、何より物を食べることが非常に難しい。
自由に動かないとこに持ってきて、少々分厚い。
油断すると、すぐに噛んでしまう。しかも、痛感神経がないから、噛んでも痛くない。
知らずにいると、そこから感染症になって、肺炎とかでまた入院だという。

んで、補助食品で、プロテインを買ってきた。パッケージには、
筋肉隆々のアスリートのイラスト。説明書によると、トレーニング後三十分以内の服用が望ましいと。
んで、朝、早起きして腕立てやら腹筋して、外に出てはいけないんだけど、早朝の澄んだ空気ならええやろと、
とりあえずトレーニングして、飲んでみた。

 退院後二週間目の夜明け

高校生の時、筋肉付けようと、小遣い銭はたいて買った、当時出始めたばかりのプロテイン・・・
あれは、やたら高額で、やたら不味かった。まるでバリウム飲んでるみたい。しかも、雑誌の裏ページの通販。
全然効果なかった覚えが・・・
ところが、今回買うときに、マンゴー味とか、バナナ味とか選べる。で、カフェ・オレ味を選んだ。
水で溶かして飲むと書いてあるが、牛乳に溶かして飲んでみた。・・・・どちらかというと美味しい。
ほぉ〜〜今回は身体作りというより英y峰失調対策だから、気が楽。来週の採血が楽しみになってきた。

ライト級がミドル級のボクサーみたいな身体になったりして・・・。

2015/12/13(日)

禁煙

入院中はもちろん禁煙でした。
さすがに喉に穴が開いてるときは完全禁煙。ストローで水すら吸い上げられないのだから・・・。

そのうち喉笛を外してもらうと、やはりタバコも吸いたくなる。籠の中の鳥。
もちろん下の売店には売ってない。んで、病院の外にあるローソンまで忍者行動。
ナースセンターを腰を直角に曲げて、すり抜け、8階から1階まで、非常階段で降りて、
守衛さんのいる裏口から、いかにも外で携帯電話を使うのだという素振りで携帯をクルクル回しながら出獄。
急ぎ足でローソンに向かいタバコをゲット!

しかし、パジャマ姿だし、大きな病院だから、様々なシフトの先生や看護師、職員が絶えず出勤やら帰宅で、
そこいら中車で走ってる。見つかってチクられるのは分かってるから毛糸の帽子とサングラスで行動。
さすがにそれで店内に入るのはマズいから、うつむいてレジでメモを渡す。
そう・・・・喋れないから「エコーひとつ」と、あらかじめ書いておいたメモ。
言葉で伝えようにも、「ネコーヲヒロウ」としか発音できない。

いぶかしそうな目で店員に見送られて、同じ要領で病室に戻り、
個室だからトイレは俺以外は入ってこない。
んで、洋式トイレの便座の上に立ち、天井の換気扇間近でタバコに火を点ける。
火災報知器の方に煙が行かないように副流煙も吐いた煙も、換気口に向かうように工夫する。

・・・・って、美味いわけないやんけ!隠れて吸う高校生よりみじめ・・・
で、携帯吸い殻入れの吸い殻を、トイレで流し、出てから念入りに歯磨き。
しかし、吸わない人からすると、やはり分かってしまうのだ。

検温に来た看護師が「Tarouさん!タバコ吸ったでしょ!!」
首を横に振っても許してくれない。たちまち引継ぎノートに書かれて主治医にまでも伝わってしまう。
もちろん、嫁さんにも先生からチクられる。タバコは没収、嫁さんには小銭も取り上げられて、
下の売店がセブンイレブンだから、ナナコカードだけ渡されて、サイフの中はカード一枚。現金0円。

その後三か月ほど下の売店で買ったものと言えば、ブラックの缶コーヒー、バームクーヘン、
ひこにゃんのキーホルダー、牛乳、クロスワードの本・・・
食い物もたくさん売ってるけど、俺は嚥下食しか食べられない。

 プロテイン飲み始めたのが二日前だからこんなもん。

退院してきて、真っ先にタバコを買ってきた。堂々と吸ってみた、
事前に、コーヒーをドリップして、チェアーに腰かけて優雅に・・・
目まいがして、冷や汗が出てきた。
退院の時、禁煙外来に行かされて、薬を処方された。朝晩飲めと・・・
すっかり薬漬けになった俺は、抗がん剤やら、悪くもないのに胃薬やら抗生剤やら・・・
爺いみたいに、薬を飲むのが日課。物によっては三食ごとに・・・
その中に禁煙の薬もあるわけだが、副作用に特に喫煙した場合は吐き気とか頭痛とか書いてあった。

