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2007/02/15
極楽湯は死の香り
夫婦親子の絆編・・・Part1
2月の2連休。子供にとっては3連休。しかも小学生最後の二人一緒での連休。
雑用ばかりでどこにも連れていってやれない。
それじゃ気分だけ温泉に行こう!・・・で、極楽湯(大衆浴場のチェーン店)
ここに行く時はいつも、弟夫婦&輝ちんとか、お婆ちゃんが一緒だったから
親子四人で行くのは初めてかもしれない。どうせだから明るいうちに行こうねぇ〜。
じゃ、お風呂から出たらこの長椅子で待ち合わせ、その後お座敷です〜。嫁さんもうれしそう。
男女に分かれて裸んぼうになって、あれこれと湯を渡り歩く。子供がだんだん飽きてくると
父ちゃんはサウナ。もちろん、後のお座敷が楽しみだから今はアルコール0。
すでに汗ばんだ身体だけど、普段あまり汗をかかない季節だからまだ汗が塩苦い。
「こってり搾るか・・・。」真ん中に陣取りロダンの考える人のポーズ。
目をつぶっていると、背後から誰かが肩を叩く。振り返ると子供達「僕たち洗ったから出るで。」
あいよ。んじゃもうちょいしたらいくか・・・また目をつぶる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ザザザ・・・はい呼吸はあります。脈拍も正常、意識が今のところまだ回復していません・・
では、40歳男性をそちらに搬送します・・・ザザザザ・・・
無線の声と、様々な機器の奏でる電子音中で目を開けたのです。
近くに嫁さんと子供も心配そうに覗き込んでる。
どうやらサウナで倒れたんだナ・・・俺は・・・・。
なんせ裸んぼう、支払いも運転も嫁さんだかラ 俺の所持品なんかロッカーを開けたっテ
服とタバコだけデ 身分を明かす物なんかないのにナ・・・点滅する意識のなかふと思った。
さかのぼること数分前、「父ちゃん、遅っせぇ〜なぁ〜!」
座敷では子供が腹を空かせてブーイング。
「そろそろ出てくるでしょうから色々頼んでおこうか」
三人でメニューに顔を突っ込んで銘々が注文したのであろう・・・・
そこに館内放送。「Tarou'sT1号様、Tarou'sT1号様、至急受付カウンターまでお越しください。」
お連れ様が、ただいま救急車で館外におられます・・・こっそり告げられた。
無意識の中で、誰と来たと聞いたら俺が応えたらしい。
座敷に戻ったT1号、父ちゃんが救急車にいると伝え、全員まだ届かない料理に後ろ髪引かれながら
正面で赤色灯を回して急かす救急車に走る。その際、いた席にイカリングが届いたのを見たT2号は
逆戻りして鷲掴みしてポケットに入れたらしい。たくましい・・・・・・・。
寒くないですか? 吐き気はないですか?
やたら励まされながら病院に向う。他の三人は後ろから付いてきてるようだ。
処置室に入れられベットに移され、名前やら歳、住所やら聞かれる。
応えようとするんだけどロレツが回らない。
どこで倒れましたか? ご・ごきゅららきゅ
苦しいところとかはありませんか? あ・ありまひぃえんんんっがっ
じゃ、ここで楽にして休んでてください。言い残し、去っていった。
医者が嫁さんと会話をしているのが聞こえてくる。
「脳梗塞の疑いがあります。今の点滴の後、梗塞を食い止める点滴も入れます。
冗談でわない。渇ききった口が上手く動かないだけだ。
「水だ!水をくれ!一杯でいいんだ!」心が叫ぶ。
が、脱水症状の処置は点滴が一番なのかも・・・><
手も足も全部の指も思い通りに動くんだ。腹筋だって・・・・・
ベッドでガチャガチャやってアピールするも、「痙攣ではないですから心配しないでいいですよ。」
「ちょっと興奮状態になっておられるだけです。」などと、安心させて嫁を口説いてる。
んじゃしゃべってやろうじゃないけ!
ご・ごきゅららきゅで で だっすいぼーぼほっ
サゥウッナ ににいぃくとときは ほ・ほけへへんしょぅ ひぃぃつよう
しばらくの沈黙の末、俺は脳梗塞患者にされてしまった。
「四肢を動かされていますんで、重大な機能障害の心配はないと思いますが
言語障害もある程度覚悟しておいてください。」
見えないトコにいるからっていい気になりやがって!
両掌をパチンコのチューリップみたいに広げて首を横に振る姿が心眼で見えるぞ!
・・・・・と・と・とりゃず ぱぱパンツぼ はがぜでぐんどさい・・・・><
つづく・・・・・・
2007/02/16
極楽湯は死の香り
夫婦親子の絆編・・・Part2
「ほんまにこっ恥ずかしい。倒れた時にゲロ吐いたり、ウンコしちゃったりせんかったやろな><
救急隊来るまで、まさかサウナのなかで寝かせておくわけないから洗い場のタイルの上やろなたぶん・・
そこでしばらく白目剥いてたかどうか知らんけど、いい見せモンやわぁ〜野次馬ウジャウジャ」
「それだけ喋れれば大丈夫ね、お医者さんも血液検査で軽い貧血と脱水症状だろうって・・・。」
「ほやろ〜〜!んで、最初から言ってたやんそれを、CT撮ったり、痛い注射したり大袈裟に・・・。」
数時間後、すっかり回復して病院の廊下で反省会
「父ちゃん、目玉が真っ赤やったで、白いとこが全然ないんや。キモチワルかったぜ〜。
あんなんでも普通に周りの色見えたん?」と、T1号
見えたで〜普段見えないカーテン越しまで見えた。
「角切りステーキとピザ、食い損ねたで。治ったんやったら今からファミレスいこ。」は、T2号
お前は、ポケットのイカリング、隠れて食ったんとちゃうか今日はお家で静かにご飯や。
「パパは今夜だけ、大事をとって入院よ。あんたたちはお婆ちゃんが迎に来るから、
それで帰って自分で寝るのよ。明日も休みだから、ずっと寝てていいから。」
「父ちゃん、病院の夜は怖いでぇ〜〜。」T2号は言い残して去っていった。
「・・・・・すまんかったな・・・せっかくの休日やったのに・・・・・・。」
「ううん、無事でよかったわ。さっきまで長期入院保障の計算までしちゃったわよ。」
しばらくして嫁さんも帰っていった。
寝よ寝よ。はよ寝て早く朝が来てさよならじゃ。部屋に入る。四人部屋・・・・。
足の方にいるお爺さんは静かに寝てる。右手の爺さんは苦しそうに唸ってる。
斜向かいの婆さんは、付き添いの人が一人でべらべら食いながら喋ってる。
時計もないから分からなかったけど、まだ7時じゃん。面会終わりのアナウンスで時間を知る。
いよいよ四人で一晩過ごすのね。ヨロチクネ^^
T2号・・・お前の言ったことは正しかった・・・。
9時の消灯を過ぎたら3人に異変が・・・
足の方の爺いは、猛烈なイビキをかきはじめた。右手の爺いはゲロしたりおならする度にナースコール
斜向かいの婆あは、手すりを持ち上げては「カチャーン」と落とすのを繰り返す。
果たして、寝られるものなのか・・・んなわけがない。時計も携帯もジャンパーに入ってた。
寝るだけだからいいねともって帰られてしまった。時間もわからない。
いっそロビーにいたろか・・・・でもシャツ一枚しかあらへん。
ヘトヘトになって、点滴に繋がれて身動きもできないベッドで狂おしい夜を・・・・・
うつらうつらすると、ゲロとかカチャーンに起こされる。拷問である。背骨がきしむ。
朝6時になったら、パッと明かりが付いて、その瞬簡に二人の爺さんが髭剃りを始めた。
二台のウィ〜ンという音に混ざってカチャーン婆あはいつまでも歯を磨いている。
T2号の言う怖いと意味が違うけど、人生の末路の恐ろしさを垣間見ました。
逃げ出すように部屋から出て缶コーヒーでもと思っても、財布もジャンバーだった><
タバコもライターもジャンバー。脱衣場のロッカーに入れるときにまとめたのだ。
迎に来てくれた嫁さんが天使のように見えた。
「お昼ご飯も食べていけますよ。」と、看護師さん。
「いや・・・もう帰りたいです。すんません。」
「にいちゃん、わしも帰りたい〜〜〜」と、右手爺い。
あぅ〜〜
みなさんに挨拶みたいなのをして着替えて、
やっと社会人らしい身なりになって、採血も支払いも終えてイザ我が家へ〜〜!