んで、とりあえず禁煙。「吸いたくなったら気分転換に深呼吸とか軽い体操を」
とか書いてあるから、俺は筋トレすることにした。
ちょうど、タンパク質が足りないということでプロテイン飲み始めたから、
肉体改造に丁度いいかも・・・一週間ごとに自撮りで写真とろ〜っと。
が、腹筋運動はどうなのだろう?まだビーチボールの空気栓がお腹に付いてるし・・・

2015/12/18(金)

PET検査

PET検査なるものがある。陽電子放出断層撮影法(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)と言うらしい。
癌細胞が、どこに巣食ってるのか、どこかに転移していないだろうかを、調べる検査。

 この画像は俺のではない。

CTの画像と、PETの画像を合成すると、ガンのある場所がクッキリ見えるという代物。
滋賀県にはこの検査ができる病院は草津市に一か所だけ。三万円ちょっとかかる。
今度で二回目。最初は、ガンと診断されてすぐに受けた。主治医の先生が言ったけど、
地域格差があるそうで、隣の京都などは、たくさんあるらしいけど、患者の数も多い。
検査の予約でも、三か月待ちぐらいはザラらしい。
ところが、田舎の滋賀じゃ、三日待ち。田舎も捨てたもんじゃないな〜。
三か月も待ってたら、治療の前に死んじゃうヤン!

んで、初回の時は舌の左奥と、左リンパ節に、パチンコ玉ぐらいの白い輝きがはっきり映った。
場所が確定して、舌の三分の二とリンパ節、転移防止のために念のため右のリンパ節を郭清(切除)。
たちまち重病人扱いの病院生活。

退院後一か月が経ち、初回から四か月経ったということで二回目を受けてきた。
放射性医薬品なるものを注射で注入されて、体中にまんべんなく行きわたるように、水分を採って一時間の睡眠。
その後、20分ほどかけてCT撮影、40分間隔をあけてPET撮影。
その画像をディスクに焼いてもらって持って帰ってきた。封がされてるから見るわけにはいかない。
ってか、恐らくこのPCには再生するソフトなんか入ってない。
今度の月曜日、市立病院に持って言って、主治医と鑑賞することになっている。
頸から下に明るい部分が見つかると、再転位・・・。ドキドキ・・・。

癌細胞は他のどんな臓器よりも栄養(特に糖質)を好むらしく、糖質は、必要とされている臓器に集中。
ので、真ん中の画像では脳とか肝臓なんかは正常でもオレンジ色になる。上の画像では右肺の上下にガン巣、
下の左右のオレンジ点は、正常な肝臓。CT画像と合成すると、右の画像。
ガン巣だけがはっきり表示されちゃう。・・・という仕組みらしい。

 12/13  12/17

ん〜〜〜まだ、シュワちゃんみたいにはならないなぁ〜。

PET検査 (結果)

21日、草津から持ち帰ったディスクを市立病院に持って行って、主治医の先生と観察。
見た画像には、一つも明るい光点がない。つまり、ガン細胞が見つからない。
画像と照らし合わせて、俺の首回りを、グリグリ押しまくる先生。
触診でも、やはり見つからない。「・・・・とりあえず、おめでとう。」と仰った。

四か月経って、首から下の臓器にも転移はないらしい。以前のPET検査では、
見つからなかった小さな転移がモシあれば、四か月の間に成長してるだろうし、
それも見つからなかった。

「でも、飲み続けた抗がん剤で、抑制されてるだけという可能性もあるから・・・」
やはり最低一年間は、抗がん剤は続けなければいけないらしい。
ま、この抗がん剤では、俺の場合、副作用がほとんど感じられないから、どうってことない。
一週間に一度の血液検査のための通院だけかな。
っていうか、その日だけは堂々と家から出してもらえるから、かえって嬉しい通院^^

副作用がないといっても、白血球は人並みに減少してるから、お風邪を召してもイケないという。
怪我しても、血小板も少なくなってるから血が止まりにくいという。
仕事を再開しても、他人が雑菌を持ち込むから、手洗いとうがい、口腔内消毒は念入りにという。

ということで、年明けから仕事を再開しようと、家族会議で決めた。
まぁ、仕事といっても暖房の効いた部屋で、ダラダラしてればいいのだからありがたい。
病院での、土産話も山ほどあるし、放射線治療で被ったデスマスクも持参してある。
舌足らずの喋り方でも、声が出せない期間に身に着けた手話みたいなボディランゲージを添えて、
面白おかしく仕事ができそう^^

ただ、自覚する副作用として、視力低下や、まぶしさってのが、項目の一番下にあるのだが、
この「まぶしさ」だけが当てはまってしまった。視力低下は全くなく、どんな小さな字でも読めるし。
そこそこ遠くまで見える。
でも、外に出ると非常に眩しい。うす曇りでも、サングラスが必要なくらい。
それを口実に、かっこいいサングラスを二個も買ってもらった。アマゾンで・・・。

ということで、夕べは「とりあえず治癒記念パーティ〜」を嫁さんが開いてくれた。
食卓には、マルシンハンバーグと、やわらかロールケーキ、牛乳・・・と、豪勢な食べ物が・・・
まだ、刺身とか生ものは、感染源になるから食べさせてもらえない。
温泉玉子とか、かぼちゃの煮つけ、マカロニグラタンとか、熱処理してなきゃダメなのです。

そのおかげで、血液検査は、白血球の減少以外は、きわめて健康で、20歳代の数値がズラリ。
健康な死にかけ野郎です。

2015/12/24(木)

Merry Christmas Everibody!!