・・・・つづく
2007/02/17
極楽湯は死の香り
夫婦親子の絆編・・・Part3
しかし病院ってのは、なれば行きたくないとこだな。1日の入院でこの疲労感。
仕事を一日してたら、日常に戻った。
その日の夕方、一本の電話が・・・・・。
Tarouさんですね・・・?担当医のタンバです・・・。今、なにをされてます?
あ、先日はお世話になりました。お陰さまで元気に仕事してます。
その仕事は力仕事ですか、激しい仕事ですか?
い、いや・・・普通ですわ。
実は、できるだけ仕事を早く終らせて、今夜はお風呂も入らないでお休みして欲しいと思ってお電話を・・・
はぁ?
今、お腹がパンパンに張っているとか目とか顔が黄色い、或いは吐き気がしてるとかないですか?
い、いぇ・・・、ご飯もおいしいです。
退院時にした採血から、有り得ない結果が出てしまいまして、・・・肝機能なんですけど、
GOTとかGPT、γ-GTP、全てが入院時のデータの10倍に跳ね上がっているんです。
薬物による急性肝炎、あるいは肝硬変とかの疑いがあります。最悪、肝臓破裂とかも・・・・。
今、平気でも極めて急速に進行する恐れがあります。
明日の10時にエコー検査の時間を空けましたんで、必ず来てください。
緊急入院も考えられますので準備もお願いします。・・・でわ、夜分に失礼しました。
は、はぁ・・・破裂でっか・・・・・・。
親父が肝臓病で亡くなっています。発病から10日間で・・・。いくらも酒なんか飲まなかったのに。
具合が悪いと起きて来た時には黄疸が出ていて、すでに腹水も・・・
入院して様々な治療しても日に日に悪くなって10日間。最後の3日間はもう意識もなかった。
仕事を終えて、電話の内容を嫁さんに告げ、ちょっとやり残しの仕事してくるわ。と、診療所に。
今日までのカルテを全部完成させて、レセプトも全部コンピューターと関連付けして
月半ばなのに集計かけて・・・・。
いつもなら、ダラダラといやいやしてる作業である。
「パパ・・・入院の準備してるんだけど、本も何冊か持っていく?」
「いや・・・ノートとボールペン一本だけ入れておいて。それと、これ見て欲しいんだけど、
「もし、もし月末に俺がいなかったら・・・、このボタンを押せばコンピューターがカルテを全部印刷してくれる。」
提出の仕方が分からなかったら、イトウ先生に聞けば教えてくれると思う。」
最後の夜、居間でいつものようにゴロゴロしてると、父ちゃん背中を掻いてくれ。と、T2号。毎日の行事。
そこへT1号もやってきて、僕も久しぶりに掻いてもらおうかな・・・・。大人の会話の雰囲気を読んでいる・・・
よし。父ちゃんを挟んで左右に寝なさい。
「お前たちが小さい頃はな・・・」みたいな昔話を聞かせて、
「父ちゃんに何かあっても、母ちゃんが何とかしてくれる。心配しないで今夜は寝ぃ・・・・・。」
つづく・・・・
2007/02/18
極楽湯は死の香り
夫婦親子の絆編・・・Part4
朝一番で、お昼の短時間だけ機能回復のアルバイトをしてる介護施設に、挨拶に行って事情を説明してから病院だ。
おるわおるわ。こんなに早い時間に、よくもまぁ、こんな辛気臭いとこ好んで集まりますな・・・。
待合所を見渡すと、あれも、これも、それも、そこのあんたも知ってる人やん。みんな介護施設でも患者さんだ。
目が合ったら手を振ってくる。あの世に手招きされてるようだ・・・・。
「先生、どこか悪いんけ?」 「いや、健康診断ですわ。」 肝臓が爆発するかもしれないんですよとも応えられない。
「隣のオナゴさん奥さんか?こりゃまた別嬪さんやな。泣かすなぃや。」 いや、泣かすかもであります。
埒が空かないから早々に受付に。
こちとら、女医のタンバさんに御指名いただいてるんや。はよ案内せーい!
「はい、じゃ、まず先に採血ですね。その後、光学鏡検査室でエコー検査です。」東の別館に行って右に曲がって
進んだ先の突き当りを・・・・
えぇい!行きゃわかる三途の河原ってなもんで、もう慣れてしまって怖くない採血を速攻で終えて。
光学鏡検査は、前の人が大腸がん検診らしく、部屋の中で「うぉ〜!えぐぅえぐぅ・・・・・っ」とか唸ってる。
だんだん不安になる「え・エコーってのは、ゲルを腹に塗って、受話器みたいなので撫でるだけだよね?」
嫁さんに確認すると子供を産む時に経験済みさ!とばかりに、痛くないから大丈夫よぅ。怖がりなんだからぁ〜。
大腸男が泣きながら出てきて、ふらつきながら立ち去るのを尻目にいざ出陣!!