我が家でクリスマスを迎えられた。
嫁さんとお揃いの腕時計をプレゼント交換した。
G-SHOKの腕時計。ソーラー電波時計。
俺が10万49歳、嫁さんは10万44歳になると1秒狂うという・・・・

何歳まで生きられるか分からないけど、多分、俺の方が早いと思う。
その日まで、同じ時間を生きましょうと、嫁さんと交換した。
賢者だか愚者だかわからないけど、素敵なクリスマス・イヴ。
なるべく、これが遺品にならないようにガンバロウ!

ってか、この腕時計、嫁さんのBABY-Gの方は可愛らしいけど、
俺のはメンズでやたら大きい。金属ベルトも3駒詰めた。
時計の直径が手首の太さとそう変わらない。
時計に見合った逞しい腕にすべく、筋トレに更に力が入る。

専業主夫

まだ仕事を再開してないから、暇でしょうがない。
嫁さんも、ようやく仕事が休みに入り家に居てくれるけど、
昨日までは専業主夫。T1号もバイトに行ってるし、家には婆さんと二人だけ。

まだ食べられる食材も限られてるから、自分の食事は自分で用意する。
婆さんにやってもらうと、食感がどうとか、歯ごたえがどうとか、
こっちの口腔内事情を考えずに、硬いものを作っちゃう。

まだ、お粥とか、温泉玉子、プリンとかせいぜいウドン・・・
細かく刻んだハンバーグとか・・・何の脈絡もなくとにかく、詰め込む。
食べるというより、車にガソリンを入れるように、炭水化物とタンパク質、
ビタミン各種・・・アミノ酸の含有率、脂質・・・・などと、エネルギー補給目的の食事。
手術前はせいぜい2食だったのに、きっちり三食頂く。
朝と晩に、抗がん剤を食後に飲まないといけないから・・・。

その他の仕事と言えば、洗濯物の取り込みとそれをたたむぐらい。
シャツのたたみ方など、もうプロ並み。店に売ってる状態にキッチリたたむ。
乾燥機の使い方も覚えたし、電子レンジも上手になった。

禁煙中だから、タバコを吸いたくなると、ペナルティーで筋トレ。
一本吸いたくなると腕立て50回。また吸いたくなったら腹筋100回・・・。
補助食品として毎食ごとにプロテイン飲んでるから、筋肉が増えてきた。

昨日の外来での血液検査では、白血球減少以外は、最高の数値。
トップアスリートみたい。

 12/13  12/17  12/29

首回りを特にイジメるから、僧帽筋が発達してきた。

2015/12/30(水)

年の瀬

退院して一か月が過ぎた。この間、何事もなく元気だったので、
入院中にお見舞いに来てくれた方達に、お礼に廻ってきた。
病気が病気だけに、快気祝いとは言えないけど、退院祝いとでもいうものを。

赤ちゃんみたいなしやべり方だけど、「おかげしゃまで、ぶひ たいいんできまひゃぱ・・・。」みたいに。
お〜分かるわかる。おさべり おじょうずになりまちたネ。
まるでイクラちゃん扱いでむこうも合わせてくれるでちゅ。

会話のなかに、ようやく年賀状ができたという話題。
あまりに早く仕上げてしまうと、いざ喪中はがきになった時に無駄になりまちゅからね。というと、
まぁ、まだ2〜3年は死にそうにないでちゅねと返ってくる。は〜い バブゥ〜。
こっちが元気だから、重病人扱いしてくれない・・・。

何かと色々あった一年でした。首のシコリが気になって最初に検査受けたのが7月始め。
くしくも俺の誕生日でした。しょれから市立病院の口腔外科へ紹介状渡されて、検査入院、
手術の日程即決。舌癌手術前に感染症を防ぐために虫歯のある歯を全部抜歯、
術後の栄養摂取のために、お腹に穴をあけて胃瘻手術。おなかに栓をつけて、そこから栄養を流し込む準備。
あれよあれよと手術の日が来て、三か月間は囚人のような生活・・・。

毎日開かない窓から日の出、日没を数える日々。
ようやく退院できて、我が家からながめる日没・・・

あと何回見られるかなぁ〜
と、死ぬ気配なしに思ってみたりする・・・。

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