「は〜い。そこに横になってください〜。背高いですね〜。明かり暗くします〜。」
ここも女医さんだ。・・・・なんか、どこかの個室を思い出す。
ツルツル〜ツルツル〜縦に横に女医の白魚のような手が腹部をすべる。危うくエレクト〜ん。
「はい。膵臓、脾臓、肝臓、腎臓みんなキレイに写ってます。歳より若いですよ。」
「あ、あの、肝臓が破裂しちゃうとかは・・・・・?」
「ないですね〜。ちょっとだけ脂肪がついてるかな?って感じです。
今日は会社の健康診断ですか?どこも悪そうじゃないけど。」
診察する方に先入観を持たさないように、どういう患者なのか伝えない方針なのか、ただの伝達ミスとか・・・・??
ま、尋ねて、My肝臓は再確認してチョットの脂肪って言われたんだからいいか。
外で不安げに待ってた嫁さんに両腕で大きく○サイン。第一関門突破である。
そろそろさっきの採血の結果も出るだろうし、そしたら消化器科第三室だ!
この突き当りを今度は左に曲がってスロープに気をつけて上って左から三番目の部屋だ。
嫁さんと、誰もいない廊下の長椅子に座って、待たされること一時間半・・・・・・・・・・・・・・。
蛇の生殺し状態。
「Tarouさん、どうぞぉ〜。」女医タンバさんの声だ。
バリアフリーのドアノブを回すももどかしく部屋に飛び込み先生の前に座る。さぁ、来い!
「・・・・変なんですよねぇ・・・。」
「へ、変なんすか・・・。」
「えぇ、これが二回目の採血の数値、これが、さっきの数値・・・・・・。」
目の前に、入院時と、二回目と、さっきの三枚が並ぶ。
先生が赤い色鉛筆で下線引きながら説明する。
「今日の採血の数値を見る限りでは、むしろ、入院時より良い数値なんですよ。回復しちゃってるのよ〜。
他のも入院時とほぼ横並びなんですけど、なんで真ん中のだけこん数値になっちゃったのかな〜。」
時々、薬品に慣れてない人が点滴とかすると肝臓が驚いて暴走する場合もあるという説明も受けた。
「あ、あと二回目の時、腸からの出血による貧血を調べるために提出してもらっていたあなたの
二日分のウンコ、全部陰性でした。 ということで、つまり健康体ですね。おめでとうございます〜。」
「おありがとございます〜。」
・・・・・・ってことは、俺的に分析すると、運び込んだ時点で一杯の水さえくれれば、こんな騒ぎには・・・・・・。
・・・・・・貧血で倒れたのではなく、寝入って、干からびて倒れたのでは・・・・・・・
ま、今ではどうでもいいことでもあるが・・・。
部屋を出て、嫁さんに○サイン。
「本日臨時休診の札出してきたけど、貧しい血らしいから、今からステーキ食って、帰って、午後の部から働くぞぉ〜!」
「お〜〜〜ぅ!! 私はオムライス〜!!」
つづく・・・・
2007/02/18
極楽湯は死の香り
夫婦親子の絆編・・・Part5
柔道に復帰して、みんなにその話をした。
「Tarouさん、そりゃ新手の不安売り付け詐欺ちゃうけ。見事引っかかってたりして・・・。」
「ちゃうちゃう、ビール我慢してサウナで耐えてたのに、いつになってもビールが流れ込んでこないから
肝臓も怒りよったんやわ。わしの肝臓でもたぶん怒りよるわ ガッハッハ。」
一時はどうなることかと思ったが笑い話で終わり。チャンチャン
付録
「パパ、もう、このノート必要なくなったわね^^」
「うん。必要なくなった^^」
嫁さんもノートの意味、知ってたんだな・・・・
そう、緊急入院するかもしれない時に用意した、白紙で終った遺言状・・・・
一時はマジで用意したのよ><
もし、書かなきゃならない事態になってたら、書き出しはこうだろう・・・・・・
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終劇
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